第三十九話 筆記試験と実技試験③
もうすぐ2歳の息子に早めのクリスマスプレゼント。
音が鳴る救急車にテンションが上がる。箱を見つけた時が一番か?
ちゃんと並べるあたり喜んでいるのだろうか(*´꒳`*)
ブックマーク、誤字報告、評価、読んでくれた皆様。
ありがとうございます(*'ω'*)
この感じ久しいな……目の前の状況がやけにクリアに見える。
「予定とは違いますが、楽しい戦いにしましょう」
「それは私もお願いしたいところだ」
「魔法は使わないつもりでしたが、そうも言ってられないわね」
「使わないなら一瞬で終わるだけ。しかし私もそれは本意ではない。準備が出来たら言うが良い」
「「《パワーライズ》」」
―ピリ……パチ!
「これも久しぶりなので、怪我させてしまったらごめんなさい」
「そうか。なら、何本か打ち合おうか」
―パチ!
「行くよ……」
―ビュン!キィン!
「確かに質量が安定してないな。伝達が0.5秒程遅れている」
「……さすがね。今のでそこまで見切るなんて」
「先の言葉で言えば、素直な太刀筋だしな。見えて当然だ」
「あら、これはもう一つ上げなきゃね」
―ビュン!キン!キィン!
始めの合わせたところから、背後に回り二撃。私はその場を振り向かず捌く。
まだまだこれからか……がっかりさせるなよ先生!
♢
僕は何を見ているんだろう。これ、模擬戦闘で試験だよね?
「これがジュエルなの?」
「なんかいつもと違うな……うっぷ」
「雰囲気が違うし、何より自分の事を私って言ってるからじゃない?」
「え?そんな喋り方していましたか?」
皆には聞こえなかったのかな?いつもと違い過ぎて、僕はそればかり気になったんだけど。
「そう言えばエルダーンさんは?」
「なんか席外すってどこかに行っちゃった。変なスイッチ入ったとか言ってけど。よく分からないんだ」
「彼はジュエルといとこですから、何かあるのかも知れませんね」
エルダーン君は、このジュエルちゃんも知ってるんだね。小さい頃から一緒にいるんだし……
「羨ましいな……」
「何か言いまして?」
「何でもない」
出逢って間もないけど、結構お話してきたから知ってるつもりだったけど。僕はジュエルちゃんの事何も知らないのかも知れない。
―スタッ
「遅れました」
「ジャムさん?」
「エルダーン様から話は聞いています。お嬢様の悪い癖が出たと」
「悪い癖?」
「はい。猛者との戦闘で自重を忘れる悪い癖です」
ジャムさんが言うには、普段から力を見せないように気をつけているらしい。その有り余った魔力を発散出来る機会があると、こんな状況になるとか。
「ここ最近はありませんでしたが……どこかで不完全燃焼したのでしょうか?皆様から見て、お嬢様がいつもと違う様子だった事がありましたか?」
「不完全燃焼かどうか分かりませんが、上級生との戦闘訓練がありましたわ」
「あの時はジュエルちゃんが静かになったね。少し周りが見えてない感じ?」
「それですね。訓練だからと見ていなかった私の落ち度です。皆様、申し訳ありません」
「別にジャムさんが謝る事なんてないよ」
謝るジャムさんに頭を上げてもらう。
「皆様はお嬢様を怖いと思ったりなさらないのですか?」
「僕は見た事ないジュエルちゃんが見れたし、嬉しいとすら思うから」
「ツール様……」
「私も怖いとは思いませんわ。むしろ普通に喋れる事に驚いてるだけですわ」
「俺も……今は別に気にして……うっぷ」
「スノウ様……ファクター様……は大丈夫でしょうか?」
―カキィン!キン!キキキキィィィン!
あ、ジュエルちゃんの事忘れてた。やけに響いた剣の音で前を見る。
「もう全然見えないね」
「参りましたね。こうなっては私も止められません。ここはあの方を呼ぶしかないです。エルダーン様はまだ来ないのでしょうか」
―ビュン!
「む。《アースウォール》」
―バキィ!
「ここは危ないですから、上へ行きましょう」
「い、今の何?」
「斬撃の余波と言いましょうか。お嬢様の剣技の一つです」
「確かに危ないですね。動けますかファクターさん」
「あぁ……すまない」
「背中は守ります。今のうちに上へ」
―ガキン!ガキン!
上に向かう間、ジャムさんの土壁がゴリゴリ削れる音が響いていた。
♢
面白い。実に面白い。
「これはどうだ?」
―チャキ……ビュン!」
「っく!せや!!」
―カキィン!
「これも弾くか!素晴らしい反応速度だ」
「お褒めに預かり光栄ね。でもそんな喋る余裕があるのかしら」
「これくらい序の口だ」
「それじゃ体も暖まってきたし。今度はこちらから行きます!」
「遠慮は要らない。来い!」
―ッヒュ……
残像すら残さない動き。目の前から消えた様にすら見える。
「後ろを取れば良いものではないぞ?」
―ビュン!
