第十話 来る日も来る日も?
8月最後の投稿です。
次回は9月3日 12時予定。
ブックマーク、評価、読んでくれた皆様。
ありがとうございます(*'ω'*)
大人達は子供いる所で何やら騒いでおる。そんな大人達を放っておき、ワシはエルダーンの側におる。
勝負とは言え使う事ですら凄い魔法を、容易く使って見せた事で凹んでおると思ったからじゃ。
ワシは気遣い出来るのじゃ!
「エルダーンよ。落ち込むでないぞ」
「別に落ち込んでいません」
「ほう。ならば良い」
ふむ。嫉妬や妬みがあっても良かったが、この少年にはそれがないようじゃな。暗い声でもなく、この状況を受け入れとる……若いのに苦労しておるのだな。
「ジュエル様にお聞きしたいのですが」
「仰々しいのう。歳も同じで、いとこであろう?子供らしく喋れば良い」
「子供らしく……ねぇ」
「ぶふっ」
ジャムが横で吹き出した。
言いたい事は分かるぞ。ワシの言葉についてであろう?こればかりは長年染み付いたものじゃ、簡単には治せん!と言うかワシはいいのじゃ
「おほん。それで何が聞きたいのじゃ?」
「……ジュエルは炎の魔法使える?」
「出来るぞい」
「見せて欲しいんだけど」
「ん?そりゃ構わんが……」
ワシは庭の周りを見る。特に燃え広がりそうなものはない。ここは母上の花壇と真逆の場所。ジャムに聞いたが、来客の馬車などを置くための言わば駐車場である。
「前に撃つのはいかんだろう。すると……」
「お嬢様。空に打ち上げてみては?」
「空のう……まぁそれであれば問題なかろう」
可愛いいいとこ殿の頼みじゃ。ここは派手に綺麗な魔法を見せてやろうぞ。空に打ち上げる炎……そうじゃ!
「見ておれエルダーン。これがワシの炎じゃ!」
魔法とはイメージ。
空はまだ明るいが、打ち上げる炎と言えばこれしかなかろう!
「…………《ウィーピングウィロー》」
―ひゅー
思い切り振りかぶり空へと投げた。しかしワシはここでとんでもない誤算をした。
「まずいのう……」
「何が?凄いファイヤーボールじゃないか」
「いや、ワシが使ったのはファイヤーボールではない。しだれ柳と言う花火なのじゃが……」
「花火ってなんですか?」
「簡単に言えば、火球を中に閉じ込め炸裂した後に炎が降り注ぐのじゃ。本来であれば綺麗なものなのじゃが……高さが足りん!」
「「え?」」
ついついカッコいいところを見せようと、おじさん力が……今はオナゴか。そんな事を言っている場合じゃないが、やってしまったものは仕方がないであろう。
「バーン様!上!」
「分かっておる。強大な魔力を感じたからのう」
するとじいじが背中に背負った大剣を持つ。
「久しぶりに滾るわい……」
「なんだあの魔法?ただのファイヤーボールではないか」
「馬鹿かエンター!俺のジュエルが使った魔法だぞ!何が起きてもいいようにしておけ!ミラージュは……」
―ザブン!ザザザ……
「消火は任せて」
「頼もしい!」
「な!?」
じいじがワシの元に来た。
「どんな魔法じゃ?」
「あれが炸裂すると雨みたいになる」
「ほほ。また面白い魔法を……」
―パチ
じいじが雷の魔法を使い、身体の強化をしているのが分かる。少し離れたところに父上が頭上に手を差し出し、母上が水の球を何個も作っておる。エルダーンの父上はオロオロと慌てた様子。
「もう割れるのじゃ!」
ワシの声が合図となったか、空中にあった球が割れた。
―バァーン!シャァ……
「綺麗……」
隣におったジャムが声を聞こえた。そうじゃろうこれぞ花火と言うもんじゃ!
「こっちに降ってくる!」
「三人とも。ワシから離れんようにな」
「はいなのじゃ!」
「勿論でございます」
「なんだこれー!」
エルダーンは空を見上げて、見た事もない光景にテンションが上がっているようじゃ。張り切った甲斐があるわい。
「ジュエルよ。じいじの勇姿よく見ておくのじゃぞ!《疾風炎帝》」
じいじがブレる。剣が燃える。そして降ってくるしだれ柳を……
―シュバ!シュババ!シュバババ!
「おぉ!」
「がははは!」
「相変わらず親父は滅茶苦茶だな」
「元領主で元英雄ですからね」
全てを斬り伏せワシの魔法をかき消……
―ズゴーン!
「あ。」
「《アクアショット》」
斬り伏せたはずのワシの魔法が消える事なく、飛んでった。運悪く家に当たった。火事になる前に母上が魔法で消火してくれた。
「ワシの魔法切られたのじゃ……」
「全部斬ったはずだが、一つ斬れなかった。俺とした事が……」
「ふ〜た〜り〜と〜も〜」
「「ひゃい!」」
ゆらりと母上が近づいて来る。そしてワシとじいじの肩に手が乗る。
「「すまぬのじゃ……」」
「はぁ分かればいいのよ。今日は片付けがありますので、私はこれで失礼します」
「あ、はい。お疲れ様ですミラージュさん」
「俺も屋敷に戻る。エンターはどうする?」
「俺は……」
エルダーンの父上がこちらを見る。
「私は……」
「エルダーンよ。時はまだまだあるのじゃ」
「帰ります」
「分かった。それじゃまたな兄貴」
こうしてエルダーン親子は帰って行った。ワシはどうするかのう。
「おっとと」
「お嬢様!」
「すまぬジャム。ちょっと足元がふらついたのじゃ」
「お爺様。ジュエルに魔法学を教えて下さいね。四歳の子が使う魔法がどうなのかを」
「うむ。任せよ」
ワシはジャムに抱えられ部屋へと戻る。そしてワシはそのまま眠りについた。
翌日、ワシはいつもより遅い朝を迎える。
「はようなのじゃジャム」
「もうお昼ですよ」
「なんと!?二食も抜いたのか!」
「起きてすぐにそれですか?今すぐ準備致しますね」
ワシが遅めの夕食?朝食?今は昼食か。すると五人分の食事が用意されていた。
「ワシと父上に母上。じいじと……ジャムの分かのう?」
「私はご一緒には食べません。これは……」
―ガチャ
食堂の扉が開き見知った顔が入って来る。
「よう。ジュエル」
「エルダーン?」
昨日の今日じゃぞ?
「時間はない!俺は強くなりたいんだ!」
「ほぉ……」
―ぐぅ〜
「そんな事よりご飯なのじゃ。これは時間との勝負じゃ」
この状況が続くなんて、この時のワシは知らなかったのじゃ。
エルダーン「俺は魔法を教えて貰いに来たんだけど」
バーン「魔法学は魔法じゃ」
ジュエル「じいじの話はどんな魔導書よりも為になるのだぞ!」
バーン「そんな褒めるでない。照れるではないか」
エルダーン「でもバーン様はガチガチのファイターじゃ?」
ジュエル「それがどうかしたのか?魔法を使うから動かなければ的にしかならんぞ?」
エルダーン「ジュエルは一体何を目指してるんだよ」




