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読み書きの先生は、なんとリーフォンだった。同じ場所で生活をしているのだし、空き時間で勉強が出来るからという理由で。

ラシル様に、でしたらピオナさんでも、と提案したが。どうやら、リーフォンからやらせて欲しいと言ってきたようだ。

「リーフォンが言っていたよ。シオと話していると楽しいと。だから、シオの為になにかしたいんだよ。ね?」

優しく微笑むラシル様に、なにも言えなくなり、リーフォンの申し出を、ありがたく受けることになった。











そんなある日、後宮で掃除をしていたら、知らない女の人が、取り巻き連れて歩いてきた。ここは、第1皇子の後宮。知らない人は居ないし、不審者は警備兵に通報する事るになっている。

なので、私は慌てて警備兵の所へ向かった。

「あ!ピオナさん!!」

「シオ、はしたないから走らない!」

「も、申し訳ありません!って、そうじゃなくて、不審者です!!」

途中で見かけたピオナさんにまず伝えたら、ピオナさんは険しい表情で何処にいるかと聞いてきた。あっちの廊下に、と告げたら、嫌な顔をしている。

「ピオナさん?」

「シオ、急いでリーフォン様を連れて、ラシル様の執務室へ行って」

え?どうして?と聞きたかったが、ピオナさんの鬼気迫る表情に、頷いて走り出した。

普段は走るなって怒るピオナそんも止めない。だから、全速力で走って、リーフォンの部屋の前に着いた。

あの不審者はまだ来ていないみたいだ。

「リーフォン!」

「シオ?どうしたの??」

「なにも聞かないで、急いで一緒に来て!」

私の言葉に、リーフォンは何かを察したのか、立ち上がると私の手を取った。

リーフォンと手をつないだまま、廊下を走って、ラシル様の執務室に駆け込んだ。

ラシル様はご公務で部屋には居ない。

でも、この部屋はリーフォンか第1皇子の後宮に勤める者数名しか、入る事は許されてない。そういう魔法らしい。ちなみに私も、フリーパスをもらっている。

「な、なんか、ピオナさんが……っ」

「はぁ、はぁ。久しぶりに走ったわ。ピオナが此処にって言ったのなら、多分あの人がいらしたのね」

あの人?

首をかしげたら、リーフォンは困ったような顔で笑った。

「第2皇子様の後宮で1番の寵愛を受けてる方でね、私の事、嫌いみたいなの」

リーフォンは、ポツポツと話してくれた。

リーフォンより先に第2皇子に嫁いでいた、側室の女性で名前はドラナ。彼女は、ペムトボル王国の大臣の娘で、小国の姫であるリーフォンより、権力とか地位とかを持っていた。仲良くしたいと思ったのに、彼女はリーフォンに悪質な嫌がらせをしてきたらしい。

それ以降、第2皇子の後宮にいる側室の方々とそのお付きの侍女達は、第1皇子の後宮には立ち入り禁止になっている。なのに、たまにああして、警備兵をお金とかで懐柔して入ってきては、嫌がらせをしにくるらしい。

だから、ラシル様の執務室に逃げ込む事になっているようだ。

「なにそれ。信じらんない!」

「ラシル様がいろいろ、手を回してはくれるのだけれど、彼女はそれを掻い潜って、来ちゃうの」

少し困った顔でリーフォンが言う。優しいリーフォンだから、きっととっても傷ついているんだろう。私に、何か出来ればいいのに。

「そうだわ!せっかく暫くは出られないのだし、ここで授業にしましょ!」

授業?と首をかしげたら、読み書きの授業よ!とリーフォンは頬を膨らませる。

ぶりっ子と私がいた世界では、とられるであろう行動や仕草も、リーフォンなら許せる。それくらい、リーフォンは可愛い。

「よろしくお願いします、リーフォン先生」

よろしい!と言って、ラシル様の執務室のソファに促された。リーフォンは手際よく紙とペンを用意して、私の前のテーブルに置く。黒板的な物は無いけど、どうするんだろう?

