第17話「戦いの後――」
Side 日本 航空自衛隊 レイヴン1 川西 幸斗 二尉
あの戦いから少しばかりの月日が経過した。
ユリシア王国 王都での戦いは終結。
バルニア王国の王子であるディアス王子を捕虜にする事も成功。
被害も想定よりも遥かに少なく、作戦も成功し、アンノウンの介入もあったがそれでも大勝利と言える内容だ。
川西二尉が聞いた噂では外務省はこの件を足掛かりにして和平を望んでいるらしいが――望み薄だろう。
日本はともかく、ユリシア王国とそこに逃れた人々、弾圧されて奴隷のような仕打ちを受けていた連中が黙っちゃいない。
選択肢を間違えれば一瞬孤立して干上がってしまう。
それに以前の日本ならともかく今の日本は核兵器すら撃たれて侵略戦争すらされたのだ。
安全圏だけで物を言う連中の言葉など日本の民衆は耳を貸さないだろうと川西二尉は思った。
「浮かない顔ですね」
「まあな」
同じレイヴン隊。
女性隊員。
桜木 美琴 三尉がやってくる。
ある程度戦後処理も一段落して、今このミズリの港町の航空基地は戦勝パーティーの真っ最中だ。
川西二尉も桜木三尉は先の戦いでのMVPの一人なので周囲から揉みくちゃにされ、先程解放されたばかりだ。
「これからどうなりますかね?」
「さあ? 暫くは日本の本土には帰れないのは確かだな」
ただバルニアを倒すだけでなく、友好国を守るための治安維持とかもある。
またこの世界の調査もあるのだ。
それにアンノウン――謎のハイテク技術を用いた連中のこともある。
機体も残骸だが確保、パイロットも捕虜にできたし、正体について分かり次第伝えるとの事だ。
それでも、とうぶんお役目御免にはならないだろうなと川西二尉は溜息をついた。
「二尉もバルニアとの戦いは続くと?」
「相手は一方的に宣戦布告してきたような国だぞ? 本国に殴り込まないかぎり戦いは続くぞ。ここの飛行場にも何時までいられるかって感じだな」
バルニアはここから遠く北にある。
その途中のどこかに新たな飛行場をつくるというのが自然な考えだと思っていた。
「やめだやめ。せめて今日ぐらいは難しいことは考えるのはなしだ」
「そう――ですね――」
「・・・・・・戦うのが辛いか?」
「正直言えば」
「それぐらいが丁度いいかもな。馬鹿みたいにがむしゃらに戦うよりかはいい」
川西二尉の返しに桜木三尉は一瞬呆けた表情をした。
それを川西二尉は不審に思う。
「どうした?」
「い、いえ。てっきり迷ってたら死ぬぞぐらいのことは言われるかと」
「ああ~確かにそう言った方が正解だったのかな? 軍人として? とりあえず実戦で変なヘマしたら問答無用で地上勤務送りにするからな」
などと川西二尉は言うがなぜか桜木三尉は笑っていた。
「どうした?」
「いえ、なにも――了解です。川西二尉」
そう言って笑みを浮かべながら桜木三尉は敬礼した。
「変な奴だな――」
「隊長ほどでもありませんよ」
「そうかい・・・・・・まあお互い死なない程度に頑張ればいいさ」
「それ隊長がいいます? 自殺志願者みたいな飛び方して?」
「いや、まあ、やりたくなると言うか何というか・・・・・・戦闘機に乗ると何というかこう、テンションが上がって――」
「なんだかんだで戦闘機乗りなんですね、隊長は」
などとやり取りして時は過ぎていく――