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うろな第三世代!  作者: YL
第一話 犬耳侍、うろなに参上!
6/14

第一話 その5 不思議な光に導かれて

この話はif未来ですので、ご注意を♪

2027年4月23日(金)

PM5:45


母との約束もあり、

校門を勢いよく飛び出した桜也であったが、

そもそも何か心当たりがある訳でもない。


「どうしよう?

家に帰って桃香の部屋を探せば

何かヒントが見つかるかもしれないけど、

それじゃ”遅すぎる”気がするし・・・」


そんな風に今後の方針を立てかねていた

桜也の耳に不思議な声が聞こえてきた。



『桜也きゅん♡こっちこっち☆』

「へ?」



いきなり自分の名前を呼ばれて振り返ると

そこには蛍のような不思議な光が

ゆらゆらとたゆたっており、

こちらが振り向いたのに気づいたのだろうか、

ゆっくりと動き始めた。




「・・・僕を呼んでいるのか?」



桜也にも桃香と同様に

母譲りの”人ならざるものへの勘”が

受け継がれており、

それが必ずしも安全なもので

ないことはすぐに感じ取れた。



「・・・でも桃香の居場所につながるのなら。」



躊躇は一瞬。

”大事な人を守る”ためならば、

桜也の行動にいつものような

ためらいや自信のなさは見られない。

光を追って全力で駆け出すその姿には

かつてうろな町を大いに賑わせた、

彼の父親の面影が

はっきりと現れていたのだった。




PM5:55


桜也が10分ほど必死に光を追って、

辿り着いたのは北うろなの一角。

基本一軒家の多い北うろなであるが、

この辺りは昔ながらの町工場が

一部残っているようである。


そのうちの一つである

長い間使われていなさそうな”廃工場”に

例の光が入っていったのを見て、

桜也もそこに続こうとしたのだが、

背後から”思わぬ人物”に声をかけられた。





「ん?桜也か!

