第十八話 普通の感覚とはなんじゃ?
朝、ゴミ出しで外に出たら寒かった。
でも小学生とか半袖なんだけど〜これが若さか……(゜ω゜)
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朝、ワシは目覚めるといつもの日課に……
「まだ魔法が使えんから、寮の周りでも走るかのう」
「私もお供いたします」
「では準備じゃ」
ジャムと二人で動きやすい格好に着替え、寮の周りを走り始めた。
入口の前を通る度、何人かの生徒に出会った。
「おはようなのじゃ!」
「「おはよう御座います!」」
直角まで頭を下げ、大きな声で挨拶を返してくれる。ハキハキしており、気持ちのいい朝じゃな!その後も挨拶をしれくれる生徒が多かった。
「ん?ジジじゃないか。朝からランニングか?」
「うむ。エルは走らんのか?なんなら一緒に……」
「……あ!そう言えば、食堂開いてるらしいぞ。ジジは朝、食べに行かないのか?」
「食堂か?ワシはジャムがおるから、部屋で食べる事も出来るしのう。ところでエルは……」
「色んな人と会えるチャンスだぞ。友達作るんだろう?」
「なるほど!その手があったか!行くぞジャム!」
「お嬢様!汗を流し、着替えをなさらないと!」
「そうじゃな。エチケットは大事じゃな!」
エルに食堂の場所を聞き、急いで部屋に戻る。シャワーをし、制服に袖を通す。
「お嬢様、髪がまだ濡れています。乾かさないといけませんよ」
「こんなの自然に乾くじゃろう」
「なりません!」
「お、おう。」
服は制服じゃから困る事はないが、髪は少し長からいつもジャムに任せておる。髪について適当にやろうとすると、いつも怒られるのじゃ。オナゴは髪が命だとか……いっその事切ってしまいたい。
「あぁ〜髪を乾かす魔法が欲しいのう」
「風系統でしょうか?」
「昨日の試験でやったのを使えればのう」
「髪を乾かす魔法……それは画期的ですね」
「今は拭くことしかできんしのう」
髪が長いと気軽にシャワーも出来ん。この世はまだまだ不便な事が多いのう。ドライヤーくらいならワシでも作れるか?いや、作るのであればツールに協力してもらうか。
考え事をしていると、髪はジャムによってセットされていた。そしていつの間にか着替え終えたジャム。
「参りましょう」
「そうじゃな」
食堂は確かこっちと言っておったな。
「お嬢様。こちらで御座います」
「……知っておったぞ」
「ふふ。そうですね」
道案内はジャムに任せて、その後ろを着いて行く。そして辿り着いた食堂を見て感動する。
「人がいっぱいなのじゃ!これはお近付きになるチャンスばかりじゃ」
「そうですね。頑張って下さいね」
「おばちゃん!大盛りで頼むのじゃ!」
「朝から元気ね〜すぐ用意しちゃうわ」
今日の食事は和食じゃな。ワシ好みである。
「しかし混んでおる。開いてる席は……窓際のあそこにしようぞ。隣いいかのう?」
「あ、うん。どう…………ぞぉぉぉ!?」
「驚かせたかのう?すまぬ」
「いえ!?謝って頂くことは何一つ御座いません!あ、お連れ様もいますね!僕もう食べませんので、この席をお使い下さい!」
そう言うと、隣の席の少年はいなくなってしまった。食器の上の食事はまだ途中に見えておったのじゃが?気を使わせてしまったか?
