第十六話 皆の実力は①
時間が足りないと感じるこの頃。
多分やりたい事が増えたからなんだろう。どこかで整理しないとね〜_(┐「ε:)_
ブックマーク、評価、読んでくれた皆様。
ありがとうございます(*'ω'*)
ライドが先陣を切って前に出たのじゃが……
「剣を構える必要はなんじゃ?」
「さぁ戦うのかな?俺、戦う準備なんか何にもしてないよ」
「ワシもそうじゃのう。格闘技はそんな得意ではないが仕方がない」
その場で屈伸を始め、戦う準備を始めたワシとエル。しかしそれを見たファクターが止める。
「物騒な事言ってますが。あれは戦う為に剣を抜いた訳ではないと思いますよ」
「そうなのか?」
「これはあくまで魔法を見せる為の試験です。剣を抜いた後、ライドさんからは殺意が出ていません」
「確かにそんな気配はないのう」
「ファクターもジジも良くわかんな〜」
とは言え、今は見守る事しか出来ん。ライドの出方をよく見ておこう。
「それでは魔法を見せて下さいますか?」
「はい!行きます……《ムーブファースト》」
―ピリ……
「っふ!は!や!」
―ヒュヒュン!ビュン!
「速い!」
「筋力強化……雷系統の初歩ね。素晴らしい」
「ふぅ……こんな感じですかねー」
ふむ。腕力強化による剣を無理やり動かした感じかのう。
「ライドよ。その方法では体を壊してしまうぞ」
「ジュエル?」
「腕の力だけに頼ってはならぬぞ。剣は腕で振るのではない。腕に肩、腰に脚と体全体を使わねば」
「そんなの分かってるわ。魅せるにはこれが良かったの」
背伸びした魔法だった事は、本人が分かっておったか。しかし魅せる為とは言え、無理をしすぎである。
「ウォー先生。彼女を保健室へ」
「私は大丈夫です。みなさんを見て行きたいので」
「しかし、その肩の痛むのではなくて?」
「……動かさなければ平気です」
彼女も中々の強情さじゃ。ワシが治癒出来れば良かったのじゃが、見た事もない魔法は使えんしのう。
「それであれば、私が行いましょう」
「肩を見せて下さい……貴方は自分の限界はしっかり分かっていないのかしら?」
「皆をあっと言わせたかっただけだって〜」
「ジュエルさんが言ってましたが、剣は腕で振るのではないみたいですね」
「それは知っているよ」
「何故ですの?」
「力任せな剣では肩に負担がかかり、筋肉の筋を痛めるからかな」
「肩と筋肉の筋ですね……《リカバリー》」
スノウが魔法を唱えると、ライドの肩から手首にかけて淡く光っておる。
「あれが治癒なのか?」
「僕も初めて見る」
「ん?ツール・チャーム・ランドー君ではないか。エルだと思っておったわ」
「エルダーンさんはあっちでファクターさんと話してる」
「そうか」
知らぬ間にエルは移動しておったのか。全くじっとしてられん性格じゃからのう。
「ジュエルさんが?」
「ワシがどうしたのじゃ?」
「じっとしていられない性格って」
「ワシが言ったのか?」
「うん……」
うっかり漏れてしまったようじゃ。
「エルはいつも落ち着きがなくてのう」
「エルダーンさんは初めから動いてないよ?僕はジュエルさんが、どこかに行くから着いて来ただけで」
「ふむ。動いておったのはワシか」
…………まぁそれはそれとして。
「どういう効果なのかは、本人に後で聞くとしよう。では次は……」
「ファクターさんが行くみたいですね」
ジャンケンで負けたのか、悔しそうなエル。ツール・チャーム・ランドー君とエルのもとに戻る。
「フラフラどこ行ったかと」
「よく見える所に移動しただけじゃ」
「ふーん。まぁツールが一緒なら変な事しないか」
「それはどういう事じゃ?」
「いや、こっちの話。ほらファクターの番だ」
勝手に順番を決めおって……ファクターは手を前にしておるだけで何も見えん。
「いや……よぉ〜見ると風か?教える先生の髪が僅かに揺れておる」
「あまり派手な感じじゃないな」
「あの副学園長の魔法の後じゃから、風は少し不利というものじゃよ」
先生達と少し話をし、ファクターが戻って来る。
「どうじゃったのだ?反応は良いように見えたが」
「いつもの様に便利だと言われただけだ」
「どう便利なのじゃ?」
「別になんて事ない。ただの温風だ」
「温風って事は、ファクターは炎系統も使えるのじゃな。二属性は凄いらしいのう」
「そ、そんな事はない……ぞ」
「ジジが言うと嫌味に聞こえるぞ〜」
エルが言葉を残して先生達方へ歩いて行く。
「順番勝手に決まっておるな」
「さっき決めた。エルダーンの次は決まってないがな。最後の締めはどっちが良い?」
「大取りぃ!?むりムリ無理ぃ!」
「凄い取り乱し様だな。ならばワシが殿を務めようではないか」
「本当にぃ!?ありがとう」
「お、おう」
いつものおどおどではなく、やけにはきはき喋るのう。
「それじゃ行きます」
「うむ。行ってまいれ」
エルが教師の前に立つ。今回は何を魅せるつもりじゃ?
