第四話 始める為の布石は大事じゃ
どんどん暑く、そして寝苦しい日々が続きますな_(:3 」∠)_
ブックマーク、読んでくれた皆様。
ありがとうございます(*'ω'*)
少し違ったとは言ったが、まさかオナゴになるとは……今まで男として育ってきたが為、どうすればいいか分からん。
そしていつもの様にただ景色を見るだけの日々かと、うんざりしかけたのだが。
「は!は!はぁ!」
「あーうー」
「あら。またパパを見たいの?ジュエルはパパっ子なのかしら」
母上に抱かれ、父上の声がする庭へと出る。
「む?今日も来たかジュエル」
「ジョリーの声がするといつもよ」
「うー」
「さぼらんさ。さて再開するか……は!」
「きゃっきゃ!」
父上が身の丈程ある大剣を振る。ワシが喜んだ声を出すと、気を良くした父上は更に速く大剣を振る。
「っふん!」
―キィィン
空気が斬り裂かれる音がする。見ていて飽きぬものよの……こう剣とは男心を刺激するのじゃ。今はオナゴじゃが、好きなものは好きなのである。
「ふぅ……今日はこんなものか」
「お疲れ様。ジュエル、パパにどうぞして」
「うー」
「はは。まだ無理であろう。気持ちだけ受け取っておく」
手を伸ばしても掴んで渡す事が出来ぬ。さすがに産まれて数ヶ月では難しいもの。それでもやってみると言う光景に父上の頬が緩む。
「しかしジュエルは凄いな。ミラージュの言う事が分かっているかのようだ」
「そうね。ジュエルは私の言った事を理解して、やろうとする感じがするのよね」
「幼子にしては……」
さすがに産まれて数ヶ月の子が、母上の言葉を理解して行動するのは不味かったかのう?
「賢いのだな!さすがは俺達の子だ!」
ふむ。この父上には疑うと言う言葉は、辞書に載っておらんようだ。
「じー」
「あー」
じっとワシを見つめる母上。さすがに賢い母上の目は誤魔化せん……
「パパみたいな子にはなっちゃダメよ」
「ミラージュ!?」
案外酷いことを言うのだな。ワシを君悪がるかヒヤヒヤしたではないか。
「冗談よ。でも女の子が剣を振ったりはして欲しくないわ」
「む。それはそうだが……」
剣が持てぬだと!?これはいかんな。男のロマンとして、是非とも剣は使ってみたい。
「あう」
「あら?どうしたのジュエル?」
「あー」
「きっと俺の剣の稽古が見れない事を心配しているのだよ」
「う!」
「……そうなのかしら?なんか違うような気がするわ。なんかこう……やってみたいって感じかしら?」
なんと!思いが伝わったと言うのか!?
「ははは。大きくなって、興味がまだあるなら教えるぞ」
「それは相談して決めましょうね?ね?」
「お、おう……」
タジタジな父上。そして母上の目が怖いのじゃ。直視してはいけないと、外の景色に目を向けるワシ。その先のは色とりどりの花。
「あー」
「ん?ん〜お花かしら?」
「まさかこれが見たくていつもここへ!?」
「ジュエルもやっぱり女の子なのね。色んな花があって綺麗でしょ?ママ頑張って育てているのよ」
「あーうー」
「ふふ。ありがとう」
花を愛でていると思ったか、機嫌が良くなる母上。花を育てるのが好きで、この花壇は母上の自慢なのだな。この情報は覚えておくしよう。父上は少しショックを受けているが、これもいずれ剣を握る為!今は全力で花を愛でるワシを許してくれ!
そんな赤児の時代を経てワシは、一歳二歳と順調に歳を重ねる。歩けるようになり、日課となる庭へと出る。母上の花壇はピンク色と淡く白い花が咲いておる。花は勉強していないから、これがなんの花か知らない。
「これ、なに?」
「んー?お花だよ」
「おはな、なまえ」
「ピンクの小さい花がペチュニアよ」
「ぺにゃ」
「まだ発音するには難しいかしら。花壇の女王って呼ばれていて、ママが一番好きな花なのよ」
「まま、すき!」
「ふふ。そうね」
二歳となれば言葉も少し喋る事ができる。二歳児と言えば、二語分をしっかり意識して喋る事も容易い。
して、この花はペチュニアと言うのか。ラッパの様な小さき花であるのに、花壇の女王とは凄い花なのだな。しかし知らぬ事がまだワシにあったのだな。男として過ごして来たからか、花の名は学ばなかったのう。
「まま、これ!」
「これはカザニアよ」
「かざにゃ」
「凄く育てやすい花で、大きいもので40センチくらいになるとも言われているのよ」
「おおきい、おはな!」
40センチとは凄いのう。こんなに儚げな花が更に伸びると言うのか……んー儚げな?少し萎れておるのか?
「かざにゃ、しおしお」
「あら?少し元気がないようね。日照り続きで雨もなかったし……少し水をあげようかしら」
そう言えばジョーロは見当たらんな。ホースもないし、何処かから水を汲んでくるのかのう?
しかし母上は動かず前に手をかざすだけ。
「う?」
「この花達はそれぞれに水のあげ方が違ってね。ペチュニアには花に強く当てない様に。カザニアは土の表面が湿める程度で良いのよ」
「う?」
「ふふ。まだジュエルには難しかったわね。濡れちゃうから、そこから動いちゃダメよ……《エアリードロップ》」
―ぷくぅ
シャボン玉の様なものが母上の手の前に現れた。なんじゃ?何処かから水が出て来た様な?
「それ」
―ぱぁん
花に近づくと、シャボン玉が割れ雫がに変わった。微かに花弁を揺らす程度でありながら、地面には水の跡が残る。
「みじゅ、どこ?」
「ふふふ。ママはこれでも水の魔法は得意なのよ」
「みじゅ、まほう?」
ワシは夢でも見ているのだろうか。それとも母上の手品か何かか?ワシが惚けて見ていると、母上は説明してくれた。
「魔法って言うのは、誰しも使えるものなの。属性は産まれ持って決まっているのだけど」
「おー」
「まだ分からないわよね。私ったら何を説明しているのかしら。大きくなったら教えてあげるわ。私とジョリーの子供だから炎か水の適正はあるはずだし」
魔法とな!?そんな心躍る事があっただろうか。これは試さずにはいられんじゃろう!
「あう!」
「あらあら。ママの真似して可愛いわね」
出んぞ?母上の血筋を伝承しているはず。ならばワシにもできるはずじゃ!
「…………」
「魔法はね。自分の中にあるマナと、自然界にあるマナを合わせるのよ。ジュエルは二歳ですもの、出来なくて当然よ」
体内にあるマナと自然界のマナ。体内のは前世で感じなかった何かであろう。自然界のマナとは……目の前にあるこの何かと同じものじゃろう。
ワシはワシの中にある何かを必死に探すのであった。
ジュエル「まほーきたー」
ミラージュ「え?今、ジュエル……」
ジュエル「まま!まほー!」
ミラージュ「ママ魔法って使い方かしら?教えちゃって良いのかしら?」
ジュエル「まま……しゅき!」
ミラージュ「はぅ!良いわ。ママの言う事しっかり聞くのよ」
ジュエル「あい!」