お前こんな所でなにしてるんだ?」

「えっ、孝人さん!!」


桜也に声をかけたのは

母司の元教え子であり、

うろな中学剣道部のOBでもある、

稲荷山孝人いなりやまたかとだった。

よれよれのスーツ姿であるが、

どうやら会社か取り引き先からの

帰りのようである。




「剣道部の練習帰りにしては、

お前ん家の方向と全然違うし。

大体いつも一緒にいる”犬妹いぬいもうと”は

どうしたんだよ?」

「澄兄の”ブラ妹”もどうかと思ったけど、

孝人さんまで・・・

桃香、孝人さんの前でも”地”出してましたっけ?」

「多少外面を繕っていても、

本質がバレバレだよ。

無駄なまっすぐさと融通の利かなさ。

実際は”アイツ”と同じタイプだろ。」

「ああ、確かに言われてみると、

良く似てますね。

芦屋先輩もいつもは凛としてますけど、

孝人さんと一緒にいる時、

結構”こわれて”ますし。」

「・・・もうちょっと成長して欲しいんだがな。」



二人が話題に出したのは

稲荷山の同期で、

中学校では剣道部部長も務めた

芦屋梨桜あしやりおのことである。

彼女もまた稲荷山と同様に桜也の両親の教え子であり、

現在は警視庁に行ってうろなを離れている

吉祥寺も含めてうろな中学、高校の剣道部において

全国の舞台で活躍した一員である。

3人とも継続的に桜也の両親や高原直澄から

指導を受けていた縁で、

桜也もよく知っている人物なのである。




「・・・ちなみに成長したら

芦屋先輩からのプロポーズ受け入れるんですか?」

「そ、そういう問題じゃない!!」

「やっぱり職業”陰陽師”っていうのが

色々問題に?」

「ある意味そこが一番の問題ではあるんだが、

お前の考えてるような理由ではなくて・・・

ああ、俺にどうしろっていうんだよ!!」

「・・・お疲れ様です。

ヤス兄達もそうですけど、

二人の仲が良ければ進むってものでもないんですね。

やっぱり結婚って大変だな。」



尊敬する先輩の苦悩する姿に

合田康仁と鹿島萌のことも重ねて、

改めて大人の大変さを認識する桜也であったが、

稲荷山が悩んでいるのはそういう”人間的”な

悩みではない。

稲荷山孝人の正体は人間の負の感情を糧に生きる

”妖狐”であり、

妖狐は”陰陽師”である芦屋梨桜の

”最優先抹殺対象”なのである。

自分の”天敵”から求婚されるという

二律背反アンビバレントの苦しみについては、

稲荷山と付き合いの長い桜也といえども

知る由もなかった。




「この話はこれで終了!!

とりあえずこの辺りは”危ない”から、

さっさと帰れ。

・・・桜也、あの”イアリング”は

ちゃんと持っているよな?」

「もちろんですよ、孝人さん。

ホラ、ひもを付けていつも首からかけてますから。」



桜也が外からは見えないように身に着けていた

赤いイアリングを稲荷山に見せると

彼は安心したようにうなづいた。


桜也が稲荷山を慕う理由は

もちろん両親の元教え子で剣道部の大先輩で

あることもあるが、

それ以前に小さいころ

”命を救われた”ことがあったからである。

どんな事件だったかまでは

ショックが大きかったためか、

”あまり思い出せない”が

その際に稲荷山が”お守り”として

亡き幼馴染の形見であるイアリングを

桜也に託していたのである。

彼の言いつけを守り、

桜也はこのイアリングを肌身離さず、

今でも大切に持っている。

それが”どういう役割”を果たしているのか

については知らないままに。



「なら、良いんだ。

(今回の事件は妖怪がらみっぽいし、

桜也の中の”ヤツ”に

影響を与えかねないからな。

頼んだぞ、”サツキ”。)」

「はい?

孝人さん、何か言いましたか?」

「いや、別に何でもない。

とにかく早く帰」

「い、稲荷山くん!

私のプロポーズをいつまでも受けてくれないと

思っていたら、

ついにBLボーイズラブを飛び越えて、

ショタの世界に!!

そんなのダメーーー!!!」

「ぐえ!あ、芦屋!!

なんでここに!!!」



稲荷山が独り言を呟いた後、

改めて桜也を追い返そうとした瞬間、

彼の背後から迫ったキャリアウーマン風の女性が

意味不明な発言をしながら

体当たりをかましてきたのだった。


彼女こそが先ほど話題に上った稲荷山の

”天敵”にして”求婚相手”、

芦屋梨桜、その人である。

普段は全国を飛び回る売れっ子?美女陰陽師として、

業界では若くして一目置かれる存在であるが、

稲荷山を相手にすると中学生の頃と全く変わらぬ、

”子犬”のように戻ってしまうのである。


ちなみにBLどうこうというのは、

彼女が稲荷山に抱いている

大いなる勘違いの一つであり、

自身の想いを自覚し、

彼にプロポーズを繰り返してなお

受け入れてもらえないことで、

その疑念が更に燃え上がってしまっているのである。

・・・まあ、色々な経緯があったにせよ、

”抹殺対象”であるはずの妖狐を

人間であると今でも思い込み、

熱烈に求愛しているという”根本的なズレ”に

比べれば大した問題ではないのかもしれないが。





「いや、良く見ろよ。

鬼小梅の息子の桜也だって!

あれ、あいつ、どこに行きやがった?」

「桜也くんは知ってるけど、

どこにもいないじゃない!

そんな”嘘”をつくなんて、

本当に見ず知らずの

幼い男の子に欲情してたんじゃ!!

・・・そんなに私、魅力ないのかな?」

「か、身体を押し付けてくるな!

・・・桜也の奴、逃げやがったな!!

