第十五話 先生を仕切るドン
窓を開けるだけで、だいぶ涼しくなってまいりました。良い温度感です_(┐「ε:)_
ブックマーク、評価、読んでくれた皆様。
ありがとうございます(*'ω'*)
どうやらワシらの教室は一番端にあるらしく、結局一階を練り歩く形になってしまったわい。
そしてジャムの案内で、二階にある職員が集まる部屋へと辿り着く。しかしこの学園の構造はどうかしておる。回り道をせねばならぬとは。ジャムが居ったから良いもの……ワシ一人じゃ迷子待ったなしじゃな!
さて気を取り直していくとするかのう。
「頼もう!」
「なんだ?」
「道場破りみたいな事をするのはどこの誰だ」
「ひゃぁ!?す、すみません!私のクラスですー」
突然の訪問者に睨みを利かせる職員達
「あれらが学園長の言う特別クラス……」
「まだただの子供に甘すぎるのでは?」
「も、申し訳ありません!私がしっかり言っておきますので!」
「ふん。新米になんとかなるものなのか?」
―パンパン
「皆様、生徒達の前ですよ」
「す、すいません」
奥の席から誰かが喋ると、教師達は縮こまる。あれがここの偉いものじゃな。
「子供のする事をいちいち声を荒げる事はありません。このクラスについては学園長が決めた事です」
「「「…………」」」
「初めまして。小さな生徒達……私はストリクト・ルール・ストーム。この学園の副学園長をやっているわ」
副学園長と言う事は、学園長の次に偉い人なのじゃろう。その目は子供を見る目ではないが……
「早速じゃが、魔法を使う為の許可はどうすれば良いか聞きに来たのじゃ」
「あら?それは伝達するように伝えたはずですが?」
ワシは何一つ話を聞いておらんかったから分らんが、ファクターが聞いておらんなら言ってないのであろう。
「まだ授業は始まっていないので……今度でいいかなって」
「伝達して下さいと、私は言いましたが?」
「ひぃぃ!?申し訳ありません!」
目を逸らして言い訳した教える先生は、何かを感じとったか土下座をする。
「ファクターよ。あのご婦人は凄い人なのか?」
「凄いで片付けていい人ではありませんね。自身を守る為の繊細な風から、敵を殲滅する為の荒々しい魔法を好んで使う。レベル三の風系統の使いですよ」
「ほほ。エアリアル家の時期当主様に知って頂いて光栄ですわ」
何かバチバチするものが見える気がするのう。ファクターはまだ子供ぞ?大人気ないと思うが。
それに物怖じせんとはファクターの胆力は中々じゃ。隣におるツール・チャーム・ランドー君なんぞ、ワシの服を強く握りガクガク震えておるのにのう。
「早速じゃが副学園長殿。ワシらは自主練習をしたく思う。その為に魔法の許可が欲しいのじゃ」
「殿?」
「あージジの言葉遣いは気にしないで下さい。これが普通です」
「そうですか…………」
何かを考える様に副学園長が腕を組む。
「あなた達はまだ魔法を習ってはいません。その状況での使用を認める訳にはいきませんが……特別クラス」
「あのー皆さん。授業が始まってから練習してもいいのではないでしょうか?授業であれば私も居ますし、それまでには訓練場も使えるかと思うし」
「それはいかん。魔法の鍛錬は日々行う事で磨かれるものじゃ」
「それはそうですけど……ってジュエルさんは魔法を使えるのですか?」
「使えるぞい。それが普通であろう?」
目をパチパチする教える先生。他の教員も同じ様な顔をしておる。ん?ワシ何か間違ったかのう?
「そこで俺を見るなよ。俺も使えるんだから」
「そうじゃよな」
ここは一番常識人ぽいファクターに聞いてみるとしよう。
「私も簡単なものであれば使えます」
「ライドとスノウはどうじゃ?」
「私は強化を少しだけかな〜」
「私も大した事は出来ませんが、水を出すくらいのことであれば」
なんじゃ、皆出来るではないか。先生方は何を驚いておるのだか。
「そう言えばツール・チャーム・ランドー君は何か出来るのか?」
「ぼ、僕ですか!?僕は物を作る事しかできません」
「なんと!修理ではなく作れるのか!凄いではないか。ワシはまだ上手くできんのに」
「そ、そんな事ないです」
もじもじと照れておる。掴んだ手が緩み、震えも止まっておる。
「いいでしょう。私が監督します。ウォー先生も着いて来なさい」
「はいぃ!!」
♢
副学園長と教える先生と一緒にワシらは外に出た。
「広いのう。走るにはもってこいじゃな」
「お。ジュエルも走るの?今度一緒に走ろうよ」
「ライドも走るのか。いいのう一緒に走るのじゃ!」
「それは後で話そうか。ほら、着いたみたいだ」
校庭の真ん中までワシらは歩くと、副学園長達が止まる。
「臨時なのでここで広さは十分でしょう。一応簡単な障壁は必要かしら……《ストームカーテン》」
ワシらを覆う様に風が流れていく。
「多少の攻撃魔法くらいならこれで平気でしょう」
「多少の……ジジ」
「なんじゃエル?」
「いいか。今回の魔法で攻撃系とかやっちゃダメだからな」
「許可を貰うのに攻撃なんぞしたら、逆に許して貰えんだろう。ワシだって考えておる」
「そうか…………ちなみに観賞用の炎系統は絶対ダメだからな。ここにはお爺様居ないし」
「わ、分かっておったわ」
ダメなのか!?あれは攻撃でもないんじゃが、派手な上に綺麗なんじゃがな。みなに魅せるならあれしかないと思っておったが……
「では誰から見ましょうか?」
「私からでもいいかな?」
「私は構わないわ」
「順番なんて何でもいいです。後の方が様子を見ることも出来ますし」
ライドが真っ先に名乗り出て、スノウとファクターが了承しておる。他の者を参考にするのも良いじゃろう。
「構わぬ。頑張ってくるのじゃ!」
「俺も大丈夫ですよ」
「あわわ」
「良いと言っておる」
「ありがとう。行ってくるわ!」
副学園長と教える先生の前に立つライド。どこから持ってきたのか、いつの間に帯刀している。そしてその視線は真剣そのものじゃ……許可を貰う為の戦いが今ここに…………戦うのか?
ジュエル「注目の一戦じゃな」
ツール「あわわ」
ジュエル「相手は副校長だからのう。しかしライドの目は本気じゃ」
ツール「あわわ」
ジュエル「そうじゃな。ワシらは今は見守る事しか出来んな」
エルダーン「ジジ……今のツールと会話してたのかな?」
スノウ「私にはあわわとしか聞こえませんでした」
ファクター「それは私も一緒だ」
ツール「あわわ」
ジュエル「落ち着くのじゃ。ワシらの出番までまだ先じゃ」
三人「「「…………」」」




