第十二話 友達百人できるか……な?
二章スタートです。
やっと学園入学なのです(´∀`)
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ありがとうございます(*'ω'*)
ワシは七つの歳に学園への入学をした。今日から寮生活で父上も母上もいない環境での生活となる。
「ドキドキするのじゃ」
「お嬢様でも緊張なさるんですね」
「ジャムよ。ワシをなんだと思っておる」
「超人か天才か……」
「もうよい」
ワシはただ記憶を持っておるだけのしがない老人じゃ……今はオナゴであるが。
しかし周りを見ると同じ服を着た子供が多い。この領にこんなにも子がおるのは驚きじゃ。
「あまりキョロキョロされると、田舎者と思われますよ」
「む。失礼な……ってエルか」
「よおジジ。そっちは侍女連れて来たのか」
「エルは連れてこんのか?」
「男は基本ダメなんだよ」
「そうなのか。面倒なルールがあるのじゃな」
ワシの場合は有無も言わせぬ感じでジャムが着いて来たが、それはワシがオナゴだからなんじゃな。
♢
ワシらは人の流れに従い、広い講堂に集められた。生徒以外の侍女達は別室へと案内されていったので、ジャムとは入り口で別れておる。
「えー、あー……新入生のみな、よくぞ集まってくれた。ワシは学長のペンタゴン・ファスト・マーシャルアーツだ。これから長い時間を共に学び、未来の可能性を……」
さすが学長殿。話が長い!ワシらは学長の演説をじっと聞いていた。
―バターン!
途中誰かが倒れたようじゃが、それも風物詩の一つじゃろう。
―バターン!
二人目か……はて?室内であるこの講堂で、何が原因で倒れるのじゃろう?
「っく……これは中々に」
「どうかしたのかエル」
「ジジは感じないのか?この魔力……」
「ん〜?」
そう言われれば、なんかピリッとした感覚があるのう。実に微弱であるが故に、エルに言われるまで気がつかんかったわい。
「……以上!」
「ふぅ……やっと終わった」
「見事にみな倒れておるな。残ったのはワシとエルに……」
エルが周りを見渡す。
「今年は六人もおるのか……しかもワシの言霊を最後まで聞きおったわい」
すまぬ。話が長かったので、ほぼ聞き流しておった。
「そこの少年。名を聞こうかのう」
「……エルダーン・エンター・イグニートです」
「ほぉイグニートのエンター家の坊ちゃんか。そちらのお嬢さんは聞いてもいいかのう?」
「ワシはジュエル……
―バリィン!
舞台袖から何かが割れる音がすると、何かが飛び出して来た。
「ペンタゴォォォン!」
「ワシの結界を破ったか。なんとも滅茶苦茶な」
―バリバリバリ!
「ワシの可愛い孫に向かって、魔力をぶつけるとは許せん!ふぬ!」
―バリィン!
「おっと」
「じいじ止めるのじゃ!」
学園長に触れる寸前でその拳が止まる。
「ほっほ。ありがとうお嬢さん」
「身内が無礼をしたのう。すまぬ」
スカートの裾を摘み、頭を下げる。
「言葉遣いはお前に似てるけど、しっかりした孫だね」
「ふん!ジュエルに感謝しろ」
「怖いな〜せっかくの入学式なのに。紹介は後ほどにして、教室に向かおうか。それじゃ……《エンタイアヒール》」
学園長が何かを唱えると、会場全体がキラキラに包まれる。風に乗ったそれは会場を優しく撫でるように流れる。
「なんじゃこれは?」
「すげぇ……全体回復魔法だ」
「ふむ。このキラキラは水系統じゃな。風系統で運ぶと言ったところかのう」
「!?」
倒れておった生徒達が少しずつ立ち上がる。
「おいバーン。あの子初見でワシの魔法を見破ったよ?」
「当たり前じゃ!ワシの孫なんじゃからな!」
マイクを切られていないその話は、会場全体を騒がせる。
「あれは英雄ジルコニア様!?孫って……」
「おい。あれだ。あの桃色の髪……」
「すると孫って事は領主様の娘?」
そこら彼処からワシの話が始まる。じいじが英雄って有名なんじゃな〜
「いきなり大注目だな」
「全くじいじには困ったもんじゃ」
そんな中で鋭い視線がいくつか感じるんじゃが、ワシは何もしておらんぞ?