ああ、いつまでたっても不幸すぎるーーー!!!」




弁解相手となってくれるはずの桜也が

いなくなってしまったことで、

より芦屋の疑念を増幅させてしまった稲荷山。


12年後のうろなにおいても相変わらず、

彼は食えもしない自身の不幸を叫び続ける、

そんな運命にあるのだった。






PM6:00



「ごめん、孝人さん。

桃香を見つけたら、

芦屋さんに誤解だって

連絡しておくから。」


妹の捜索のため

命の恩人を無情にも

見捨てて逃げてきた桜也であったが、

先ほどの光が飛び込んだ廃工場に入ると

その”異様な”空気に

肌がチクチクするのをすでに感じていた。


何の音もせず、

”誰もいないはず”なのに

濃密に漂う”何者かの気配”

正直すぐにでも

逃げ出したい気持ちであったが、

同時にもし桃香がここにいるのであれば、

急いで連れ戻さなければ、

”本当に危ない”と直感しており、

その足を止めることはなかった。





「ああ、あの光だ!」



桜也が工場の片隅が

不自然に光っているのを見つけて近づくと

そこにあったのはあの不思議な光の塊だった。

その光はある”ドア”の周りを

ぐるぐる回り続けていた。

まるで


「ここだよ。」


と言っているかのように。



そのドアを桜也が恐る恐る開いてみると

その先にあったのは何と・・・




















完全な”暗闇”だった。





------------------------



「こ、こないでよ、この”触手女”!」

「アタイには”少愛女しょうあいじょ”って

名前があるんだよ、このメスガキ!!

まったく、また”可愛い坊や”が

来てくれたとおもったら、

こんな乳臭いメスガキだったなんて。

しかも何だい、その刀は。

アタイの大事な”手足”を何本も切っちまって!

じっくりといたぶってやるからね!!!」



その暗闇の中では桜也の妹、

桃香が名刀、愛護丸を振るいながら、

無数の触手を手足から伸ばした

女性型のバケモノから必死に逃げていた。





「あんたが最近の小学生誘拐の犯人なんでしょ!

”可愛い坊や”だなんて、バケモノの癖に

ショタコンって何なのよ!!」

「口の減らないガキだね。

やっぱり生気を吸うなら、

可愛くて純粋な男の子に限るよ。

メスは五月蠅い上に、

ずうずうしくて仕方がないね。」

「あ、あんただって、

胸に”だらしないもの”

