ミラー
歩いていく先にみる時計…
どれも時刻が違う。だんだんいつなのかわからなくなっていく。
飛び出す鳩時計…
ひっきりなしになるメロディー…。
左右みながら踏み込んでいく。
ゆがんでみえる世界。
カロは恐る恐る進む。
ここはどこなんだろぅ…。
毒リンゴをくれた魔女。
カエルにされた王子様。
童話の世界??…
出口の見えない場所。
だんだん不安になってくる。
どんっ!
背中を押された。
振り向くと金髪で短髪の青年がたっていた。
きょとんとしてカロをみていた。
「そんな悲しい顔していると 太陽をみれないよ(^O^)」
笑顔でカロの顔を覗きこむ。
「君は…えっとえっと…」
『あたしはカロ』
「あぁカロだね!僕はムーン」
『ムーン…もしかして…』
「そぅ! 僕は月がでた晩にうまれたからムーンだって。
いい加減だよな。」
『うぅん。ちゃんとした理由があるじゃない!…ね…ぇムーン、ここは夢の世界?』
「違うよ…。夢なんかじゃないさ。」
『いたっ(>_<)』
ムーンはカロの頬をつねる。
「ほら…痛みがあるだろう?」
『あたし、たしか寝ていて…きがついたらここにいて』
「何言ってるんだい?夢なんかじゃないったら」
『不思議なところね(^O^)初めてだわ…まるでおとぎの国にきたような。』
「色々ぼくが案内するよ」
町には本の中でしか見たことのないようなものがたくさんあった。
『あっすごーい!あれおかしの家じゃない?』
かけよって
飴でできた窓から中をのぞいた。
ポッキーでできた椅子。
いまにもとけそうなチョコレートの器。ビスケッツでできた外壁。
中にはいってみた。わたあめでできたふわふわのベッド。
『寝ころんでも大丈夫?』
「あぁどうぞカロ姫様」
ぽんっ
わたあめのベッドに寝ころぶ。
ザラメの甘い匂いとヒゲのようなこまやかな繊維が肌をくすぐる。
床には信じられないくらいの大きい蟻。
『きゃ〜大変!蟻が家を食いつくしそうよ』
「いいんだよ。蟻たちは彼らなりに餌をもとめて生きているんだから。食べられたらまた作ればいいさ!」
『ムーンって優しいのね』
「えへへ…そうかな。ここでは当たり前のことなのさ」
外にでるとそらに かかる虹の上を歩く人がいる。
みるものすべてが常識では考えられなかった。
町からでると広い湖があった。
すがすがしく気持ちがすっきりする湖畔。
「ここは聖地なんだ。今きみがどんな気持ちでいるのか全て映し出してくれるのさ」
湖の水際に緊張しながら近づいた。
自分はどんな風にうつるのか怖かった。それは心の鏡でもあったから。
湖に自分の姿がうつった。
「カロ…さぁどうみえる?」
ポツポツっ湖におちる雨。ざーっ。
『これじゃあ、姿わからないよ』
ムーンは笑顔で
「そう!それが今のきみの姿なんだよ。この雨はきみの涙だよきみはなぜ泣いているのかい?悲しくて泣くの?それとも嬉しくて泣くの?涙なんて体のどこから出てくるのかそんなにでる液体があるのか不思議だよね。蛇口があるんだよ。しっていた?」不思議そうにみた。手のひらを胸にあて
「君のここが苦しいとき…つらいとき…悲しいとき…切ないとき…嬉しいときにこの胸の奥がズキンズキンいたみながらこみ上げてくるだろ?」
カロは目を閉じ胸に手をあて考えた。
「君は自分の為に涙を流すの?それとも家族の為に?それとも愛する人の為に…?僕は誰かのために
流すよ…。しいていえば愛する人…そんな人があらわれた時に…ね」
『愛する人…。』
「君にとって愛する人はいる?じゃあもう一度湖覗いてみてよ」
カロは湖へと歩みよった。
「よくみてよ…。
君が愛するかけがえのない人がこの湖にうつるよ。それはどんな風にみえる?泣いているかな?そのときのバックにみえる空は何色?
きれいに見えない?
笑い声は聞こえてこない?
カロ、君はよく耳をすましてみてよ。君を呼ぶ声がするだろう?何万回よびつづけてかすれても君を呼ぶ声がしないかい?なんて聞こえる?
君が欲しい声がきこえてくるはずさ」
ポケットからとりだしたオカリナでふくメロディーは大好きな曲だった。
何もかもいやな気分さえ癒やしてくれる優しい音色。
カロは空を見上げた。
いつの間にか暮れる夕日。
真っ赤な太陽は
今のカロを包み隠してくれた。
瞬きをした瞬間闇になった。
ムーンがいない。
真っ暗な闇にひとりいる。
どれだけ孤独をあじわっただろう…。
みたことある場面。ドキドキ…恐怖感がでてきた。
背中が寒い。前も後ろも横も闇がカロを覆い尽くした。
このまま消えてなくなってしまいたい。
闇に姿隠して…どこにいるのかもわからないままに。
音もない世界…。
遠い遠い頭上に小さく光る星があった。どれが一番星かみつけた幼い頃。
三度もいえないよとわらって願いを唱えた流れ星。
一番に光る星のすぐ隣りにちいさな星がある。色は違うが、暗闇に浮かぶ2つの星はかわいらしくもみえた。
そうだいつかみた田舎にいったときにあの人と見上げた一面の星空…あれはきれいだったな…
と思い出した時何億もの星たちがカロの頭上に広がった。
魔法をかけるときのステッキからでる星くずのように。
そこはいつの間にか闇ではなくなっていた。
そして黄色く浮かぶ三日月にムーンが座る。
「どうだい?闇は」
『怖かった…』
「君の目でみるものはありのままをうつすけれど、形には見えないものも君が信じれば、見えてくるものだよ。疑うことは簡単でいつだってできるんだ。信じることは見えないものだから怖くて不安でしかたないよね?。君が強く信じるほどに絆が生まれるんだ。それが愛するものであればあるほどに深さを増す。」
『絆…』
「僕はね可能性はゼロではないし答えも一つではないと思っている。もしも失敗があったとしてもいつだってそこから始められるし…他にもうまくいく方法も見いだせるんだと。
それは歩く速さもちがうしつまづく石もあるかもしれない。僕は可能性は無限大だと信じるよ。君は太陽に向かわなきゃだめだ。生きる意味を知るために。そして愛してやまない大切な人と。」
月の上からくぐる指輪。そしてもうひとつあとからかけた指輪。チャリンと音がした。
目の前にはドアが見えた。
ムーンは手をさしのべた。
「カロ…これから先君を全て受けいれ君の信じるずっと一緒に歩んでくれる君の愛すべき人がこのドアの向こうにいるよ。どうか信じて勇気だして開けて。そして必ず奇跡を信じることを忘れないで。今があるから未来があるんだ…。さぁもう僕は朝がくるまえに帰るよ。朝日に包まれながら君たちをみおくりながらね」
カロがノブをつかんで開けた。
目を開けたら愛するあの人がカロの身体を抱きしめていた。温かい腕、胸、全てが愛おしい人だった。
そして何よりいいたかった言葉があった。
『あなたを愛しています。』
『ごめんね…あなたじゃなきゃ…駄目 ……………』
『誰より深く愛してるから…』次の言葉はあなたに包み込んでほしい…。
… 終…