「それじゃ行きます……《イルミネートフレア》」
―ッボ!
「なんと……これ程に安定した魔法を使えるとは」
「まぁ練習しましたから」
「凄い……」
先生達が驚いておる。一見地味ではあるが、炎系統は燃えるもの。球体にするには一定の魔力コントロールが出来んといかん。エルのやつちゃんと学んでおったんじゃな。
「この魔法は誰に……そう言えば貴方はイグニート家の者でしたね。それであればジルコニア様が」
「これはジジに習ったものです。こう言う器用な魔法はあいつの方が得意ですし」
「ジュエルさんに……」
なんじゃ?ワシの方を見て、特におかしな事はないじゃろう。
「もう良いですよ。ありがとうございました」
「いえ、こちらこそ」
エルがこちらに帰って来ると、満足そうにブイサインをしてくる。
「うむ。反応も上々じゃな。よくやった」
「はい師匠」
「その言い方やめい。ワシは普通の事を教えただけじゃ」
「普通な事ね。まぁジジからすればな」
妙な言い回しをするのう。
「次はツール・チャーム・ランドー君の番じゃな。あまり気負いせず頑張ってくるのじゃ」
「は、はい!」
カチコチと音が聞こえてきそうな歩き方。右手と右足が一緒に出ておるぞ。そして踏み出した足を止め、こちらに振り向く。
「あのジュエルさん!」
「なんじゃ?」
「魔法がうまく行ったら……」
「ん?」
「僕の事をツールと呼んで下さい!」
「へ?そんな事であれば構わんが」
「行ってきます!」
「おう。行ってらっしゃいなのじゃ」
突然何を言うかと思えば、名前で呼んで欲しかったのか。
「青春だな」
「これが青春なのですか?」
「彼にとっては勇気がいる事ではないかしら?」
「タイミングって大切だからね〜」
「みなは何を言っておるのじゃ?」
「「「「なんでもない」」」」
「そうか?」
みなの目が少し生暖かい気がするが、今の話の中に何があったと言うのじゃ?
おっと、ツールが……まだ出来ておらんから、ツール・チャーム・ランドー君か……長いのう。
「貴方は何をしますか?」
「ぼ、僕はこれしか出来ないので!《クリエイトソード》」
―ボコ
地面が少しだけ盛り上がった。全員の頭にハテナが浮かぶ。
―ゴゴ……ガチ!
盛り上がった山が細い棒状の物に変わった。クリエイトソードと言っておったから、剣でも出てくるのかと思ったが。
「剣の柄かのう?」
「だな。あれが魔法?」
「しかし、あれには何か違和感がある。柄だけではない……」
副学園長も教える先生も、盛り上がった剣の柄を見る。
「これで終わりですか?」
「はいです!?」
「剣の柄は基本ですからね。これから学べばきっと剣も出来ますよ」
「あ、あの……」
「ありがとうございます。それでは最後に」
「あ、はい……」
とぼとぼと歩いて来る。
何かを言い掛けたが、落ち込む事は何もないはずじゃ。さてワシは何をするかのう……
「あれを使いあれとあれを……」
「あの!ジュエルさん頑張って」
「いや、ここはやはり……それも良いであるな!」
「あぁなったらジュエルは何も聞こえないさ。ドンマイだツール」
おっと、そうじゃ!
「ツールよ。見事な土魔法じゃった。あれはワシが使って問題ないかのう?」
「え?あ、はい」
「では借りるぞ」
「あの!ジュエルさん!」
「ん?」
「頑張って!」
「うむ。見ておれ」
大取りとして相応しく、派手にかましてやろうじゃないか!
ライド「なぁエルダーン。ジュエルは一体何を得意としているんだ?」
エルダーン「ジジは特別得意な系統はないけど」
ライド「ないのか?まぁ剣について詳しいようだし、あぁ見えて剣術が得意なのか」
エルダーン「剣術もそれなりに強いけど。得意とまではいかないはず」
スノウ「もう焦ったいですわ。ジュエルさんは何が出来るのですか?」
エルダーン「それは答えづらいな。うーん」
ツール「見てれば分かるよ。きっとジュエルさんは凄い事をする」




