第八十七話 言葉にしなくても
連休中は家に居ただけだけど。思った以上に短く感じた。
なんだかんだで忙しかった気がする_(:3 」∠)_
5月投稿再開致します!次回は12日の12時予定です!
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ありがとうございます(*'ω'*)
あれからどれくらいの時が経っただろうか。ツールはずっと手を握ってくれている。
「良かったですお嬢様」
「これで我がイグニート家も安泰じゃな!」
「覗くなら最後まで知らないフリをしてあげないのですか?」
「…………どこから見てた?」
「初めからですよ。お嬢様」
―ボン!
顔から火が出るとはこういう事か!
「恥ずかしがる事はないぞジュエル。ワシも若い頃は婆さんと情熱的な恋愛をしたもんじゃ」
「あれが情熱的ねぇ……」
「まずはアイツと……」
「ん!お嬢様が見つかった訳ですし。そろそろ帰りましょう」
じいじの話をバシッと切って、ジャムが話を進める。ばあばの話は長くなるからのう。
「仕方がない。ではジャム頼んだぞ」
「じいじは帰らないのか?」
「ワシはペンタゴンと、ここの調査を続けるぞい」
「それならワシも行くぞ。何も分からないままでは、気持ちが悪いしのう」
「しかしジュエル。びしょびしょではないか。このまま放っておいたら風邪をひいてしまうぞ?」
「それくらい何とかなるのじゃ」
風と炎の混合魔法。暖かい風で。
「便利な魔法だね。前に見た時より進化してますね」
「じゃろう?服もこの通り……」
―バサッ
―ッサ!
「おっと。スカートなの忘れておった」
「お嬢様。スカートは必ず抑えて下さい。男性がいる時なら尚更です。ツール様のは良いかも知れませんが、学園長もバーン様も居るので」
「はは。私は見えてないので大丈夫ですよ」
「ワシは気にせんぞ。おしめを交換してたからな」
咄嗟に魔法を使ったからな。気にしておらんかったわ。
学園長の目はジャムが隠しておったし、じいじは今更じゃな。
ツールは……手で隠しておるが、顔が真っ赤じゃ。
「見たか?」
「み、み、み、見てないよ!」
「まぁワシのミスじゃからな。さぁこれで大丈夫じゃろう。魔物の血の臭いが少しするが……」
「お嬢様。こちらを」
「準備が良いのう。ありがとうなのじゃ」
ジャムが持っていたのは臭い消し変わりの香水。いつもの匂いじゃ。
―グゥ……
「お嬢様。クッキーとおばちゃんのおにぎりです」
「さすがはジャム!腹は空いておったのじゃ」
「でかい鞄だと思っておったが」
「お嬢様の為に備えは怠りません」
ジャムにはいつも助かる。ここぞの品揃えは商人か?ってくらい持っておる。
「もぐもぐ……ごくん。ツールはどうじゃ?」
「僕はジュエルちゃんが行くなら行くよ」
「すまんな。正直、いてくれると助かる」
「うん。僕も今はジュエルちゃんと居たいから」
「ツール……」
「はいはい。付き合い始めて楽しいのは分かりますが、帰ってからにして下さいね〜」
「「つ、付き合う!?」」
「え?あんな事して付き合ってないの?」
どういう事じゃ?いや、どういう事もないか。しかしワシは言われてないぞ?
