第三話 経験を活かすのは難しい
ブックマーク、読んでくれた皆様。
ありがとうございます(*'ω'*)
三度目もやはり赤児から始まる訳だ。記憶を持った状況は二度目になるんだが、幼少期は暇である。
寝て起きての繰り返し。早めにハイハイをマスターして、動き回ると母上に戻される。出来る事と言えば、自身について考えるのみ。
家庭を持ち、平々凡々な第一の生。自身の欲望を思うがままに実行した第二の生。そこで気がついた事がある。
まず知識がある事をひけらかすと恐怖を持たれると言う事。周りの反応も悪く距離を置かれるので、人付き合いの難易度が上がるのだ。何より気を使うのは……
「まー」
「今喋った!?あなた聞いて!純ちゃんが喋ったわ!」
「なんだと!?パパは言えるか?パパだぞー」
「まー」
「ふふ。まだ難しいわよ。私はずっと一緒にいるもんね〜」
「ぐぬぬ!仕事を休むか……いや、それではこの子に苦労させる事になる。うーむ」
本気で仕事を休むか考える父上。
そう、誰を初めに呼ぶか、次に誰を呼ぶか。声を発するのは、もの凄く神経を使うのじゃ。そんな幼少期を無難にやり過ごす。
次に気づいた事は、欲望に忠実過ぎると痛い目をみる。自由とは決して自由ではないという事だのう。
人の世は長いようで短い。手広くやれば器用貧乏になり、いずれ手詰まりになる。前世の記憶がある分、他者に比べれば優位かも知れん。
だが、結果はただ遊んでいる人である。
「純二郎くんは凄いよね。きっと悩みもないんでしょ?」
「なんでも出来るって人生楽しいだろう」
「いいよな〜純二郎は……」
二度目の生涯で何度言われたか。嫉妬は人としてしょうがない事である。しかしどこか一線引かれて、付き合いも長くは続かん。なので、全てを叶えるのは望んではいけないと学んだのじゃ。
最後に知識に胡座をかいておると、後々苦労するという事。特に勉学じゃな、小学生は良かった。しかし中学に上がりかなり出来たが、そこそこ出来るに変わり、高校になれば出来ないに変わる。
「こんなところじゃろう。」
ワシは教訓と呼べるものは、なんでもノートに書く事にした。初心忘るべからずじゃ。
体を鍛え、知識に貪欲に。人への感謝を忘れず。常に前を向く。
そして第三の生でも家庭を持つ事はしなかった。自身を高め、他者の育成に力を入れていたら、気がつけば40歳。
周りの友人は結婚をし家庭を築く。社会と呼ばれる世界では成功者として、親にも誇らしいと言われた。
結婚はしないのか?孫が見たいねぇなんて小言は当然言われた。
そして仕事を引退した自分に残ったのは……
「ただいま。」
……孤独と言う地位や名誉では買えないものだった。
どこで間違ったか…………いや、この人生も間違いではない。仕事に置いては達成感もあった。部下からも嫌われてはいないはずじゃ。全てを一人で解決はせず、協力して達成も心掛けた。
でもこの満たされぬ感情はなんじゃ?
「パパ!」
呼ばれた気がして振り返ると、そこには何も無い。
「そうか……これが家族…………」
その後は使い切る事が出来ない富を寄付した。恵まれない子供たちへ……幸せであれと願いながら。
第三の人生を生きたワシは、再び白い空間に辿り着く。
「お疲れ様です。どうでした?」
「今回も色々と勉強になった。聞くかの?」
「是非に」
そしていつものように生涯について語る。前回は笑ったり驚いたりと反応していた神様が、ワシの話をじっくり聞いてくる。
「…………と言う話じゃ」
話し終えてもなお、無言が続く。おや?もしや退屈で寝てしまったかのう?
「年寄りの話を静かに聞いてくれて感謝するのじゃ」
「…………ぅ」
「う?」
「うわぁぁん。悲しいよぉ〜悲し過ぎるよぉ〜」
オナゴのように泣きじゃくる神様。女神様かの?