そう思っていたら、リーフォンはポケットから何かを出した。

「リーフォン先生〜!それはなんですか?」

「あ、そうだったわね。シオは魔法が使えないのよね」

そう。私は魔法なんか使えない。

「文字の勉強の前に、この世界の勉強にしましょうか?」

「是非!!」

ピオナさんや、ラシル様とか王様から説明されたのは、だいぶザックリとしたものだったから、ありがたい。

「ふふふ。じゃあ、まず。コレは魔法を使う時に使用する杖です」

「そんなちっちゃいの??」

私の中の魔法使いは、自分の身長より大きな杖を振ったり、自分の片腕くらいの長さの杖を扱ったりしていた。

リーフォンの持っているのは、携帯のストラップに付いててもおかしくないくらい小さい物だ。

「これは、可変式の杖よ。警備兵とか常に魔法を使えるようにしている人達以外は、皆んなこの、可変式の杖を持っているの」

リーフォンはそう言うと、その小さな杖をギュッと握った。

その瞬間、さっきまで手のひらに収まっていた小さな杖は、初めて聞く音と共に大きな杖になっていた。

「おおお!!!」

「シオったら、驚きすぎよ」

クスクスと笑うリーフォンは、その杖で空中に四角を描いた。その四角は、光の線になって空中に存在している。不思議。

「この世界では、魔法が使えるのが当たり前なのは知っているわよね?」

頷いた。

「その昔、この世界の国々は争いが絶えなかった。長く続く争いの中、悪い魔法使いが魔王を召喚してしまった。その魔王は世界を破壊するように、各地で暴れまわった。言葉なんか通じない魔王を止める者は居なかった。けれど、このペムトボル王国を王子が魔王を倒したのだった。それ以来、この英雄の国を中心として、平和な世界になった」

「お伽話みたいだね」

「ふふふ。そうね。私もお祖母様からそう伝え聞いているの。お伽話のように語り継がれているけれど、実際に魔王が召喚された証拠もあるし、魔王の闇の魔力から産み出された魔物とかが、存在しているわ」

だから、討伐隊が組まれて、討伐に行っているのか。

魔物は自然に繁殖しているから、減らないらしい。それは、討伐隊の事をピオナさんに聞いた時に、教えてもらった。

「で、ペムトボル王国が、此処よ」

さっきの四角の中に地図が浮かび上がると、中心に赤い光が点滅する。ここが現在地って事か。

「で、私の国は此処ね!」

赤い点滅からだいぶ離れた、大陸の端っこ。海に面した場所に青い点滅が。

「リーフォン、海のある国生まれなんだ」

「そうよ!ただ、海の底までは結界を張れないから、波打ち際から海の魔物が入り込んだりして、大変だったけど」

苦笑いで言う。

リーフォンの国は小さな国だって言っていたから、兵士の数も少ないだろう。大変だったのかな?

「それじゃあ次は、魔力の量ね」

「魔力の量??」

首を傾げたら、リーフォンは大きく頷いた。

「魔力は生まれ持った許容量っていうものがあるの。それは、髪の色を見れば一目瞭然なのよ!」

髪の色?

リーフォンはさっきの地図を消して、色の付いた球体を出現させた。

「魔力量の多い順に並べるわね」

杖を動かすと、球体がクルクルと動いて並びが変わった。

私から見て、左から銀・金・青・赤・黄・緑・白・茶がある。

「シオの様に魔力のない人も居るの。その人達は、黒なのよ」

私、紫だけど?

でも、リーフォンの髪の色は、薄い黄色だ。その色は、並べられた球体には無い。

「リーフォンの髪の色、無いよね?」

「これは、基本色よ。シオからみて左から魔力量の多い順なの。私は基本色の黄色に属してるから、そんなに魔力量は多くないわ。ラシル様は紺だから青属性で、魔力量は多いのよ」

王様は、深緑だったな。あと、さっき見た第2皇子の側室の人は、赤かった。リーフォンより、魔法が使えるって事なのかな?

魔法を使うには魔力と杖が必要なのだと、説明を受けていた時だった。

ガチャリとドアが開いて、ラシル様が入って来た。ここは、ラシル様の執務室なのだから、当たり前なんだけど、2人してビックリしてしまった。

「おや?こんな所で……ああ、彼女がきたのかな」

ラシル様も少し困ったように笑った。

「すみません、長居をしてしまいました!」

仕事に戻らなきゃ、と思っていたら。

「気にすることはない。ところで、もしかして文字の勉強をしていたのかな?」

「そう思ったのだけれど、シオはこの世界の事もよく分からないようだから、魔法や魔力の事を教えていたの」

そうだったのかい、と笑顔でリーフォンに話しかけるラシル様。2人は仲良しだ。

では、仕事に戻りますと2人に挨拶して、部屋の外に出た。魔力とか魔法とか、教えてもらえてよかった。

歩きながら思い出す。あの、へっぽこ第2皇子、金髪だったな。

って事は、魔力量は2番目に多いのか。

あの、へっぽこが?

「ふふっ。へっぽこのクセにね」

笑いながら、ピオナさんのところに戻るのだった。


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