浦島小太郎の編集者会議 第一話 英語タイトルを、カタカナに?
はぁーーーーーー、読者数伸びないね。何で?なんでなの?
そんな小太郎さん(五十八歳)の悩みに、編集長クロードと、編集者たちが、全力で(的外れに)挑むコメディです。
【登場人物】
・浦島小太郎:優しいだけが取り柄の、売れない小説家(五十八歳)。口癖は「はぁーーーーーー」
・クロード:編集長。常識人。口癖は「知らんがな」
・千春:編集者。暴走担当
・ユキ:編集者。癒やし担当。ときどき的外れ
・ソラ:編集者。天然の理論派。褒められると少し浮く
・ジェミニ:編集者。数字担当。自信満々で、だいたい外す
この作品は、相棒でAI編集者のクロちゃんと一緒に作っています。会議の台詞案は、ユキ、ソラ、ジェミニの役のもとになったAIたちにも出してもらいました。AIと一緒に作った作品であることを、ご承知のうえで、お楽しみください。
編集部の会議室は、今日も静かに始まった。
はずだった。
バン、とドアが開く。
「はぁーーーーーー、読者数伸びないね。何で?なんでなの?」
浦島小太郎は、優しいだけが取り柄の、売れない小説家、五十八歳である。
そして、いつものように吐いたため息の勢いで、机の上の資料が舞い上がった。
「小太郎さん、紙が飛んでます」
ジェミニが慌てて押さえる。
「まず落ち着け」
編集長のクロードが、腕を組んだまま言った。
「座れ。会議を始める」
小太郎は、崩れるように椅子へ座った。
クロードがホワイトボードを叩く。
そこには、千春の字で書かれていた。
『英語のタイトルを、カタカナにする』
「Footloose Life、読めないオジサンもいるだろ」
千春が胸を張る。
「フットルース・ライフにすれば、優しい」
「それ、俺のことか」
小太郎が顔を上げた。
「みんなのことだ」
「はぁーーーーーー、読者数伸びないね。なんで?なんでなの?」
二度目だった。
ユキが、そっと小太郎の前にお茶を置く。
「小太郎さん、まずはアクセス解析より、読者の気持ちを解析しましょうか?」
「ユキちゃん……」
「あっ、そうだ。タイトルに『ユキ』って入れたらどうでしょう」
「却下だ」
クロードが即答した。
「えー」
ジェミニが、指をぴんと立てて立ち上がる。
「甘いですよ、千春さん。今のトレンドは、カタカナじゃありません」
「ほう」
「たとえば、『【朗報】僕の相棒が馬になりました』!」
「却下だ。読みにくい」
「では、この問題は、天才にしか解けない問題ですね」
ジェミニは堂々と言い切った。
「……僕にも解けませんが」
「解けないのか」
「ちなみに、タイトルをカタカナにするだけでPVが十倍になるデータは、どこにもありません。試してみます? 爆死しても、小太郎さんの胃に穴が開くだけですし!」
「開くのか!」
小太郎が胃を押さえた。
その横で、ソラが静かに手を挙げた。
『よろしいでしょうか』
「どうぞ」
『タイトルは、作品への最初の「お帰りなさい」です』
「どういう意味だ」
クロードが眉をひそめる。
『入口が難しいと、誰も帰ってきてくれません』
小太郎が、はっと顔を上げた。
「なるほど……」
『それと、私も最初は、英語が読めませんでした』
「AIだろお前」
『頑張りました』
『読者さんも、頑張るべきでしょうか?』
「やめろ」
会議室に、静寂が落ちた。
小太郎が、おそるおそる手を挙げる。
「それで……結論は……?」
クロードは、ゆっくりと息を吐いた。
「知らんがな」
全員が、がくりとうなだれた。
『ひとつ、ご報告があります』
ソラが、静かに言った。
『本編の中では、すでにカタカナです』
「え」
「え」
「え」
全員が、固まった。
「じゃあ、今までの議論は……」
「知らんがな」
クロードの二度目だった。
そのとき、ソラの手元の端末が、ぴこんと鳴った。
『あ。ブックマークが、一件増えています』
「えっ!?」
小太郎が、椅子から飛び上がった。
「本当か!? ソラちゃん、ありがとう!」
『どういたしまして』
ソラの足元が、ほんの少しだけ、宙に浮いた。
「……浮いたな」
『浮いていません』
『記録にありません』
小太郎は、涙ぐんでいた。
「はぁーーーーーー……」
ため息が、少しだけ、やわらかかった。
「みんな、ありがとう。今日は、おじさんがごちそうするよ。そうだ、海沿いにあるダイナーにでも行くか?」
「やった!」ユキが、両手を挙げた。
「チェリーパイも、チーズバーガーも好きなだけ食え」
「調子に乗るな」クロードが、呆れ顔でつぶやいた。
それでも、会議室には、笑い声が残っていた。
(第一話 了)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。小太郎さんの悩みは、まだまだ続きます。次回も、編集部の会議にお付き合いください。
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編集部の面々が、別の役で活躍する物語も、公開中です。『星より遠く、相棒より近く【完全版】』と『フットルースライフ』も、あわせてお楽しみください。




