第十一話 あっという間の成長
十一話で一章終わります。
二章もいつも通り3日毎の12時にアップしていきます。
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エルダーンがワシの家に来るようになって1年が経った。
「すぅ……《ファイヤーボール》」
「甘いのじゃ!《アクアショット》」
―ジュ!パン!
飛んできたファイヤーボールを水の球で打ち消す。
「見てから撃ち落とすとか」
「エルは素直すぎるのじゃ」
「ジジが変なんだって」
「お二人とも〜その辺で終わりにしましょう」
ジャムに止められ、ワシらはいつもの稽古を終える。ここ最近は、エルが家から一人で走って来る事が出来る様になった。
そうそう、エルダーンと言うのが長いからエルと呼ぶようにしたのじゃが。そしたらワシもジジとあだ名が出来た。ワシらはそれくらい仲ようなったと言う事じゃな。
「毎日毎日よくやりますね」
「日課のようなものじゃ。魔法はやはり切磋琢磨する方が伸びるのじゃ」
「せ?なんだまた難しい言葉を……」
「切磋琢磨で御座いますエル様。お互いに競い高めていくと言う意味です」
「ならジジもそう言えば良いのに」
「いいかエル。知恵はあって困るものではない。むしろ強くなりたいのであれば学ぶのじゃ」
ワシ良い事言うな。エルは素直だからついつい教えてあげたくなるのう。
「さぁじいじの時間じゃ。行くぞい」
「あぁ僕苦手なんだよな」
「今日は何を教えてくれるかのう」
「ジジはどうしてそんなに楽しそうなんだよ……」
魔法の自主訓練を終えれば、じいじの魔法学の時間。
♢
「ジジは良いんじゃが。エルは毎日よぉ来るのう」
「ここまで走って来るのも修行ですので」
「そんな近くもないはずだがのう」
「ジジに比べれば大した距離ではないです」
「そこと比べるのはのう……ジジは最近どこ走っておるのじゃ?」
最近は街を走るのも飽きたからのう。しかし言うと怒られそうなんじゃが……
「その辺じゃ。それは良いではないか」
「ふむ…………領地の外へは行くんでないぞ」
「も、勿論じゃ!」
じいじとジャムの目が……
「さ、さぁ勉強を始めるのじゃ!」
「まぁ良い」
「バーン様。切磋琢磨と同じような言葉ってあるのですか?」
「随分難しい事を知っておるのだな」
「ジジがさっき言ってました」
「相変わらずじゃのう」
そしてワシらはいつものように学ぶのである。
♢
―コンコン
「バーン様、お嬢様、エルダーン様。お食事の用意が出来ました」
「はて。もうそんな時間かのう」
じいじの魔法学が終わり、食事の時間じゃ。一日の始まりは食事である。
「ふんふん」
「ジジは食事の時間は子供っぽいよね」
「ふふ。可愛いですよね」
「ワシはいつも通りじゃ」
食堂に並ぶのは色とりどりの果実。パンに野菜とバランスのいい食卓である。昼から肉が出てきたりはせんが、ワシはこの食事が気にいっておる。
「うまーなのじゃ」
母上と父上がニコニコとワシを見てくる。まぁいつも通りだから放っておくがのう。
「お嬢様。口元失礼致します」
「すまんのじゃ」
「……ほんと子供だよな」
「エルに言われとーない」
「同じ歳なんだけどね。ジジは普段と違いすぎるよ」
そんないつも通りの食事が終われば、自由時間である。
「それじゃまたな」
「さらばじゃ」
エルは家に帰る。今日は習い事があるらしい。
「ジュエルも何か習うかい?」
「師であれば間に合っておる」
じいじには魔法学を習っておる。父上は剣術で、母上は植物。魔法はジャムを含めれば全属性を網羅しておる。
「それ以外の事だよ。最近人気なのは楽器や踊りなんかも流行っているようだよ?」
「流行は興味ないのじゃ。今やっておる事で手一杯じゃ」
「そうか。ジュエルがやりたい事を応援する。何かあれば言いなさい」
「ありがとうなのじゃ父上!」
ニコニコ顔の父上。子供には甘々なである。
♢
そんないつもの日々を過ごしておる。しかしいつものようにはいかなくなる。
「お嬢様〜お嬢様〜?」
「呼んだかのう?」
「また木の上に……落ちたら危ないですよ」
「心配要らぬ……っほ!」
―びゅん!