「ん!残像!?」
「後ろばかり狙うのには訳があるのよ」
「前か!」
―ビュン!
「これもか!」
「速いだけじゃないのよ。これが……《フラッシュイリュージョン》」
「はは。そう来なくては……《レギオンドミネイション》」
気づけば周りには相手の幻影が増えていく。目で追うのも大変な数だが、今の私には攻撃してこない幻影はどうでもいい。
「普通の相手であれば、有効な攻撃だろう……私でなければな!」
―バシュン!ヒュン。カキィン!
一撃目は幻影だが斬り捨て、二撃目は躱す。最後は実体だから受ける!
「これも見切りますか!?」
「把握していれば造作も無い事……」
「全く……貴女は本当に七歳ですか?」
「戦いに年齢は関係無いだろう。強いか弱いかだけだ」
「あると思うけど……」
―ガキィィン!
剣を弾き、お互いに距離をとる。
「正直言って、これを使って無傷は凹みますね」
「それはこちらも同じ事。剣技は少し自信があったが、どれも防いでいるだろう?」
「当たれば終わりそうな攻撃ばかりですからね」
「それではこれはどうかな?」
剣を腰に戻し、姿勢を屈める。シンプルが故に一番速い攻撃。
「すぅ……一閃」
「!!」
―ッタ……
「消え……っくう!」
―ガキィィン!ギギギ……
「躱さず受けるか。しかし、この技はそれで終わらない」
「ぐぅ!」
―ブゥン!
剣を離せばそれまで。模造刀であるから破壊は出来ない。しかし勢いをそのまま上に持っていくと……体ごと浮かせる!
「っく!」
「空中じゃ動けんだろう?」
―チャキ
剣先を引き戻し、地面を蹴るのと同時に突き上……
―ガツン!
剣が何かに阻まれる。
「やれやれ……うちの孫は遠慮を知らんのう」
「……お爺様」
「久々にそう呼ばれたのう。しかし!いつもの呼び方の方がワシは好みじゃ!」
剣を止められた事で視界が少し開ける。
「すまぬじいじ。感謝するのじゃ」
「いいのじゃ。ワシはじいじ!じゃからのう」
「いやーギリギリだったな!」
「エルもすまんな。助かった」
「そう思うなら、感情をちゃんとコントロールしてくれ〜」
「精進するのじゃ」
エルに言われる様じゃいかんな。強者の戦いを見ると、ついつい激ってしまう。
「教える先生もすまぬ。ワシが言うのもおかしいかも知れんが、大丈夫じゃったか?」
「いえ、元は私も煽った訳ですし。結果は風穴開かなかったので大丈夫です」
「はは。以後気をつけるのじゃ」
「それは私もです」
笑い事で終われて良かったのじゃ。もしあのままやってたら、危うかったかも知れんな。
「お嬢様……」
「じゃ、ジャムも居ったのか!?」
「私が見えてない状況の様で……お仲間毎、斬り捨てるおつもりですか?」
「ん?」
会場の外を見ると、ジャムが防いだであろう土壁に斬撃の跡が見える。
「は!ツール!大丈夫じゃったか?」
「うん。ジャムさんが守ってくれたから。ふふ……」
「ど、どうかしたのか?」
「んーん。やっぱりジュエルちゃんはこっちが良いなって」
「すまぬ。怪我が無くて本当に良かったのじゃ」
ツールを隅々まで確認して、どこにも怪我が無い事を見て安心する。
「だけど困った事が……」
「どうしたのじゃ教える先生?」
「さっきの戦いで魔力が空っぽで、手も痺れて暫く剣が握れなそうです」
「……申し訳ないのじゃ!!」
ワシは土下座で謝る。
「そこは問題ないじゃろう。ワシが試験官をやってやろう!」
「バーン様が!?」
「じいじ!」
「可愛い孫の失態じゃ。責任をとるのが保護者であろう!」
その後の試験はじいじが替わりに行ってくれた。英雄との模擬戦だけあって、喜ぶ者も始めはいた。
そう始めだけ……次々と薙ぎ倒される生徒を目にすると、次第に悲鳴へと変わったのは言うまでもない。
スノウ「あそこに居たのは、ツールさんだけじゃないのよ?」
ジュエル「すまぬスノウ……」
スノウ「本当に気を付けて下さい。ファクターさんにトドメを刺すおつもりですか?」
ジュエル「も、申し訳ないのじゃ……」
スノウ「次からは私が避難してからにして下さい」
ファクター「す、スノウ?」
ツール「バーン様と戦えるなんてドキドキだね」
エルダーン「そんな気分でいると大変だぞ?」
ツール「え?」
エルダーン「あえて説明するが、ジジの祖父だからな?」
ツール「それってどう言う……」
バーン「さぁやるぞ!ちまちま一人ずつじゃつまらん!各クラスまとめてかかって来い!」
エルダーン「な?」
ツール「あははー」