「精一杯……生きてくれてありがとう。子供達の未来を気遣ってくれてありがとぉ〜」
「泣くでない。ワシはこれでも満足しておる」
「ぐす。失礼しました」
涙を流す姿が見れぬから、拭くための何かを渡す事が出来……
「ありがとうございます。ずびー」
「う、うむ。ワシと女神様の仲じゃろう」
「はは。そうであるな……よし!切り替えじゃ!って口調が移った」
「ほほ」
今はもう泣いていないであろう。切り替えじゃと言った声には活力を感じる。
「さて次も当然用意しているのですが、何か願いはありますか?無理難題でなければ、叶えますよ」
「女神様に願うなど……いや、せっかくのご好意じゃ。断るのも失礼じゃの」
「そうです。私とあなたの仲ではないですか」
「ふむ……」
そうは言っても何を願おうかのう。記憶さえあれば、後はワシの問題じゃしな。今回は悲しい話になってしまったが、面白い話が出来るとええのう……
「何かいつもと違う感じかのう?曖昧ですまぬが、なんと表現したかと思っての」
「それであれば私の作る世界にうってつけの場所があります。まだまだ発展途上なので、少し苦労するかもしれませんが。」
「苦労か……それくらいのハンデはあっても良いのう」
「では手配致しましょう。」
真っ白な世界に光が差し込む。
「相変わらず仕事が早いの」
「神様ですから」
「そうじゃったな。次会う時は面白い土産話を用意しておく。楽しみにしておれ」
「はい!それでは神のご加護があります様に……」
「いってくるのじゃ……」
……そして真っ白な空間から、少しづつ色を認識し始める。
―パシ、パシ
毎度恒例の産声を聞くが良い!
「おぎゃぁ!」
「あぁ……私の赤ちゃん」
「うぉぉぉ!みらぁぁじゅ!!」
「!?」
「ダメよジョリー。赤ちゃんがびっくりして泣き止んじゃったわ」
「そうか!すまん!」
少しびっくりしたのじゃ。思わず赤児の経験値を活かせず、黙ってしまったわい。少し違ったとは言ったが、随分とパワフル人よの。
「おぎゃぁ」
「よしよし。怖いパパでちゅね〜」
「そんな事言わんでくれ、ミラージュ」
「ふふ。でもジョリーパパは凄く優しいのよ。すぐにあなたも分かるわ」
「照れるではないか」
ふむ。このパワフルなのが父上か。名はジョリーと言うようだの。
「お。見てみろミラージュ。俺の子がじっと見ているぞ」
「パパだって分かってるかもしれないわね」
「ミラージュに似て賢い子だな」
「目元はジョリーそっくりよ?」
「目つきは険しくなって欲しくないが……可愛いからなんとかなるか」
母上はミラージュと言うのだな。声からしてとても優しそうな人である。
しかし、どちらも日本で馴染む名ではないの……もしや外国か?ワシ、飛行機怖いから海外は行かなかったからのう…………外国語話せるかのう?しかし言葉は分かるのは、なぜじゃ?
そんな心配をしておると、ワシの名の話題になった。
「それで名前はどうするの?」
「それなら既に決めてある!」
これで純四郎とかであったら泣いてやろう。外国に来てまで……
「ジュエル」
「ジュエル……いい名前ですね」
「俺達の宝石であり、輝かしい未来を歩んで欲しい」
はへ?随分とキラキラした名であるな。
「きっと素敵なレディになるわ」
「俺とミラージュの娘だ。それは当然であろう」
レディ?娘……ワシもしかしてオナゴになったのか?
純三郎「あの頃は若かった……孤独がこんなに辛かったとはのう」
女神様「彼、喜んでくれたかな。次は刺激的で素敵な生涯であるといいけど……さて役目を果たそう。今からお土産話が楽しみだ」
ジュエル「ばぶー!(オナゴじゃとー!?)」