木の上から飛び、地面に降りる。
「今日も絶好調じゃ」
「今のは風ですか?」
「うむ。地面から空に吹くように調整しておる。勢いを消し、衝撃を無くしておるのじゃ」
「魔法の事になるとよく喋りますね」
「好きであるからな!して、ワシに何か用か?」
「あ、そうでした。旦那様がお呼びです」
「父上が?なんじゃろうな」
ジャムと共に父上の部屋に行く。
―コンコン
「ジュエルじゃ」
「入りなさい」
扉を開けると母上もいた。なんじゃ?いつもと少し違うのじゃ。
「ジュエル……学園に行く気はあるか?」
「学園?随分と急なのじゃな」
「いや……言ってなかっただけで」
「前から話はあったのよ」
父上と母上が少し暗い。
「父上と母上が嫌なのであれば、ワシはどこへもいかんぞ」
「「!!」」
「ですから、お嬢様はそう仰ると言ったではありませんか」
「しかしジャムよ!学園では魔法を専門に学ぶ事が出来るのだぞ?」
「そうであるか」
「お友達もたくさん出来るのよ?」
「友達……」
そう言えば楽しい事が多過ぎて忘れておったが、友を作る事も目標の一つにあったのう。孤独は寂しいからのう。
しかし家族を悲しませるのであれば、それはやってはいけない事じゃ。
「しかし、なぜ今になって学園なのじゃ?」
「四歳から学園からの誘いはあったのだが、さすがに七歳の学園入学は決まりがあってだな……」
ふむ。幼稚園的な何かは放っておいたと。して、七歳と言う事は小学校であろう。ワシの時代でも義務と強制しておったな。はて?それであれば行くか聞くのはおかしいのではないのか?
「学園は強制ではありません。それぞれの教育方針もありますし、お嬢様みたく家庭で学ぶ人もいらっしゃるので」
「そうなのか。そう言えばジャムは行っておらんな」
「メイドが行く事はありませんよ。行くのは貴族であったり、学費を払う事が出来る平民の方々です」
ワシの疑問にさくっと答えるジャム。相変わらず出来るのである。
「父上と母上が反対の理由はなんなのじゃ?」
「反対では無いのだが……」
「理由と言われると……」
―ガチャン!
「入るぞい!」
「親父!?」
「学園の話をまだしておらんかったか。幼少期は良いが、中等学園は必要だと言ったであろう」
「しかし……」
「しかしもあるか!」
「だって……」
「だってもなしじゃ!」
いつもより厳しいじいじ。いったい二人の理由は……
「だって、寮生活なんだ!ジュエルの顔をいつも見れなくなるではないか!」
「朝一緒に花壇のお世話も出来なく……寂しいわ!」
「…………」
「お二人とも子離れが出来ないのです」
「「ジュエル〜」」
なんとも……一生帰ってこない訳ではなかろう。
「一生帰ってこん訳でもない。分かるじゃろう?」
「そうよジョリー。お爺様もジュエルに会えなくなるのを我慢しているのよ……」
「ワシは春から学園の講師をやるぞい」
じいじの言葉に父上と母上が固まる。
「……今なんと?」
「実はずっと誘われておったのじゃ。しかしジュエルと会う時間が減るから断っていたのだ」
「ジョリー……私、教師になるわ!」
「ずるいぞ!私も教師になるのだ!」
「なれる訳なかろう!領主の仕事はどうするのだ!」
「ぐぅ!?」
父上が悔しそうな顔をする。
「ミラージュ様も教師にはなれませんよ」
「なんでぇ!?」
「資格もそうですが、経験がないと中等学園の教師は出来ません」
「そんな……」
落ち込む二人。
「ジュエルよ。来年から学園に行くのじゃぞ。準備はじいじに任せよ」
「よく分からんが学園か……友達出来るかのう?」
「うむ。ワシに似てジュエルは素直な子じゃからな。心配はいらんよ」
学園……ワシの孤独を回避する為の下準備をせねば。父上と母上には申し訳ないが、今から楽しみである。
バーン「友達出来るかとか、可愛らしいのう」
ジョリー「ここは私が学園に……」
ジャムストーン「旦那様も学園には入れませんよ」
ジョリー「領主にできない事はない!」
ミラージュ「それね!さすがはジョリー!」
バーン「ダメに決まっているであろう」
ジュエル「父上、母上。職権濫用はいかんのじゃ」
ジョリー「しょ、職権?」
ミラージュ「また難しい言葉を……」
バーン「娘の方がしっかりしておるのう」
 