「ジュエルちゃん!」
「ひゃい!」
「僕と付き合って下さい!」
「はい!」
「ごめんね。言ってなかったから、きっちりしておきたくて」
「良いの。私もそう思ってたから……嬉しい」
「はい。それじゃ行きましょう!」
せっかくツールが言ってくれたのに、学園長が流れを遮り先に進み始める。
「行こうか」
「はい」
せめてもの対抗で手を繋いで進んで行く。
「ところでジュエルさん。ここに来て気になる事ってありましたか?」
「ふむ。魔物がやたらとワシに攻撃してくると思ったくらいじゃな。ワシが居る場所も分かっているようでのう」
「それは誰かが意図的にジュエルさんに……」
「まぁ魔物の血を浴び過ぎて、臭いがついていたからだろうがな。雨で洗い流したら、魔物が来なくなったしのう」
「それは私達が居るからと考えられますが」
「それもそうじゃな」
「意図的か偶然か分かりませんね……」
言われて改めて考えたが、誰かが操作していた可能性があるのか。そうなれば誰かが監視をしているはずじゃが……
「帰り道と魔物を倒すので忘れておったな。一度見てみようか《サーチエネミー》」
「それは?」
「風と音の振動を使って、人や魔物を探す魔法なのじゃ……ん?人型が二人?」
「え?人型?」
「居るな。ここから1キロくらい先じゃが」
「そんな先まで……行けますか?」
「行けなくはないが……」
「婿殿はワシに任せろ!」
ツールをじいじが抱える。
ワシの魔法に気が付いたかも知れんし、急ぐ必要があるのう。
「少し飛ばすぞい。ついて来れるかのう?」
「がはは!ワシは後から行く。ジャムとペンタゴンはついていけるよな?」
「お嬢様の行くところなら何処へでも」
「誰にものを言ってるんですか?」
「だそうだ。全力で行くはよい!」
「うむ!では……」
ギアを一つ上げて、対象まで真っ直ぐ走る。山道に木々が邪魔であるが、ワシには関係ない。
視界良好。ワシの進む道には何もない。綺麗な空じゃ……あそこに見えるのは空に浮かぶ2人の人間?
「おい。あれ見ろよ」
「なんだ。今、次の作戦を考えているんだ」
「それはもう使えないと思うけど」
「何を……」
「お主らは誰じゃ?」
短髪の黒髪とパーマの男が二人。どこか見た事があるような気がするのう。
「な、な!?」
「ほらな。さっき空気が震えたから、もしかしたらって思ったんだよね」
「何で言わなかった!」
「いや、まだ時間はあると思うじゃん。でも空飛んで来るとは思わねーじゃん」
「飛んで?」
今ワシは空に立っておる。
「これは空中に足場を作っておるだけじゃ。空は飛べんさ」
「そうなんだ。そりゃ凄いね」
「感心している場合か!これじゃ魔王様に怒られるじゃないか!」
「だから相談なしで突っ切るなって言っただろう」
話を聞いておると、色々とやばいワードが聞こえてくるのう。これ聞かなかった事にして帰り…………
「魔王だと……」
「物騒な話ですね」
学園長とジャムが聞いてしまった。これは聞かなかった事に出来なさそうだ。
どうしようかのう……戦わずして終われればってこれは考えてはいけない。
そうするときっと……
「「やるしかないか」」
口に出していないのに……やっぱりこうなる運命?
「どうするのじゃ?戦うのか?」
「私の意見としては捕まえて行きたいけど」
「しかし空を飛ばれていては少し不利でしょうか」
「戦うとなるなら落とすが?」
「出来るんですか?」
「どうじゃろうなぁ……」
戦う気があるのか二人はこっちを見ておる。何かを伺っておるのか動く気配はないように見える。
「どう見ても怪しいからのう。捕まえて聞き出すしかないか……」
ワシは真っ直ぐ二人を睨む。
魔族A「何かもの凄い睨まれてるけど?」
魔族B「怖すぎるだろう!?」
魔族A「いや、びびりすぎだろう」
魔族B「あいつやばいって分かんないのか?」
魔族A「ん……分からん。どこがやばいんだ?」
魔族B「あんな少女なのにジジ語だぜ。な?やばいだろ」
魔族A「俺はお前のな?がやばいと思う」
魔族B「そんなのいいから。全力で逃げで作戦頼む」
魔族A「お前の勘は当たるからな。仕方がない。その方向で考える」
ジュエル「もういいかのう?」
魔族B「出来ればもう少し待ってくれ!」
魔族A「そんなの聞き入れてくれる訳が……」
ジュエル「仕方がない。5分だけじゃぞ!」
魔族A「えぇ〜…………」




