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うろな第三世代!  作者: YL
第一話 犬耳侍、うろなに参上!
3/14

第一話 その2 ヤンデレ姫はご機嫌ナナメ

これはif未来ですので、ご注意を♪

2027年4月23日(金)

AM6:30


美咲の部屋でのハプニングから

何とか脱出した桜也が

最後に向かったのは妹桃香の部屋である。


桜也の双子の妹、清水桃香しみずももか

兄である桜也と違って勉強では学年トップ、

運動神経も抜群で剣道では小学生時代に

全国大会優勝も経験しており、

うろな中学剣道部においてもスーパールーキー

としてさっそく大会メンバー入りを果たしている。

その上同級生達が言うには

明るくかつ誰にでも優しく、

先輩・先生からの信頼も厚い”完璧超人”。

モデルでもしているかのような

”スレンダー”な体型から、

男子の間では”あの足に踏まれてみたい!”

との熱烈な声が

上がっているとかいないとか、

とにかく入学早々男女問わず大人気の、

学校のアイドル候補らしいのである。


確かに桃香の学校での様子を見ていると

そんな風に騒がれているというのも

あながち分からない訳ではない。

そのせいなのかどうなのか、

「桜也くんって桃香さんと似てないのね。」とか

「妹があんなに活躍しているんだからお前も頑張れ。」とか

みたいな大きなお世話としか

言いようのないことを周りから言われるのに、

だんだんウンザリしている面もあるが、

それに関しては事実なのだから、

まあ、別に構わない。

同じ親から生まれたとはいっても、

自分は自分、桃香は桃香なのである。

だから桃香は自分のことなど気にせず

好きなようにやっていてくれればいいのであるが、

そうはいかないのが世の中の難しい所なのである。



「桃香、入るよ。」

ノックもそこそこに妹の部屋のドアを

あまり気にせず開ける桜也。

もちろん妹も年頃であることは理解して

いるのだが、

”そんなことを遠慮していたら埒があかない”ため、

桃香を起こす際にはあまり遠慮せずに部屋に入ることにしている。


ドアを開けて目に飛び込んできたのは、

先ほどの美咲の部屋とは”似ても似つかない”

ぐっちゃぐちゃの部屋であった。

床には脱ぎ散らかした服どころか、

下着までが散乱しており、

遅くまでまた何かやっていたのであろうか、

パソコンや机周りには

よく分からない書類や本の束が

うず高く積まれており、

今にも倒壊してきそうである。

桜也がこまめに掃除しているため

ゴミなどはそれほどなく、

いわゆる”汚部屋”とはなっていないが、

正直周りの”完璧超人”のイメージからはかけ離れた

”腐海”が目の前に展開されていた。




桃香は非常にonとoffの激しい性格であり、

外では全方位に気を配っているものの、

家に帰ると途端にそのタガが外れて適当になり、

自分の部屋の中ではさらにそれが悪化するのである。

1年前から美咲が清水家に来てからは、

自宅では部屋に引きこもることが多くなり、

部屋の汚染度合いがより激しくなった気がしている。


ちなみに家を改築した小学校高学年ぐらいから

桜也と桃香は自分の部屋を与えられたのだが、

部屋がそんな状況であるから、

桃香は桜也の部屋に忍び込んで寝ることも多く、

桜也が桃香の部屋を片付けてあげては、

すぐに桃香が元の木阿弥にしてしまうという

ことが延々繰り返されてきたのである。

流石に大きくなってきてそれはまずいと

両親から注意され、さらに美咲が来たことで、

この”夜這い”もおさまってきたのであるが、

その分、桜也は毎朝この腐海から

妹を引きずり出さなくてはならなくなり、

いつも苦労しているのである。



「桃香、桃香、ホラ、起きなって。」

「・・・」

「いい加減、起きないと剣道部の朝練に間に合わないよ。」

「・・・」

「母さんも仕事でもう出ちゃったし、

美咲ちゃんの調子も心配だから、

早く起きて用意しなよ。」

「なんで”他の女”の話なんてするのよ、

”おにいちゃん”!」

「ちょ、ええ!?」



声をかけても全く反応しないことから、

布団をゆすって妹起こしにかかった

桜也であったが、

何故か母と美咲の話題を出した途端、

布団からむくっと妹が起き上り、

そのまま桜也をベッドに押し倒したのだった。



「いきなり、何するんだよ、桃香!

というか、そのYシャツ1枚の恰好!!」

「だって最近一緒に寝てくれないから

寂しかったんだもん!

えへへ、これおにいちゃんの匂いがして、

着て寝ていたらおにいちゃんに

抱っこしてもらってるみたいだったし。」

「しかも僕のやつなのか!

何故だか1枚なくなってる気はしてたけど。

あと”おにいちゃん”って・・・、

お前、昨日何時に寝たんだよ?」


妹の蛮行に文句を言った桜也だったが、

その服装に気づいて

さらに驚かされることになった。

かつて母司もやった伝説の”裸ワイシャツ”。

しかもそのワイシャツが兄の使用済みである

ことを告白して悦に入っている実の妹・・・。

色んな意味で頭痛しかしてこない展開であったが、

桜也は妹の子どものような口調から

その奇行の原因についておぼろげながら

予感めいたものが浮かんだのだった。




「ん?・・・たぶん3時はまわってたかな?」

「あー、もう、やっぱり寝不足で”おかしく”

なっているんだ。

お前、ひどい低血圧な上、

寝不足だったりして体調不良だと

”こども”に戻っちゃうんだから、

ちゃんと早めに寝ろっていつも言ってるだろ。」


そう、こんなことは1度は2度ではなく、

熱を出した時とかは桃香はこんな風に

桜也ベッタリになってしまうのである。

桜也は桃香のこの”病気”について、

いつも外面を全力で

飾り立てていることの反動で、

疲れた時には幼児退行してしまうのだと

考えているが、

実際はより”複雑”なのであった。



「うるさいなー。

それよりも何でこんなに”別の女の匂い”がついてるのよ!」

「なに、人の匂いを嗅ぎまわってるんだよ!

