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こんにちは。私の名前は、黄河紫折。

え?読めない?

きがわしお、と言います。



ごく普通に生きてきました。

つい最近までは。

あ、忘れていました。純日本人です!

ですが、人生どうなるか分かりませんね。

ある日突然、異世界に来ちゃいまして。右も左も分からない状態になったんですよ。

20歳になっばかりで、こんな事になるとは。成人式に出たかったな。


「シオ!何してるの!さっさと床掃除終わらせなさい!!」

「はーい!」

そんな遠くから怒鳴らなくてもいいのにね。

豆粒くらいにしか見えない彼女は、ここの責任者のピオナさん。私より一回り上の、しっかりした頼り甲斐のある女性だ。ただ、ちょっと仕事中は怒りっぽい。



この世界は、魔法が当たり前にある世界で。

私がお世話になっているこの国は、世界の中で中心的な国だった。

ペムトボル魔法国。

この国のへっぽこ第2皇子の成人の儀式である、召喚術で喚びだされた私。家に帰せ!と第2皇子の胸ぐら掴んで激怒した。けれど、送還術はないらしく、ゴメーンとか軽く謝られ、腹が立って平手打ちをかましてやったのを、思い出す。その直ぐあと、王様と誠実で教養も高い、紳士な第1皇子に謝られ、この王宮で住み込みで働かせてもらえる事になった。

捨てる神あれば拾う神ありだ。









王宮の中の後宮と呼ばれる場所は、お妃様や側室の方、侍女、使用人の部屋がある。しかし、誠実で紳士な第1皇子の後宮には、愛する者は1人で充分だと言って、妻に迎えた地方の小国の王女が1人で暮らしている。バカな第2皇子の後宮には、正室はまだ居ないが、側室の女の人がいっぱい居て、大奥みたいになってるらしい。

良かった、第1皇子の方で!

私は、そんな広い後宮の一部屋を与えられていて。

快適に過ごしています。

「シオ〜?居る〜??」

ひょこっと顔を出したのは、第1皇子の奥様、リーフォン様。

彼女は、私と同い年だ。この国に嫁いできたのは2年前らしく、同い年の侍女で異界の人間である私を、大層気に入ってくれて。

事あるごとに、こうして部屋に来る。皇太子妃っていう自覚はないみたいだ。

「リーフォン様、独り歩きはしないでくださいって、ピオナさんから言われてますよね?後で怒られるの私なんですよ?」

「だって、美味しいお菓子を、貰ったんだもの!シオと食べたいわ!!」

「だったら、呼びつけてください」

「そんなのダメよ。私とシオは、友達でしょ?主従関係でもないのに、呼びつけるなんて、出来ないわ!!」

リーフォン様は、初めて会ったとき、キラキラした目で私を見て、友達になりましょう!と手を握って言ってくれた。

現代とはまったく違う、魔法とか王宮とか、不安で仕方なかった私は、半泣きで頷いたのを覚えてる。

「リーフォン様。じゃあ、お茶いれますね」

「もう!シオってば、2人の時は様付けしないでって言ってるのに。敬語もなしって、話し合ったじゃない!」

「あ、ゴメン」

お湯を沸かしながら謝ると、リーフォンはニコニコと笑った。彼女は小国の王女だからか、ずいぶんと庶民寄りだ。生まれ故郷の国は本当に小さな国だと言うし。

飾らない彼女に、きっと第1皇子も惹かれたんだろうな。

「はい。ミルクティーでいいんだよね?」

「ええ!シオの淹れるミルクティーは美味しいから、大好きよ」

嬉しそうにカップを持ってお茶を飲む姿は、本当に綺麗だ。

「ねえ、シオ。お家に帰りたくはならないの?」

マジで美味しいお菓子を食べながら、リーフォンの問いに答えを考える。

「帰る方法はないんだよ?」

この魔法が当たり前にある世界でも、召喚魔法は特殊らしい。異界から呼び出した魔獣と主従契約をする。私は、人間だからということで、そんなアホな契約は交わしていない。主従契約を交わしたら、その主と生死も共にするらしい。なので、最初から帰す気はない魔法なんだよね。

「でも……。ラシル様は、帰る方法を探してるって言っていたわ」

「ラシル様は、お優しいからね。公務もあってお忙しいでしょうから、大丈夫ですよって言ったんだけどな。まあ、帰れるなら帰りたいけど、向こうで私は行方不明なわけで。帰ったらここの事を、どう誤魔化せばいいのか、わからないしなぁ」

それが、1番困る事だ。

それと、この世界に来た時に、髪と目の色が変わったようで。

黒髪、黒目だったのに、なんか紫色になっていた。鏡を見た時、思わず叫んだよ?

これは、もし帰れたら治るのだろうか??そんな保証はない。

「じゃあ、シオはずっと居てくれるの?」

「そうだね。居ることになるかな。ラシル様には、ここで生きて行かせてくださいってお願いするつもり」

言ったら、リーフォンは嬉しそうに笑った。

「嬉しいわ!じゃあ今度、私の故郷の国に一緒に行きましょう!!」

リーフォンの故郷か。行ってみたいな。

そう告げたら、約束よ?と満面の笑みで言われた。

美味しいお菓子と、優しい友人。

幸せな時間である。










それから、ラシル様にリーフォンに話したのと同じ話をして、これからもここで住み込みで働かせてくださいとお願いした。

ラシル様は、優しい笑顔で当たり前だと承諾してくれた。

召喚された際に、言葉が通じないといけないから、召喚された側は言葉が聞き取れるし、喋れるようになっている。ただ、文字は別のようで。私は読み書きが、出来ない。

なので、ラシル様のご厚意で読み書きを習えるようになった。

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