「あ、感謝する少年!行ってしまったのじゃ」
「私はメイドなので放って頂ければ良かったのですが」
「優しい者なんじゃろう。せっかくじゃし、ジャムも座るがよい」
「私はメイドですので、そのような事は致しま……」
―ぐぅ……
「ここは屋敷ではないのじゃ。ワシの隣で座り……ってジャムの分がないのう。持ってくるのじゃ待っておれ」
「お嬢様!?私が!」
「席を離れてはいかんぞ。しっかり守っておくのじゃ」
「あぁ……」
食堂のおばちゃんにジャムの分をお願いする。
「侍女の分まで貰いに来るなんて、珍しい子だねぇ」
「何を言う。普段世話になる者を労えんで、何が主人であるか」
「貴族らしくない考えね」
「よく言われるぞ。ワシは思った事を言っているだけなんじゃが」
「それが大人になると出来ない事があるんだよ」
「大人とは大変なのじゃな」
ワシも気持ちは大人じゃがのう。
「ほら。出来たよ大盛りで」
「感謝するのじゃ!」
「しっかり食べるんだよ」
「いただきますなのじゃ!」
席に戻るとジャムが席の前でじっと立っている。その体から何かが漏れているような……人を寄せ付けないオーラが見えた気がした。
「そんな形相で睨むと怖いのじゃ」
「いえ、席を守る事が任務でしたので」
「心なしか周りに人がおらん気がするんじゃが」
お近付きになるのは今日は難しいのう。今日は仕方がない。
「では食べるかのう。ジャムも座るのじゃ」
「私はメイドですので……」
「父上も母上もおらんこの状況での、一人で食べるのは寂しいのう……なんて」
「ご一緒いたします!」
なんだかんだ言って、ジャムはワシに甘いのう。そう言う所は好きじゃからいいんじゃがな。
そして二人で食事を終えて、ワシらは教室に向かう。
「おはようなのじゃ!」
「「「ひぃ!?おはようございます!」」」
「おはようなのじゃ!」
「「「きゃ!?おはようございます!」」」
各教室を開けては挨拶をして回る周る。
♢
「その結果がこれか?何を落ち込んでるんだジジは」
「なんか反応がのう……よそよそしいと言うか、恐れておるんじゃよ」
「そりゃ突然教室の扉を開けて、挨拶すればそうなるだろう」
「何か分かるのかファクター?」
「ジュエルは自分の立場を分かっていますか?」
「ワシの立場?そんなのただの学生だあろう?」
やれやれと首を振るファクター。
「ジュエルは領主の娘だろう?」
「一応そうじゃな」
「一応って……まぁいい。それに昨日の試験を皆が見ている」
「そう言えば教室から見ておったのう」
「ただでさえ領主の娘と言うのは、声をかけられるものでもない。そこへあの魔法を見てしまっては……そうなるのも分かる」
偉いのは領主であって、娘は関係ないと思うのじゃが。
―ガラガラ
「おはようなのじゃ!」
「おはようございます。ジュエルさんは朝もお元気ですね」
「しっかり寝て、朝のランニングをし、ご飯を食べたからのう!」
「健康的な生活ですね」
「ふむ。ファクターよ。スノウは別に普通じゃぞ?」
「なんの話ですの?」
ワシの朝の出来事で、距離を感じる事をスノウに話した。
「その件ですか。ある程度の覚悟はしていましたが、ジュエルさんは目立ちましたから」
「ただワシは普通に剣を振り下ろしただけじゃが?」
「普通の人は、身の程以上の大剣を振り回せませんし。何より剣で地面は割れないのよ?」
「筋力強化は初歩の雷系統じゃぞ?」
―ガラガラ
「おはようなのじゃライド!
「うん。おはよう〜」
「ライドも普通なのじゃ」
「彼女はそう言うのを気にしなさそうですけど」
「ん?なんの話?」
遅れて来たライドに事情を説明する。
「皆がジュエルをビビってるって事?あはは、そりゃそうだ」
「な、何故じゃ!ワシは普通に剣を振っていただけじゃぞ?」
「その感覚が普通じゃないよ。あんな剣ブンブン触れないし、地面も普通は割れないから」
「スノウと同じ事を言っておるな……エル!ワシは普通じゃないのか!?」
「だから前から言ってるじゃん。俺も慣れたから気にならないけど」
周りとの認識が違うのは認めねばなるまい。今度から魔法を使う時は二人の意見を聞くとしよう。これでワシも普通の子供で、友達も出来るはずじゃ!
―ガラガラ
「はーい。席ついて」
教える先生が来て、皆が各々の席に座る。ワシが席に着くと、隣にはツールが座っておった。初めはいなかったはずじゃが?
「ツールよおはようなのじゃ。いつ教室に入って来たのじゃ?」
「スノウさんが来た時に……あ、おはようございます」
「気づかんかったぞ……ツールは忍者なのか?」
「忍者?」
「なんでもないのじゃ」
後ろの席から見て思ったが、このクラスの者はみな普通では無いのでは……なんて事を少しだけじゃが、思ったりした。
ファクター「魔法は使えるのは普通だが、さすがに地面を割るのは普通じゃ無いだろう」
スノウ「そうですね。大剣を担ぐのも普通では無いですよね」
ライド「でもあのくらいの剣なら、持てるんじゃ?」
二人「「無理です」」
ライド「そうか?」
エルダーン「結局全部普通じゃないと」
ジュエル「普通とはなんなのじゃ?」
エルダーン「とりあえず言える事は、ジジは普通じゃないって事だよ」
先生「もう先生来てるからね〜話聞いてね〜…………このクラスは普通じゃないんだけどなぁ」
生徒達「…………」