というか、別の女って、

母さんとか美咲ちゃんのだろ?

一緒に住んでいるんだから、匂いくらいつくこともあるさ。」

「だ・か・ら、それが今日は何でこんなに

”濃い”のか聞いてるの!」

「いや、何でそんなの分かるんだよ!」

「わたしはおにいちゃんの貞操を守るために、

不埒なメスの匂いをいつもチェックしているの!」

「・・・お前、本気で頭おかしくなったんじゃないのか?」


女の子は父親に、男の子は母親に似るというのは

世間的にも良く使われる表現であるが、

清水兄妹、特に桃香に関してはこれが悪い意味で当てはまっており、

普段は完全に隠しているものの、

一皮むけば彼女は超ド級、”ヤバい”レベルでのブラコンであり、

しかも重度の”匂いフェチ”なのである。

しかし普段はそんなことを一切表に出していないことから、

妹の驚愕のカミングアウトを聞いて

逆に心配してしまったくらいであった。



「・・・美咲ちゃんもだけど、

お前も中学生になってそんなに大変だったの?」

「当たり前じゃない!

入学早々剣道部やクラスで派手に動き回って、

他の女の注目がおにいちゃんに集まるのを防いでる間に、

おにいちゃんは担任の”淫乱教師”にたぶらかされ、

さらには生徒会長の立場を利用してあの”メスブタ”まで

距離を詰めようとしているんだもん!」

「”淫乱教師”って、萌先生のことか!

お前、小さいころから面倒見てもらってたお姉さんに

なんてこと言ってるんだよ!!

それに”メスブタ”って・・・

なんでお前はそんなに美咲ちゃんのこと敵視してるんだよ?」

「だってあの女、魂胆みえみえじゃないの!

今日だってママの”頭ぐりぐり”は許してあげるとしても、

あの女、おにいちゃんを部屋に

連れ込んでなにしようとしてたのよ!!」

「いや、今の今まで寝こけていたお前に

何でそんなこと分かるんだよ?」

「おにいちゃん、遠慮して普段はあの女の部屋には

入ろうとしないけど、

私、時々向こうの押しに負けて部屋に連れ込まれてること

知ってるんだからね!

その時はいつももうひどい匂いだけど、

今日は本当にヤバいくらいわ!!

・・・おにいちゃん、本当にあの女に

”汚され”たりしてない?」

「汚されてるのはお前の発言による、

僕のみんなへのイメージだよ!!」


一応心配して桃香に最近大丈夫か聞いてみた桜也であったが、

分かったのは”うちの妹、今日はマジでおかしい”

ということだけだった。

正直自分の身近な女性たちについて聞くに堪えない

罵詈雑言を聞かされて、

徐々にイライラしてきた部分もあったが、

このまま怒鳴りつけたとしても、

今の妹に道理が通じるとはとても思えなかった。

もう、仕方ない。



「・・・はあ、もういいよ。

よく分からないけど、

お前は寝不足で変になってるみたいだし、

このまま朝練なんかに連れて行っても

しょうがないから、このまま寝なおせ。

澄兄には連絡しておくから。」

「・・・やっぱりあの女の方が大事なの?」

「そういう問題な訳ないだろ!」

「じゃあ、もうちょっと一緒にいてよ!

・・・あの女は良くて、私はダメなの?」

「ああ、もう・・・分かったよ。

一緒にいてやるから、少しだけ待っといて。

はあ、澄兄にいじられるのは仕方がないとしても、

クラスや剣道部の連中の反応を考えると気が重いなー。」

「ねえ、早く、早く!!」

「はいはい。ちょ、くっつきすぎだよ、桃香。」

「だーめー。今度は私の匂いをしっかりつけるんだから!」

「・・・もう好きにして。」


これ以上の議論は自分の精神を消耗させるだけだと考えた桜也は、

剣道部のコーチである直澄に朝練を

桃香と共に欠席する旨について

携帯端末で連絡を入れると、

妹の求めるままに抱き枕と化したのであった。


いくら”ナイチチ”でかつ実の妹とはいえ、

同年代の少女に抱きしめられているというのは、

女性恐怖症気味の桜也にとって拷問に等しいのであるが、

今日これ以降を平和に過ごすため、

自分を人身御供に捧げることを

彼は泣く泣く決断したのであった。




ちなみにこの後中々桃香の部屋から

桜也が出てこないことを心配した美咲がやってきて、

「ふ、二人とも、兄妹で抱き合って何を!」

みたいな反応を示し、

更なる大混乱が引き起こされてしまうのであったが、

この朝の大騒ぎでさえ、

桜也にこの後降りかかる”大いなる災難”に比べれば、

ほんの予兆にしかすぎなかったのである。


桜也の勘がもう少し働いていれば、

いくら何でも今日の女性陣の行動は

”過激すぎ”ではないかとか、

「なぜ妹がそこまで夜更かししたのか」とか

にまで考えが及んだであろうが、

そこまで望むのは酷というものだろう。

しかしながら彼の知らない間にすでに

事態は着々と進行していたのである。




桜也の、そして未来のうろなの運命を左右する、

騒がしげな空気、

そしてブラコン妹君のご乱行は

まだまだ始まったばかりなのであった。


はい、こんな子になってます、清水家次女(人間では長女)。

色々清水の要素を入れてみましたが・・・、

なんというか・・・、うん(汗)


次の話ではもうちょっとまとも?な

姿が見られるので、

16:00の更新をお待ちください。

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