二
終業後、後ろに一対の足音を引き連れて校庭に降り立つ。憎き赤い罪の樹は今では雪に覆われ、静けさに身を沈めていた。これから起こす罪の甘さをより一層強める現状に、私は舌なめずりをした。
あの果実は今頃この仮初めのベールの下で、来秋への赤い誘惑を蓄えているのだろう。私を縛り付けるために。
つまらぬ私は、中学二年の秋、この果実に運命を呪われた。
華の都会と似ても似つかぬこの田舎町を抜け出そうと両の足が棒になるまで一筋の夢を辿った一年前。だが、歩けども歩けども、あるのは同じ顔、同じ道、同じ名字、同じ人生、墓標の連なり……。
街灯が途切れるまで夜道を全力で駆け抜ける。走り、走り、走れども、そこらを着飾るのは私を笑う赤くてまあるい世界。ぽつんぽつんと微笑む林檎たちが見知った大人と同級生へ変わる変わる、ころころ変わる。逃げられぬ道に、私は恐怖で泣き帰った。今までの人生でその時が何より恐ろしかった。
けれど、何よりも恐ろしかったのは、その林檎のひとつにぐにゃりと光る私がいたからだろう。
しかし、その恐怖も今夜で終いだ。安堵と興奮だけが足先をむずむずと落ち着かなくさせ、駆け出したいほどの衝動、憎いはずの木々にさえ都合のよい愛情が沸き出すのを感じる。
中学最後の冬、これからこの燃えるはずのない木々を燃やす――熱く、焦がれ続けた幻想に酔いしれるだけで冬の閉塞感さえ遙か後方へ飛び散った。




