第十三話 友となるにはまず名を知る
いい天気だね〜
外に出る予定はありませんけど(´∀`)
ブックマーク、評価、読んでくれた皆様。
ありがとうございます(*'ω'*)
教室の扉が開き、担任の先生が帰って来た。その後に同じ制服を着た人が入ってくる。
「おぉ!見るがいいエル!若者じゃぞ!」
「そんな叩かなくても見えてるよ。それにジジも若者だからな?」
そしてゾロゾロと入ってくるであろう、クラスメイト達に期待をするワシ。
「ん?他の生徒はまだ迷子かのう?」
「さぁ?」
先生の目の目の前に座る者。
窓際の一番前の日当たりの良い席に座る者。
入口に一番近い所に座る者。
一人だけキョロキョロしておるが……
「君も好きなところ座りなさい」
「はいです!?えっと……」
黒髪の少年が顔を上げ、席の空席を確認したのであろう。その際見ておったワシと目が合う。
「ひゅあ!?」
「ひあ?」
慌てた様子で一番後ろのワシらの反対側の席に座る。
「ワシ何かしたかのう?」
「ん〜ギラギラした目が怖かったんじゃないの?」
「ワシはそんなギラついてなど……」
「無意識なのか?前のめりなの知ってた?」
「おぉ!?」
気がつけば席に手をついて、今にでも飛び出しそうなくらい身を乗り出しておった。いつの間に……
「はーい。じゃ、全員揃ったから連絡事項を……」
「全員じゃと!?」
「ひぃ!?」
思わず身を乗り出し、大きな声を出してしまった。遠くの席にいる黒髪の少年が、ビビったような声を上げた。
「これで全員だよ〜」
「それは誠か!?学園長!」
「え?うん。そうだけど」
「ひー、ふー、みー……四人しか友達作れんのじゃ!」
「ジジ俺も居るぞ?」
「エルはもう友達じゃろう?違うのかのう?」
「いや、まぁ……友達だ」
「ならばあと四人じゃ!」
エルは何を言っておるのだ?少しだけびっくりしたじゃないか。
「なんなら僕も友達に入れてよ〜」
「いいのじゃ。よろしく頼むぞペンタゴン」
「ははは〜いきなりだな。よろしく頼むよ……えっと、そう言えば自己紹介まだだったね」
「あ。そう言えば」
「頼むよ教える先生」
「私はウォー・シエルです」
教える先生と聞こえたが聴き間違えかのう?
「おほん!改めまして……私はみなさんの担任テン・ウォー・シエルです。よろしく…………ちゃんと言えたかな」
「何か聞こえたのじゃ」
「それは聞こえなかった事にしてくれ」
顔を真っ赤にした先生とそれをあやす学園長。
「ほら自己紹介の続きだよ。誰から……」
「私が」
一番前の席に座っていたエメラルドの髪色に、天然パーマ。大きな丸眼鏡の男の子が立ち歩く。
「私はエアリアル侯爵家の長男。ファクター・ウール・エアリアル。よろしくお願いします」
「はーい、次は私〜ライデン公爵家の次女。ライド・インサート・ライデン!よろしくね!」
窓際に座る金髪で、セミロングの少女が立ち上がり自己紹介をする。上から見ていても分かるが、同じ歳なのに背が少し高いのう。
次はワシらが……
すると前に座る子が立ち上がる。
「シーソース公爵家が長女。私はスノウ・インペリアル・シーソースと申します。以後、お見知り置きを」
青いロングヘアー、青色の瞳がまっすぐと向く。背筋も真っ直ぐで綺麗なお辞儀。どこぞのお嬢様かのう、貴族らしいのう。
「礼儀正しいのう貴族みたいじゃ」
「みたいじゃなく貴族だよ。公爵家って言ってたじゃん」
「公爵とな……それってどんぐらいなのじゃ?」
「はえ?公爵と言えば一番上の位だぞ。知らないのか?」
「そうか」
そう言えばワシの時代のは無かったのう。公爵とか伯爵がどうのって、海外の話だろうとあまり覚えて無かったわい。
「ほら次。そこのじじい言葉のお嬢さんどうぞ」
「ワシの番じゃな。ワシの名はジュエル・ジョリー・イグニート!友達百人作るために来たのじゃ。よろしく頼もう」
「友達作るため……」
「ぷふっ」
「ふん!」
うまく挨拶できたかのう。反応が返ってくるって事は、きちんと話を聞いてくれていると言う事じゃな。いい傾向じゃ。
「俺はイグニート子爵。エルダーン・エンター・イグニート。よろしく」
「子爵……なんとワシの家系も貴族であったか!」
「おいジジ。それは本気で言ってるのか?」
「ワシは本気じゃ!西洋の知識はワシにはないのじゃ!」
「言ってる事は相変わらず分からんが、領主の娘としてそれはダメじゃないか?」
クラスメイトがワシを直視してくるのじゃが、別に誰も教えてこなかったのじゃから仕方がないであろう。
「そんな事より、少年の自己紹介がまだじゃ」
みんなの視線が一番後ろの席の黒髪の少年へと集まる。
「ひゃ!?」
「少年!名はなんと言うのじゃ?友となるにはまず名を知るところからじゃろう」
「そんな追い込むなよ」
「さぁ少年!」
恐る恐る立ち上がる少年。
「僕………………です」
「ん?エル聞こえたか?」
「ジジが煩くて聞こえないよ」
「黙るのじゃ!」
手で合図をするも声が聞こえて来ない。きっと声が小さい性分なんじゃろう。それであれば近くに行くまで……
「ぼ、ぼ、僕は……」
「ふむ。頑張るのじゃ。ワシがちゃんと聞いてるぞ」
「うひゃ!?」
「どうしたのじゃ?」
「ちちちち、近い!」
「名を聞くまでここにおるぞ」
声が聞こえる距離まで近づいていったら、結果は目の前に黒髪の少年の顔が見える。
「まつげ長いのう。前髪も隠してないで上げれば良いのに……」
「はわわわ……まつ毛が長い、目がキラキラ!?」
「顔立ちは母上に似ておるらしいぞ。それで名はなんと申す?」
「ツール……」
「ツール?」
「僕の名前は!ツール・チャーム・ランドー!」
高らかと自分の名を告げ、ツールはもの凄い勢いで離れていく。と言ってもツールの席は一番端にあるが故に、退路は始めから無いのである。
「よろしくなのじゃ!ワシは……」
「ジュエル様でしょう。さっき聞きました」
「ジジでよい。エルもそう呼んでおるのだ。ツールもその方が呼び易いじゃろうて」
名は聞いたがまだ距離があるのう。物理的な距離はほぼ0センチだがのう。
「じ……」
「じ?」
「ジュエル様」
「せめて様付けはやめようぞ。同級生じゃ無いか」
「ジュエル……さん」
ん〜まぁその内に慣れるじゃろう。ワシの友達百人計画は幕を開けるのであった。
エルダーン「ジジ攻めるよな。あんなにぐいぐい行ってると引かれるのに」
ジャムストーン「初めての学校で、はしゃいでいるのかと。かわいいではありませんか」
エルダーン「さっきから妙に静かだと思ったら……」
ジャムストーン「お嬢様の勇姿を脳内に焼き付けています。こんな子どもらしいお嬢様は早々見ることが出来ません!」
エルダーン「いつもよりテンションが高いなジャムさん。それに最近主人に似てきたよなぁ」




