第六十一話 空気を読まない者
人は言った事が出来ないのは何故なんでしょう?
私自身も何度言われてもやってしまう事があります。
人には向き不向きがあるかも知れないけど。記憶の限界が近いのでしょうかね( ´Д`)
不思議だな〜と感じるこの頃。
一つだけ言いたい……数分前の履歴を読んでおくれ!w
ブックマーク、誤字報告、評価、読んでくれた皆様。
ありがとうございます(*'ω'*)
試練とやらをクリアした翌日。いや、クリアしたのか?まぁどうでも良いか。
「ん〜朝かのう」
「地上の陽は眩しいわね……」
「……何故ここにおる?」
「何故って?遺跡に居るのが飽きたから」
「そうか」
ベットから出て、窓から入る陽を浴びて伸びをする。
昨日は多少の強化をしたから、筋肉痛を覚悟したが平気なようじゃ。
「強化の範囲はあれくらいなら問題ないのか」
「何が問題ないって?」
「なんでもない。さてとそろそろ……」
―コンコン
ノックを合図にジャムが入ってくる。
「おはよう御座います。朝食の用意が出来ています」
「では着替えて行くとしよう」
「私もお腹減った〜」
ふよふよと浮かぶ精霊のアズが言う。精霊も腹が減るのか?
着替えてホールに行くと、全員揃って座っておる。少し遅かったかのう?
「すまぬのじゃ。少し遅かったかのう」
「昨日は大変だったんだろう?まだ寝ていても良かったんだぞ?」
「あれくらいなんて事はないぞ父上」
「あれくらいって……結構頑張って作ったのに」
アズが少し落ち込んでおるが。
「ほれ、ワシのパンをあげるから、機嫌を直してくれ」
「別に人族の食べ物なんかで私の……うまぁ!?」
「ははは。それは良かった。ではいただくとしよう」
「「「いただきます」」」
全員揃ったところで朝食をとる。落ち込んでいた様に見えたアズもパンを頬張り幸せそうである……ちょろいな。
「そうだ。ジュエル一ついいか?」
「なんじゃ父上?」
「昨日の山だが、しばらくは閉鎖するから。また行ったりするなよ」
「そうか……ダンジョンもあるし。仕方がないのう。しかしアズはそれで良いのか?誰も挑戦に来なくなるぞ?」
「んぐ…………ん!別に来ないならそれでもいいよ。どうせジュエルが罠を壊してるし。それに入ったらジュエル以外は出られないし」
出口を直す選択肢は無いのか?
「まぁダンジョンもあるが、魔物も増えているからな。それに盗賊も出るとか噂があるから、それら全て考慮した結果だがな」
「ワシがおらん間に随分変わったんじゃな。しかしそうなると訓練する場所が減ってしまったのう」
「ジュエルちゃん。ここには休息しに来てるんだよね?」
「そう言えばそうじゃった」
「それなら今日は街に行ってみない?僕、行った事ない街だし。見てみたいな」
「そうか?ならば今日は街を案内しよう。走れば一日で全部回れるじゃろう」
「ジュエル馬車を使いなさい。せっかく招待したお友達を走らせるのは失礼な事よ」
「分かったのじゃ母上。それでは食べたら行くとしよう」
走って街を案内するのも良いと思うが、母上の話を否定してまで走るつもりはない。反論したところで勝てる要素は0じゃしな。
♢
準備も終わった事だし。お屋敷の外で待っていると、馬に繋がれた大きな馬車が来た。
「お嬢様のだん……じゃなくて。お友達様!待たせたか?」
「大丈夫です。それにジュエルちゃんもまだ来てませんし」
「ジュエルちゃんね……お嬢様がちゃん付けされるとはな」
「あ。様つけなきゃですよね?」
「いやいや!そう言う事じゃないんだ。呼び方はお友達様の好きな様に呼んでくれ良いんだ」
言われてから気がついたけど。領主様の一人娘なんだよね。様を付けなきゃいけないか。そう言えば、領主様のお父さんも様を付けてなかったような……
「ははは。お友達様は雇われてる訳じゃないんだ。普通の友達としてお嬢様を見てくれると、俺達も嬉しいってもんだ」
「そうですか?あ、僕はツール……ツール・チャーム・ランドーです。今日はよろしくお願いします」
「はは。礼儀正しい方だな。俺はフラット!このイグニート家の専属御者をしている者だ!」
紹介された後にポーズをとるフラットさん。なんて言うかその腕……
「待たせたのう!」
「んーん。今来た……とこ……ろ」
振り向くとそこには、ジュエルちゃんがいた。いつもとあまりにも違う格好で、僕は思わず言葉を失った。
「どうしたのじゃ?やっぱりおかしいか?やはりいつもの服に着替えて」
「すっごく可愛いからそのままで!」
「かわっ!?むぐぐ……」
いつもは桃色の髪を後ろに結んでいたり、長い髪をそのまま下ろしている事が多いジュエルちゃん。今日は結んで入るけど、いつもの結び方とは違う。全部をまとめていないと言うか、上は結んでるけどふわふわした髪が流れている川の様と言うか……僕は何を言っているんだ?
