第一話 まずは始まりを語らねば……
はじめましての方も、他作品読んでくれた方も、楽しんで頂けたら幸いです(*'ω'*)
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ワシには人には言えない秘密がある。
別に言ってもいいのだが、誰も信じないであろう。そこまで勿体つけるなって?でもあんたも信じないだろう?まぁいい、教えてやろう。
「前世の記憶があるんじゃよ」
今、なんだそんな事かって思ったか?だが、これは失敗すると大変な事になるんじゃよ。
考えてみ?産まれて間もなく喋り始めたら?幼児と言う無邪気な世代でも、他者より知識があったら?それが同学年ではない、先生よりもだ。
「物知りだね〜」
始めの一回はいいだろう。それが何度もあったらどうなる?結果はこうじゃ。
「あの子は変わってる」
「どこかおかしいんじゃ?」
「……怖い」
これはこれは……人は自分の理解出来ない存在を、崇めたり貶めたりするのは紙一重。大方、変な目で見られる。現実なんてそんなもんじゃ。
なんでこんな話をしているかって?それはワシが体験した失敗を忘れぬ為、自分で自分に言い聞かせているだけじゃ。
誰かに言いたいわけじゃない。話す相手がおらんから、自分に話しているだけじゃて……こほん。
まずは始まりを語る必要があるな。
1度目の人生では…………
では……?
……神道 純一郎じゃ!いかんな記憶があるが、思い出すのに時間がかかるのう。
ワシは偉人と言うわけではない。幼少期は大人しい性格で、虫の嫌いな少年であった。
小学生に上がると友も増え、好きなオナゴをいじめたりもしておった。
中学では悪さもしたのう。毎日学校に行くが、よぉ教師に呼ばれとった。
高校にも無事入学でき、ダブルことなく卒業。冬休みの補習を行かず、条件付き進級も立派な進級じゃろうて……
そして一般企業の社員で、ただガムシャラに働き、家族を得て極々平凡な人生。
早くに結婚し、子供を授かった。十分に幸せで、これと言って不満もない。
後悔がないかと言われれば嘘になるがの。だけど人はその過去があり、未来の為に生きる。
良いこと言うなーワシ。
ーー始まりであるが故に記憶はない。
そんなワシが生涯を終え、ただ一つの輪廻に戻るべく真っ白な空間に行く。
「お疲れ様でした」
「こりゃ、ご丁寧にどうも」
何もない空間から誰かに声をかけられる。ただそれに答えただけである。
「…………」
「どうかされましたかな?」
「すまない。まさか返答されるとは思いもしなかったのだ」
「お疲れ様と声をかけられたのなら、返答するのは至極真っ当かと?」
「はは。そうだな。貴方は面白い魂の様だ」
自分の体を確認する事ができない。それは体が動かないからか、見るための目がないからか……
「認識する術が無いのですな」
「……ほう。興味深い。貴方はこの状況をどうお考えで?」
「白い空間にて輪廻に帰る。でしょうか」
「素晴らしい。さすがは神の名を持つ一族」
はて?神の名とは……ワシの名前は純一郎。あ、神道の方ですな。
「それで神様……で宜しいでしょうか?」
「好きに呼ぶとよい」
「では神様。ワシはこれから、どうすればよいのですかな?」
「こうして話していたいが、役目を蔑ろにするわけにはいかない。輪廻の渦に戻すだけだ」
「そうですか。ではお役目を邪魔せぬ為に、ジジイは退散しようかのう」
「貴方の様な方が多ければ、私の役目も少し楽になるのですが……おっと、これは聞かなかった事にしてくれるかな?」
神様も色々と大変なんじゃな。
「小言はストレス発散に必要な事ですぞ。またこの様に会話が出来た時は、いつでも話を聞きますぞ」
「っふ。そうか。次は覚えて無いだろう…………が出会いを楽しみにしていよう」
そんな言葉を最後にワシの意識は遠のく……
白い空間から……
光が差し込む。眩く目を開ける事が出来ない。はて?目を認識できるのう。体という感覚がある。これが輪廻の始まりか。
……目を開ければ自分を覗き込む存在。何か言っているのだろうが、誰かの声がする。そして叩かれる。
―パシ!
何をする!ワシを引っ叩くなんぞ……
―パシ!
「おぎゃー!」
む?声が上手く出せんな。
「おぎゃー!おぎゃー!」
やはり喋れぬ。これはどういう状況じゃ?それを説明するかの様に説明をしてくれる人がいた。
「あらあら。もう泣き止んじゃったの?もっと声を聞きたかったのに」
「ふふ。君に似て強い子なのだろう……うぅ」
「それを言うなら、あなただってあまり泣かないわよね?今は違うけど」
誰かの腕の中にいるワシ。それを見て涙を流す者。
「無事に産まれてくれてありがとう」
「おー!」
「ふふ。パパだって分かってるのかしら?今返事をしたわよ」
必死に伸ばした手を取り、またも泣き始める。父親とは涙脆い者だな……ワシもそうじゃったがな。
じわりと共感する0歳児のワシ。次の言葉に耳を疑う事になる。
「純粋な心を持つ子に育ってくれよ……純二郎」
純一郎の次は純二郎じゃと?流行っておるのか?
純一郎「あの頃は若かった……ガムシャラに生きたもんよ」
神様「あの御仁は面白い人だったな……また会いたいものだ」