第二十話 いつもと変わらぬ時
半袖で半ズボンで寝ると寒い?いや、まだいける……いける!(((o(*゜▽゜*)o)))
次回は10月3日の12時予定です。
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ありがとうございます(*'ω'*)
系統確認爆発事件後、ワシらは風通しの良い教室で授業を受けておる。とは言え講師がじいじが話してくれた内容が多く、おさらいをしている感じじゃ。
「……すぅ」
「ジャム」
「はい」
―スパン!
どこから出てきた謎のハリセンによって、エルの頭を引っ叩く。先生も慣れたもので、音がしても今は動じなくなった。
「エルダーン君。ここの絶対零度とは何か分かりますか?」
「ひゃい!え〜…… 分子や原子はたえず運動をしていて。運動自体は温度によって変わって、高温になるほど激しく低下させていくと、分子や原子の運動が完全に停止する状態の事です」
「ぐっ……正解だ」
「ありがとうございます」
此奴は寝ておった割によ〜答えるわい。
そう言えば昔から嫌がっておったのに、じいじの話はしっかり聞いておったしのう。馬鹿ではないのじゃが、手の抜き方が下手である。
それも魔法が好きすぎる故なのか。炎系統を行使するにあたり、温度や分子などは覚えておっても損はない。
「それでは……ジュエルさん絶対温度とはどう言う事か分かりますか?」
「うむ。物質の種類に左右されない温度を定める為、理想気体の熱膨張を計算する温度の事じゃろう」
「せ、正解です……この二人は全く」
うまく手を抜いておったのがばれたのか?突然指されてしもうたわい。ノートに書いた様々な魔法の組み合わせの考察を……
「お嬢様。小さい声ですが、考察が漏れております」
「なんと!失礼したのじゃ!」
「はぁ分かってくれればいいんです」
真面目に受けようじゃないか。
そしてそのまま授業は進み、ワシはふと疑問に思う事がある。この温度についての考察と言うか、実験結果は誰が発祥であるのか。勉学をする上で配られた辞典のような本には、誰が証明したなどの記載が全くない。それが誠かどうかは魔法を研究する期間が行っているようじゃが……後でジャムに聞いてみるとしよう。
「のうジャムよ。これらの知識は誰が発祥とか無いのか?」
「ございませんよ。神が示した書物ですから」
「神が?って神様おるのか?」
「いらっしゃると私は教わりました。何でも大聖堂の禁書庫に神が与えた知識の書があると言われています。勿論、各機関でそれをもとに確認作業はありますが」
「禁書庫……」
「お嬢様?」
「いや、なんでもないのじゃ」
ワシが神に会っておるから、おってもおかしくないと思ったんじゃが。まぁあながち書物があると言う事は、きっと各次元での知識共有して文明レベルを調整でもしておるのだろう。言葉で言うのは、伝わり方が危ういからのう。
そんな事より大聖堂に禁書庫と言うワードが気になるのじゃ。今まで剣や魔法についてしか学んでおらんかったが、この世界は広くワシはまだまだ知らない事があるんじゃな。なんだか楽しみになってきたわい!
♢
とある昼食での話。授業にも慣れ始め、食堂で食べる物に手作りをするものと色々な人がおる。そしてワシは他の生徒との交流をする為に、食堂を選んだ訳じゃが……
「スノウはいつも小食だな。足りるのか?肉やろうか?」
「大丈夫ですわ。毎日バランスよく食べる事が大切なのです」
「そっか」
「逆にライドは食べ過ぎでは?」
「良いんだ!いっぱい動くからな!」
―ズズ……
お茶をすすり、いつもの光景を眺めておる。
「おし!おかわり行ってくる!」
「まちたまえ。野菜を残しているぞ。きちんと全て食べると良い」
「後で食べるって……本当にファクターは母さんみたいだよな」
「私はエルダーンの母にはなりたくない」
「あはは。ん?ツールのご飯がないな。おかわり貰ってくるよ」
「僕は……」
「遠慮するなって。たくさん食べる男はモテるぞ」
「別にモテたいとは思ってないけど」
話を聞かず席を立つエル。何故かチラチラとワシを見るツール。
―ズズ……
「いつもと変わらぬ光景じゃな」
「どうしたジュエル?と言うか、ジュエルも小食だよね」
「ライドよ。ワシは栄養バランスを考えて食べるから良いのじゃ」
「栄養バランスって……お菓子でしょ?お菓子じゃお腹は膨れないよ」
「別の意味で膨れたり……」
「スノウの言葉が刺さるのじゃ!?良いのじゃ!運動するんじゃし」
最近はみなと打ち解けた事で、こんな会話ができるようになったのは良いのじゃが。うーむ。
―ガタン
「ほら、ツール。おばちゃんに少なめで貰ってきたぞ」
「優しさの使い所が……」
「あむあむ!」
「聞いてないよね」
「無理なら言うと良い。ワシは食べれぬが、ライドとエルならまだ食べれるじゃろう」
