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紅月の秘密

◆ ◆ ◆

あれは…そう、離れ島に隔離された時だ。 声がしたんだ、空から……。 私は近くにいるのに遠いその存在の居場所を探った。 どこにも居ないけど確かに存在するソレは、目を瞑るよう促した。 言われた通り目を瞑るそこは、無明の闇。 暗いのは苦手だ。すごく、寒い気分になる。 一刻も早く目を開けたかったが、聞こえてくる声がなんなのか知りたいと言うのもまた

事実。恐怖と不安を胸に抱きながら、私は必死に辺りをくまなく探した。 しばらくしてから、暗闇の中に仄かに光る蒼い光が見えた。そして光は姿を変え、淡く蒼い光を纏いながら、紅月と全く同じ姿となって現れた……。 「やっと会えたね」 もう一人私の声は自分と全く同じなのに、穏やかで優しい声音。その声を聞いて酷く心が安らいだ。だが目を瞑って私が居るなんておかしい。 「どうしてこんな所で見えるの?貴方は誰で何処にいるの?」 「僕は水月で君の中にいる。ずっと待ってた、君が気付くことを」 その表情はやや憂いており、なんとも形容しがたいものであった。 「僕が生まれたのは、君が物心ついた時から。万物の全てにおいて、必要となるのはバランスだ。人体実験の時に君が火を操る力……パイロキネシスになったのは、予めに水を操るアクアキネシスの資格があったからだ……。ここまでは理解出来たかい?」 紅月はコクンと頷くと、いい子だね。と子供扱いされた。けれど紅月は、それを嫌だとは思わなかった。 そして理解し難いのは…その先からだった。 「さっきも言ったけど世界は全て均衡を保つ為、陰と陽に分けられる。それは人間とて例外ではないんだ。怒りや憎しみ、妬み等は陰に。優しさや安らぎは全て陽に分類される……。要は対になっているんだ、この世の万物全てが。更に言うなれば、アクアキネシスの資格とは僕そのものなんだよ。女である君の中で、男の人格として存在することが出来る」

「それで貴方は私が生まれた時から私の中にいた。それならば……何故今になって貴方はこうして教えてくれるの?」 「使うべき時が来たんだ」 その顔は少し悲しみを帯びていた。声も先程よりか細くなっている。 水月は伏せていた眼を紅月に見据え再び静かに話しだした。 「僕と君も対となってる。力も人格も。本来、人の魂魄は一人に付き一つだ。だがこうして僕らは姿が見え、また声も聞ける。あってはならない事だ。だが君は、紅月は宿主という器に僕という魂魄が生まれた。だからその事実を忘れず、受け止めて」 水月が殺害されたのは、そのしばらく後になってから―。 均衡を保つ為、陰と陽に分裂し紅月を助けた。 もし死んだのが紅月だったのならば、水月もろとも道連れだっただろう。 何故なら、私は器だから―。 一人増えただけ……。そう思いながら紅月は二人を受け入れた。 二人もまた水月から生まれた魂魄だと言う事を、本能で自覚している。

こうしてあってはならない事が再び訪れていた。

◆ ◆ ◆

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