ぶらさげているじゃない!?」

「こんなのは坊や達をおびき寄せるための

餌にすぎないよ。

男の子は冒険好きで

こういう隠れた場所に憧れる割には

いつもお母さんに甘えたいと

願っているからね。

アタイはそんな心の隙を利用して

”巣”を張り、

ちょっとの間”食事”を

させてもらっているだけさ。

食事後はちゃんと帰してやっているだろう?」



桃香の追及に対してもまるで悪びれる風もなく、

とくとくとしゃべる触手女。

まるで「何が悪いんだ?」とでも

言わんばかりの態度に加え、

やけに”グラマラス”な形状を

触手女がとっていることにも、

イライラが収まらない桃香は

徐々に隅に追いやられながらも

追及を緩めなかった。



「ちゃんとって、

被害者は寝込んだままじゃない!」

「ふふふ、ちょっとアタイが付けた”印”が

馴染むのに時間がかかっているだけさ。

もう少ししたら”何事もなかった”ように

元気になるはずさ。

アタイは坊や達が”ずっと元気でいる”のを

望んでいるからね。

それにもうそろそろ”食事”の

必要はなくなるよ。

それなら問題ないだろう?」

「それは・・・きゃあ!」



触手女の言葉に言い返すのが

難しくなり、

桃香の注意が散漫になった瞬間、

背後から迫ってきた触手が彼女を絡め取り、

愛護丸を弾き飛ばした上で、

身体を空中へ持ち上げたのだった。



「捕まえた♪

さてさてむかつく奴だけど

殺したりしたら、

この町の妖怪連中は煩そうだからね。

精々搾り取るだけ搾り取ったら、

外に捨てておこうか。」

「た、助けて!!」

「おやおや、助けを呼んでも”無駄”だよ。

ここは変な奴に見つからないよう、

他の空間と”隔絶”してあるからね。

すぐ近くに誰かいたとしても

何も”見えない”し、”聞こえない”はずさ。」



獲物の絶望を誘おうと

恐ろしい事実を告げる触手女。

頼みの愛護丸は地面に転がっており、

万事休すである。


針のようなものが付いた触手が桃香に

徐々に迫ってくる。

恐怖のあまり金縛りにあいながらも、

彼女は縋る様な思いで、

”一番大切な人”の名前を叫んだ。



「助けて・・・、桜也おにいちゃーん!!!」



------------------------




外はもう大分暗くなっているとはいえ、

目の前に広がる不自然な真っ暗闇。

明らかに目の前の状況は”変だ”。

桃香がそれに巻き込まれていないか

確かめるためには、

一歩前に進む必要がある。


でも足が動かない。

まるで、脳が”行くな。ヤバすぎる。”

と必死にその足を止めているようである。


しかも何故だろう、

さっきから”胸が熱く”、

”めまい”がする。

この廃工場に充満する、

目の前の扉の向こうから流れ込んでいるらしい、

”おかしな空気”によるものなのだろうか?

こんな空気を桜也は今まで感じたことはなかった。




・・・いや、違う。

覚えてはいないけど、

かつて、小学校に入る前の頃、

桃香と二人で西の山で遊んでいた時にも

同じ空気を感じたはずだ。

あの時”炎のバケモノ”が桃香に

手を伸ばそうとして、

僕は・・・




ああ、目の前が”赤く”歪む。

”あの事件”以降、

竹刀で相手を打とうとすると、

その他のことでも誰かに

「勝ちたい」と強く願うと

いつも”おかしな声”が聞こえてきた。




『そいつが憎いか?

力が欲しくないか?』と。




今までその声から必死に逃げてきた。

その声のままに”力”を求めてしまったら、

”取り返しのつかないこと”になる気がして。


「根性のない奴だ」と蔑まれても構わない。

「妹に比べてなんて出来が悪いんだ」とバカにされても構わない。

誰かを傷つけるくらいなら、

その方がマシだとずっと思ってきた。

だから今回も逃げなきゃいけないはずだけど・・・






「助けて、桜也おにいちゃーん!!!」



ピキ!!



何故か妹の、

桃香の声が聞こえたと

思ったその瞬間、

”何か”にヒビが入った。


桜也の双眸が紅く煌めく。


すると今まで何も見えなった暗闇の先に、

タコの触手のようなものに

釣り上げられている桃香の姿が、

くっきりと浮かび上がってきた。



その直後、

桜也は自分でも気づかないうちに、

目の前の”暗闇”の中に飛び込んでいた。


扉に張られた遮断の”印”も、

今度こそ

”死ぬかもしれない”、

そんな無上の恐怖すら

躊躇なく蹴り飛ばして。

第一話では寺町朱穂さんの『人間どもに不幸を!』のキャラを主に使わせていただいており、まずはみんなで叫ぼう、はい、「不幸だー!」でお馴染みの稲荷山くんと、「稲荷山くん、妖狐の気配がするよ❗」で彼(正体は妖孤)を振り回す突撃陰陽師、芦屋さんの登場です。寺町さんに設定をいただいた時に二人の変わらなさ具合に何故かホッとしました(笑)


最初の敵からふざけていてすいません(汗)正直敵を良い感じにする余裕がないので、今後ヒロインを提供していただいてる方、是非ご提案をお願いします。


では本日最後は第一話クライマックス、バトルシーンとなります。そしてなんとあの人まで❗白熱のその6は22:00頃更新です。

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