プロローグ 摩訶不思議なエイプリルフール
それではエイプリルフール企画開始させていただきます!
清水と一緒にどうぞ楽しい夢の世界へ
2015年4月1日
AM10:00
今日は4月1日。
学校としては既に新年度に入っているのだが、
今日生まれた子供は法律上「早生まれ」として前年度に
生まれたことになるという何とも不思議な端境期。
そんな色々なものが混じり合うこの日、
うろな中学校教師、清水渉は双子をベビーカーに
乗せて、古本屋『夢幻』へとやってきていた。
「あーあー!!」
「きゃーきゃー!♪」
「ちょ、二人ともどうした?
ああ、今日に限って育休の更新で司さんが
呼び出しを食らうなんて・・・
すいません、皇さん、お店で騒いじゃって。」
「いえいえ、今日の『主賓』は清水さんたちですから、
気にせずゆっくりとご覧になってください。
閲覧用の移動式椅子も用意してますし、
お疲れの際はお茶やド○ぺを用意してありますから、
遠慮なくおっしゃってくださいね。」
店に入るなり興奮して騒ぎ出した子供たちの様子を見て
店主である皇に謝った清水であったが、
どうやらこうなるのも折り込みずみであったようで、
皇の方は余裕の対応を見せていた。
・・・ちなみに実は皇が人払いをしているため
そもそも店に他の客が入ってくることはないのだが、
そんなことは清水に分かるはずもない。
「なぜド○ぺなのかはちょっと気になりますが、
本当にありがとうございます。
一人で双子を連れて外出というのは中々大変なんですが、
今日行くとお約束してしまっていたので・・・
それにしても想像以上に絵本が充実していますね。
専門店にも行ってみたことがあるんですけど、
そこでも見たことのないようなものがありますよ!」
「それはそれは良かったです。
『お客様のお望みのものを用意する』のがうちのモットーですから。
たくさん『イイモノ』を揃えてありますから、
時間の許す限りゆっくりとお探しください。」
「すいません。
1歳になっていないし、
普通は絵本とかはまだ早い時期なんですが、
二人とも読んでもらうのがとても好きみたいで。
だから1歳の誕生日のプレゼントは絵本にしようと
思ってはいたんですが、
桃香が新しいのを次々ねだるので、
有名なお話はだいたい読み終わってしまったんです。
折角の初めての誕生日なのでどうせなら記念になるものを
と思っていたので、これだけ色々あると助かります。」
「どうぞどうぞ手に取って見てください。
珍しいものもありますが、
バレンタインのご恩もありますし、
勉強させていただきますよ。」
「本当にありがとうございます。
丁寧に扱いますね。」
カウンターの方に戻っていった皇に清水は改めて礼を言い、
双子たちをあやしながら気になった本を物色していった。
しかし本当にすごい品揃えである。
ここを利用した知り合いからその評判は聞いていたが、
俺が昔父親に読んでもらった思い出の作品とかまで
用意されているなんて、本当に驚きである。
流石に偶然ではあるんだろうが、
あの妙に凄そうな店主さんなら、
それくらいのことなら平気でやってしまいそうな気もする。
まあ、とにかく選択肢が広いのは良いことに違いはないから、
じっくりと選ぶとしますか。
「んあーーーー!!」
「ど、どうした桜也?
ん、その本が気になるのか?
いつも桃香が選んだのを一緒に
聞いているだけなのに、
珍しいなあ。
なになに、『雨狼名第三世代』?
なんだこれ?
装丁が古めかしい割に、
変に綺麗だし。
一体どんな内容なんだ?」
いつもは引っ込み思案な息子が
自分から希望を示したことに驚きながら、
清水は店主が用意してくれた椅子に座り、
高級感のあるその本をゆっくりと開いていったのだった。
「へえー、綺麗な挿絵だな。
なになに、
『2027年4月23日早朝、
まだ空が明けきらない時間にも関わらず、
台所ではエプロン姿の小柄な少年が慣れた手つきで
朝食の準備をしていた。』
って、この装丁で未来もの!
しかも妙に所帯じみた始まり方!!
・・・2027年っていうとうちの子たちが中学生になるくらいか?
その頃には家事を手伝ってくれたりしているのかな?
えっと続きは、
『「うん、おいしくできたかな。
今日も朝練だし、
そろそろ母さんたちを起こさないと。」
少年はエプロンを外すと家族を起こすために
ダイニングを後にしたのだった。
そんな少年の名は』
良い子やなー。
うちの桜也もこんな優しい子に育ってくれれば
いいけど・・・
さて主人公紹介は次のページかな?
彼の名前は・・・えっ?」
その本の変わった内容に
ツッコミを入れながらも、
清水は次のページをめくろうとしたのだが、
本が不思議な光を放ったように思えたその瞬間、
『どこかに引き込まれるような』
強烈な睡魔が彼を襲った。
一瞬にして夢の世界へと旅立った彼の耳に、
不思議な囁きが聞こえてくる。
『あはは。すっごい簡単に”入って”くれた☆
”あの方”からは”只者じゃない”って聞いていたけど、
所詮人間なんて大したことないじゃない♪』
『本に隠れて不意打ちのように術を使っておいて
良く偉そうなことを言えますね、ムシさん。』
『ムシ言うな!
私を呼ぶときは”夢子”って呼びなさい!!』
『はいはい、そうでしたね。
でもいいんですか?
ちゃんと”監視役”としての役目を果たさないと
”彼女”から叱られてしまうのではありませんか?』
『わ、分かってるわよ。
あんたこそ、”あの方”の”遊び”を邪魔したら
どうなっても知らないんだからね!!』
『確かにそうかもしれませんね。
まあ、これも一興かと思って引き受けましたが、
チョコのご恩もありますからね。
”私なりのやり方”で見守らせていただくとしますか。
それでは清水様、どうぞ”とっておき”の良い夢を。』
誰とも知らないそんなやり取りを聞きながら、
彼の意識と魂は、
時間と空間を超えていく。
これはうろな町とよく似た世界で、
もしかしたら起こるかもしれないよもやま話。
嘘の許される今日一日、
皆様を摩訶不思議な世界へと誘いましょう。
それではどうぞ、お付き合いを。
今日は次々と更新していきますので、
どうぞうろな町の「if未来」をお楽しみください。
プロローグでは連城さんの『悠久の欠片』より古本屋夢幻と皇さんを、
小藍さんより本作オリジナルキャラ「夢子さん」をお借りしております。
皇さんについてはバレンタインデー話からネタを引っ張ってきて
おりますので、そちらも是非どうぞ。
ド○ぺネタを使えて良かったです(笑)
小藍さんのオリジナルキャラについては
途中で少しずつ正体を明かしていければと考えています。
まずは素晴らしいキャラ、企画のために提供していただき
小藍さん、ありがとうございました!
「あの方」が誰かについても色々妄想していただけると嬉しいです。
それでは2時間後に公開される本編をどうぞお楽しみに♪