♢
講堂から移動して、教室に向かう事になる。途中ジャムと合流し、教室まで連れて行ってもらう。
「学校か……楽しみじゃのう」
「ジジは浮かれすぎじゃないか?何がそんなに嬉しいんだ?」
「分かっておらんな〜エル。子供の頃の友は生涯において、最も重要だと言うことを」
「また難しい話を……」
「簡単に言えばじゃ、友達をたくさん作ることなのじゃ!」
「子供か!って子供か」
エルと談笑しつつ、教室への道のりを歩く。して、ここはどこかのう?ジャムについて来たので、どこを歩いておるか全く分からん。
「お嬢様。こちらですよ」
「おぉ、すまんな」
教室の前に立つ。
「すぅ……はぁ……」
緊張するのう……始まりが大事と分かっておる。だからこそ、何度経験してもドキドキが止まらん。
「失礼するのじゃ!」
「失礼します」
二人で教室に入る。
「広い教室じゃな。して、誰もおらんが?」
「まだ来てないだけじゃないか?とりあえず座ろう」
エルが一番後ろの席の窓際に座る。ワシはその隣に座る。
「ジャムも座らんのか?」
「私はメイドですので」
そう言うとジャムは、ワシの後ろに立つ。
「「「……」」」
皆でじっと教室の扉を見ておるが、誰も入ってこないのじゃが?
―カツカツ……
「足音じゃ!誰か来るのじゃ!」
「足音?聞こえないけど」
「来るのじゃ!一人……二人じゃな」
ドキドキしながら扉が開くのを待つ。
「あら?誰も……って二人だけ?」
「ん?もう着いててもいいはずなんだけどなー」
若いオナゴと隣におる学園長が不思議そうに教室を見る。
「おかしいなー地図は本人達に渡したはずだけど」
「迷っているのかしら?」
地図は貰っておらんが、ワシらはジャムに案内されてここまで来た。疑問に思っておると、後ろにいたジャムが紙切れを机に置かれた。
「なんじゃこの落書きは?」
「地図です……おそらく」
「これが地図じゃと?こんなの分かる人間がおるのか……ってジャムは解読したのか」
「バーン様が書くものと似ていますので」
紙切れだと思ったそれは、ここへの道筋を書いた地図であった。子供の落書きかと誤って捨てるレベルじゃ。
「ジュエルさん。地図を拝見してもいいですか?」
「かまわぬ」
紙切れを若いオナゴに渡す。
「学園長?この落書きはなんです?」
「落書きって酷いな〜地図だよ。ここまでの」
「……探して来ます。学園長は決してこの部屋から出ないで、待っていて下さい」
「は〜い」
―バタン
迎えに行くと行ってオナゴは教室を出た。
「「「……」」」
「ははは。彼女はせっかちなんだから」
ケラケラ笑う学園長。
「あ、さっきのは君達の担任ね。挨拶も忘れて出て行くなんて慌てん坊さんだよね。でも実力は確かだから」
「なんとあの若いオナゴが担任であったか!」
「若いオナゴって……君の方が若いよね?」
「ジジの言葉は気にしないで下さい学園長」
「アイツの影響受けまくりだね。もっと年相応の言葉にしないと〜」
学園長に言われとーない。じいじと変わらぬ見た目で、若者っぽい言葉が妙に気なるのはワシだけかのう?
「あ、なんか失礼な事考えたでしょう?」
「なんの事かのう?」
「ん〜まぁいいけど。しかし遅いな〜早く来ないかな〜」
学園長は椅子に座り、足をぷらぷらと暇アピールをしてくる。
ワシも暇じゃ……気づけばワシも足をぷらぷらしておった。
ジュエル「暇じゃの〜」
ペンタゴン「暇だな〜」
エルダーン「そう言えば、ジャムさんはあれ見てよく分かったね」
ジャムストーン「自分の足で探したまでですよ。あんな落が……地図を頼ってはいけません」
ペンタゴン「ひどっ!?」
ジュエル「あんな落書きであれば、ワシの方がうまく書けるぞ」
ジャムストーン「お嬢様もあまり絵心はありませんよ」
ジュエル「酷いのじゃ!?」