「ジュエルちゃん……」
ちゃん付に少しだけじゃが、背筋がぞくっとする。呼び捨てで良いと言ったのじゃが。
「ジュエルはたくさん食べるのと、小食な男の子はどっちがいい?」
「なんじゃ急に。そうじゃな……ワシがあまり食べれんから、食べてくれる方かのう?」
「いただきます!」
ツールが置いた箸を掴み、再び食べ始める。その光景を見てニヤニヤするオナゴ二人。何が面白いのかのう。
―ズズ……
平和じゃ。近くのテーブルは空いていて、誰も座らんから静かにすら感じる。これもいつもと変わらぬのう……
♢
そして学園が始まり早三ヶ月。魔法の授業も落ち着き、皆が放課後の自主練に精が出ておるこの頃。教える先生が何やら張り切っておるように見える。ホームルームでやる気を出すんじゃなく、授業で出せばいいものを。
「はい!みなさんにお知らせがあります!魔法の授業も無事軌道に乗りましたので!」
「落ち着きなよ教える先生。何かいい事があったの?」
「よくぞ聞いてくれました!なんと毎年恒例の学年別クラス対抗が始まるんです!」
拳を突き上げて、溢れんばかりのやる気に満ちた教える先生。
「クラス対抗とはなんですか?」
「いい質問ですファクター君」
咳払い一つ。黒板に何かを書き始める。
「借り物生産競争……綱引き……対抗リレー……運動会?」
「一学年の種目はこちらです!さぁみなさん!どれに出ますか!」
「待て待て。説明はどうしたのじゃ?」
「そうでした!借り物生産競争は五人。綱引きは十五人。リレーは六人です」
「いや、人数の話ではなく……ん?」
皆は気づいているが、一人だけこの問題に気づいていない人がおる。
「教える先……シエル先生。その私達のクラスも参加するんですしょうか?」
「勿論です!皆平等に参加出来ると、朝の職員会議で言っていました!」
「そうですか……それで、借り物とリレーはなんとかなりそうですが。十五人はどう集めるんですか?」
「どうって。クラス対抗なんだから……クラスから…………足りない!?聞いてきます!」
教室を飛び出す教える先生。見事なまでに空回りである。
「どう思うジジ」
「どうとはなんじゃ?」
「イベント的なものはあるのはいいんだけど。先生のあの態度は絶対お金絡んでるよ」
「別に聞かなくとも、自分で言うじゃろう」
「あーそうだな」
「それに金銭が絡んでもよいじゃろう。この教室の窓をそろそろ直して貰わねばならんじゃろう。秋は良いが冬は寒いのじゃ」
暑いからそのままでいいかってそのままの窓ガラス。学園長が壊したのじゃから、責任は学園長かと思った。
しかし教室の管理は教師が請け負う決まりがあったらしい。教室では何もないと思っていた教える先生の失敗である。
―ダダダ……ガラ!
「はぁ……はぁ……六人で頑張れってさ!」
「頑張れって。十五人と六人で綱引きって絶望的ではないか?」
「あの、僕はその、力は無いから」
「私も力仕事は出来ません」
「二人ともほぼ戦力外じゃないか。それに……」
ファクターがワシを見る。
「なんじゃ?」
「ジュエルもそんな力は……いや、ゴリ……何でもない」
「ツールの剣振り回してたもの。力ない訳ないよね」
「今、ゴリって聞こえたが?」
「気のせいじゃないか」
「いけるよ!4人でも!…………これで窓ガラス代が稼げる!」
「ほら言ったじゃろう」
喜ぶ教える先生に衝撃的な事を言うスノウ。
「綱引きと言うのは魔力を使っても良いものなのでしょうか。魔力無しではジュエルも厳しいのではなくて?」
「ふむ。確かに強化無しじゃと、ワシは非力じゃ」
―ダダッ
再び猛ダッシュの教える先生。
「ジジが非力ねぇ……」
「なんじゃエル?」
「確かに強化無しじゃ振り回せないだろうけど。持ち上げることくらい出来るよな?」
「さすがに無理でしょう。ジュエルはこんなに小さい女の子だよ?」
「それはどうかライドが聞いてみなよ」
「ジュエル今の話は……」
「持てたところで意味ないじゃろう。戦場で戦えてこその力。なのでワシは非力なんじゃ」
「それ、非力って言わないよ……」
ライドの言う非力とは何じゃろうか。戦場で戦えぬ力は、非力以外の何でもなかろう。
―ダダダ……ガラッ
「これでお金ゲット!…………魔法良いって!勝ったね!」
「心と言いたい事が逆じゃ」
素直なところはいつもと変わらぬって事で……良いのか?
ジュエル「気持ちがはやりすぎてしまっておる」
ライド「欲望に忠実だよね〜」
スノウ「裏表の無いと言うのは、とても信用出来ると言う事ですわ」
エルダーン「もう慣れた。先生は先生だよ」
ファクター「先生の気持ちは置いておいて、寒い冬を越すために頑張ろう」
ツール「そ、そうですね。風邪ひいたら大変」
教える先生「勝つわよ皆!」
一同「「「「「「おー……」」」」」」




