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川西 幸斗・会話集 

 Side 川西 幸斗


=桜木 美琴二尉の場合=


「まさか王女様が来るなんて」


「一回上の方に顔を出して自分たちのこと、どう思っているのか確かめた方がいいかもしれんな」


 苦笑いしながら川西 幸斗は言う。

 正直アティだけでも他の部隊に色々と言われたのだ。

 中には羨ましいと業の深い事を言う人間もいたが、桜木 美琴はともかくアティに手を出したら色々とアウトだ。


 そこに王女様であるユリシア王国のアイナまで来た。

 王女様に手を出したら何かあったら国際問題に発展する。


「そう言えば機体ですけど、正直言って意外でした」


 隊長の心中を察してか話題を変える美琴。

 ちょっと此方も苦笑いしている。


「なにがだ」


「てっきりファントム系列を乗り続ける物かと」


「まあ確かにファントム系で頑張りたかったけど、戦争だからな。それに何だかんだでアッサリと最新鋭機体の搭乗申請も通ったし、逆を言えばそれだけ期待されてるってことだろう」


 データー取りのためとか色々と裏の理由もあるかも知れないが、素直にありがたい反面、川西 幸斗にとってプレッシャーに感じている部分だった。

 表情も若干暗い。

 もちろん嬉しさもあるが、それでも負担を感じずにはいられなかった。


「エースの宿命と言う奴ですかね」


「それだけじゃなくて、戦争を生き延びた腕のいいパイロットは貴重だからな。だからと言って温存し過ぎて負けましたなんて事になったら笑い話にもならねえしな」


 逆を言えばそれだけ今の日本は政治、外交、そして各種資源の面で余裕がなくなっていると言っていい。

 

 もちろんこの世界での資源開発やユリシア王国をはじめとした友好国との外交を頑張っているが、それでも大国と戦争になったり、スカイピアに目を付けられたのは不幸と言えた。


「今度の戦い、負けられませんね」


「ああ」


 今度の戦いとは勿論ドラグニア帝国との戦いの事だ。

 出来れば勝利して一時休戦辺りに持っていきたいと上は考えているかもしれないが、それでもどうなるかは分からない。

 だからこそ最新鋭機であるNHJー4を申請したのだ。



 =アティとキャプテンアースの場合=

 

「そう言えばアティも今度の戦い(ドラグニア帝国との決戦)に参加するのか?」


「うん、そうよ」


「まるで遊びに行く感覚だな」


 呆れたように幸斗は両目を瞑り、口元を引き攣らせながら言う。

 アティの口調からはそれぐらいの気軽さを感じた。 


「たぶんだけど私達――スカイピアの住民も来るかも知れない」


「……弱ったところを狙い撃つ算段か」


 正直気分がいい物ではないが手堅く賢いやり方だと思う。

 

『その可能性は高いですね』


 と、キャプテン・アースがアティに渡されたスマフォから声を出してくる。

 

『アティはスカイピアの脱走者です。そのまま放置するのは体面上ありえないでしょう。それに私も今や狙われる存在です。可能なら何らかの手段で抹消してくるでしょう』


 そうキャプテン・アースは語る。

 言っている内容は――特にアティ絡みに関しては真実だ。

 自分の事に関してもまるで他人事のように語っているがそれも事実である。

 幸斗はどうしたもんかなと渋い顔をする。


「私どうすればいいのか分からないけど、相手がスカイピアでも戦うわ」


「そうか」


 本当は戦いから遠ざけるのが正しいのかも知れないが、アティの好きにさせる事にした。

 どの道、幸斗には彼女を止める権限はない。

 ならば目の届く範囲に置いておいたほうが楽な気がした。


 それにしても――と思う。


(まるで手の掛かる妹でも持った気分だ)   

 

 決して口には出さないがアティの事をそう思った。



 =アイナ・ユリシア王女=


「まさか王女様が来てくださるとは――」


 幸斗は緊張して言葉遣いが変になってないかどうか、失礼な物言いや態度をしてないかどうか考えながら作り笑いを浮かべる。

 

 そんな幸斗をどう思ったのかアイナは「ふふっ」と笑みを浮かべる。


「もっと砕けた口調でも構いませんよ。それにアイナと呼んでくださっても良いのですよ?」


「と言われましても――」


 はいそうですかと幸斗は順応出来ない。

 

「王女命令です」


「は、はあ」


 などと言われてしまった。

 

「ではなるべく普通に……どうしても聞きたい事があるんですが何故、わざわざこんな危険な場所に?」


「色々と理由はありますが、今や皆様はガーデニア大陸東部の希望なのです。逆を言えば負けてしまえばドラグニア帝国に蹂躙されてしまう。そんな状況なのです」


 遠回しに死ぬのが早いか遅いかだけと言っているようにも感じた。

 それには触れずに幸斗は違う質問をする。


「やはり先の戦いで?」


「はい。我々はもう殆ど戦う力は残ってないのです」


 と、アイナ王女は表情に暗い影を落とした。

 先の戦いと言うのはバルニア王国との戦いの事だ。

 日本の介入があったとは言え、国家滅亡寸前のところまで行っていたのだ。

  

 更に言えば敵との軍事力の差、技術差や古代兵器の有無もある。

 アイナ王女が日本を希望だと言うのは決して比喩ではないのだ。


「例え万全な状態だったとしてもドラグニア帝国には勝てないでしょう。それどころか以前の状態に再建しても日本国の足を引っ張りかねず、軍の再建方針すらままならない状態なのです」


「そうか――」


 どう言えばよいのか幸斗には分からなかった。

 安易な同意すら相手を侮辱する事にも繋がりかねないからだ。


「すみません、こんな話をして――ところで川西様は好きなお方はいるのですか?」


「え!?」

 

 場の雰囲気を変えるつもりなのか、単純な興味からなのか、王女は突然顔を赤くしてそんな事を言い始めた。

 幸斗も目を見開いて顔を赤くする。


「いや、それはその――」


 どう答えれば良いのか分からなかった。

 正直幸斗は誰かと付き合うなんて考えたこともなかった。


「川西様は戦闘機乗り達の中で優秀だと聞いていますが、そう言う相手はいないのですね。我が国なら引く手数多でしょうに」


「考えたことないです」


「なら私が立候補してもよろしいでしょうか?」


(なに、この展開……)


 頭の悪い異世界系小説みたいな展開だなおいとか思いながら幸斗は目を真っ白にして口をポカーンと開ける。


「と言うか王女様? 貴方を最初助けたのは自分じゃなくて傭兵のクラウスですよ? 立候補なさるのなら其方の方が……」


「それはそうなんですけど――私が嫌ですか?」


「そんな事は――」(どう言う理屈だ……)


「なら決まりですね」


「なにこの展開?」



 =クレア= 


「クレアさん、あの――王女の事は」


「すみません。私も想定外でした」


「ま、まあ、時間が経てば心変わりする可能性もあるし――」


「そ、そうですね」


 川西 幸斗にとって女性とのお付き合いなんて夢の世界である。

 異世界の一国の王女なんてもはや想像すら出来なかった。

 

「ですが意外でした。まさかそう言う相手がいなかったとは――」


「クレアさんも何を言ってるんですか?」


 もしかして十代半ばで結婚するのが普通な恋愛観なのだろうかと思った。

 それなら王女の態度もある程度は理解できるが、巻き込まれる身としてはたまった物ではなかった。

 本日何度目かになるため息をつく。

 

(さっさと身を固めた方がいいのかな……)


 などと思いながら何処か目を細めて遠くを眺める川西 幸斗であった。 


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