四
雪原が夜空に反射する。白い大地はこの世の均衡を称えるかのように、清浄な地を踏み荒らそうとする私に道理を知らしめるかのように、一切の隆起を許さず乱れのない線を描いていた。無音の銀世界は私と後輩を立ち竦めさせるには十分な恐怖であった。
ずしりと重い足を抜き差し抜き差し、前方へ進む。時刻は午後五時。夕日を過ごした町には子供の姿もなく、時折一線向こうの国道に薄黄色のスモールライトがちらちらと瞬いては遠ざかる。あちらこちらを勇壮に走っていた車両の幾つかは既に、今は遠い我が家へ帰ったのだろう。
私たちはとても遠くに来た。最果てへと訪れた。選ばれなかった者がここに辿り着く。呼ばれぬ者が至るのは終わりであり、至らしめるのが破壊なのだ。
私は振り返る。眼前の男の不機嫌面を両の目に収めたかった。
ロングコートのポケットに仕舞い込んだ安物の使い捨てライターを捕らえる。じゅっと錆びた金属音を指の腹で奏でてやると、私と男の間に真っ赤な炎が燃え上がった。零度の風にいたずらに煽られるまま当て所もなく揺らめくか細い赤が、私と男、それぞれを二つの影に暗く隔てた。
「…………」
今度は私が押し黙る番だと思えども、喉から感情がずるずると這い上ってくる。乾燥し、さか剥けた唇の皮が潤いを欲して私を唆す。何も始まらぬ押し問答に何も見出すことはないと、自己欲求がなす誘いに乗じて口を開くと、冷えた空気がじんわりと口内に広がった。