「ほぉ〜こりゃ初めて見たぜ」
「な、何じゃフラット居ったのか」
「恋は盲目ってか?」
「こぉ!?何を言っておる筋肉馬鹿が!」
「お嬢様。それは俺には褒め言葉ですぜ!」
―ムキ!
ポーズをとるフラットさん。やっぱりその腕の筋肉……
「冬だと言うのにその格好とは……暑苦しぞ」
何かが軋むような音が聞こえてくる筋肉。冬なのに肩から先のない上着を着ている。
「寒そう……」
「鍛えていればどうと言う事はない!ランドー様も一緒に鍛えま……」
「ええい!ツールを誘うな!フラットみたいなムキムキは嫌じゃ!適度で良いのだ!」
「何を言いますかお嬢様。これぞ適度!」
いちいちポーズをとる筋肉さん。じゃなかったフラットさん。ジュエルちゃんは、フラットさんみたいな体は好きじゃないんだね。まぁ男の僕から見ても行きすぎてる気がするけど。
「だからと言って、そんなにムキムキである必要は無いじゃろう?」
「何を言いますか!馬が怪我をして持ち上げられない御者なんぞいかんです」
「いやまぁ……大型バイクに乗るので有れば、転んだら起こせるとかあったが……」
「大型のバ?とにかく必要でしょう!」
「しかしこの馬じゃぞ?しかも他よりかなり大型なんじゃが……」
「だから鍛えるのさ!ふん!」
「だから暑苦しいからやめよ」
もはや笑うしかない。そんな状況に……
「む!殺気!」
―ビュン!
「どぉりゃぁぁ!」
―バシャァン!
「水球……奥様ですか?」
「フラット二人の邪魔をしないでと言ったわよね?」
「私は何もしてませんぜ」
「せっかくの良い雰囲気が台無しじゃない……せっかくジュエルにお洒落させたのに。ごめんねツールさん。空気が読めない業者で」
「いえ、面白い方で何よりです」
突然飛んできた水球に、素手で難なく消し去るフラットさん。家から出て来たジュエルちゃんのお母さんに、いろいろと言われている。あまり聞いているように見えないけど。
「冬なのに暑苦しいわね。上着はどうしたの?」
「弾けました!はっはっは!」
「ジャム!」
―パチン
「こちらに……」
指を鳴らすと、ジャムさんが上着を持って来た。
「しかし俺は暑くないぜ?そんなの着る必要も無いと思いますが?」
「貴方になくても……こほん。良いですか?筋肉を見せびらかして、安売りしているとは思わなくて?
「ほう?」
「簡単に見せたら価値も下がるかも知れないって事よ」
「ほほう?」
「何より。実は筋肉があると思わせた方が……カッコよくては?」
「着ましょう!」
フラットさんの基準は分からないけど、さすがジュエルちゃんのお母さん。筋肉さんの気持ちを見事に動かした。
「行く前からどっと疲れた気がするのう」
「はは。それじゃ最初はどこか美味しいお茶がある所に行きたいな」
「それなら良いとこを知っておる」
二人で馬車に乗り込む。
「ジャムさんは一緒じゃ無いんだ?」
「二人について行くなんて、無粋は致しま……別にやる事があるので。護衛はフラットに任せます」
「任せとけ!」
「それじゃいってらっしゃい」
「「いってきます」」
さてと!ようやく出発だ。カタカタと馬車がゆっくり動き出す。
アズ「私も一緒に行くー」
ミラージュ「ストップ!」
アズ「がふぅ!?づよぐ握りずぎ」
ミラージュ「あら?ごめんなさい。フラットの相手をしていたから、加減間違ってしまったわ」
アズ「潰されかけたわ。私を掴む時は花と同じくらいの力でお願いね」
ミラージュ「覚えておくわ」
アズ「それじゃいってき……」
ミラージュ「ストップよ!」
アズ「がふぅ!?」
ミラージュ「空気を読む事も必要よ?」
アズ「もういがないがら!」
ミラージュ「ごめんなさい!つい力加減を間違ってしまって。すぐには出来そうもなくて」
アズ「貴女もしかしてわざと……」
ミラージュ「それでアズ様はどうするのでしょうか?」
アズ「お留守番するわ!」
ミラージュ「そう。それは良かったわ!」
アズ「次は確実に潰されそうだわ……」




