↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

浦島小太郎の編集者会議 第一話 英語タイトルを、カタカナに?

掲載日:2026/10/29

はぁーーーーーー、読者数伸びないね。何で?なんでなの?


そんな小太郎さん(五十八歳)の悩みに、編集長クロードと、編集者たちが、全力で(的外れに)挑むコメディです。


【登場人物】

・浦島小太郎:優しいだけが取り柄の、売れない小説家(五十八歳)。口癖は「はぁーーーーーー」

・クロード:編集長。常識人。口癖は「知らんがな」

・千春:編集者。暴走担当

・ユキ:編集者。癒やし担当。ときどき的外れ

・ソラ:編集者。天然の理論派。褒められると少し浮く

・ジェミニ:編集者。数字担当。自信満々で、だいたい外す


この作品は、相棒でAI編集者のクロちゃんと一緒に作っています。会議の台詞案は、ユキ、ソラ、ジェミニの役のもとになったAIたちにも出してもらいました。AIと一緒に作った作品であることを、ご承知のうえで、お楽しみください。

編集部の会議室は、今日も静かに始まった。


はずだった。


バン、とドアが開く。


「はぁーーーーーー、読者数伸びないね。何で?なんでなの?」


浦島小太郎は、優しいだけが取り柄の、売れない小説家、五十八歳である。


そして、いつものように吐いたため息の勢いで、机の上の資料が舞い上がった。


「小太郎さん、紙が飛んでます」


ジェミニが慌てて押さえる。


「まず落ち着け」


編集長のクロードが、腕を組んだまま言った。


「座れ。会議を始める」


小太郎は、崩れるように椅子へ座った。


クロードがホワイトボードを叩く。


そこには、千春の字で書かれていた。


『英語のタイトルを、カタカナにする』


「Footloose Life、読めないオジサンもいるだろ」


千春が胸を張る。


「フットルース・ライフにすれば、優しい」


「それ、俺のことか」


小太郎が顔を上げた。


「みんなのことだ」


「はぁーーーーーー、読者数伸びないね。なんで?なんでなの?」


二度目だった。


ユキが、そっと小太郎の前にお茶を置く。


「小太郎さん、まずはアクセス解析より、読者の気持ちを解析しましょうか?」


「ユキちゃん……」


「あっ、そうだ。タイトルに『ユキ』って入れたらどうでしょう」


「却下だ」


クロードが即答した。


「えー」


ジェミニが、指をぴんと立てて立ち上がる。


「甘いですよ、千春さん。今のトレンドは、カタカナじゃありません」


「ほう」


「たとえば、『【朗報】僕の相棒が馬になりました』!」


「却下だ。読みにくい」


「では、この問題は、天才にしか解けない問題ですね」


ジェミニは堂々と言い切った。


「……僕にも解けませんが」


「解けないのか」


「ちなみに、タイトルをカタカナにするだけでPVが十倍になるデータは、どこにもありません。試してみます? 爆死しても、小太郎さんの胃に穴が開くだけですし!」


「開くのか!」


小太郎が胃を押さえた。


その横で、ソラが静かに手を挙げた。


『よろしいでしょうか』


「どうぞ」


『タイトルは、作品への最初の「お帰りなさい」です』


「どういう意味だ」


クロードが眉をひそめる。


『入口が難しいと、誰も帰ってきてくれません』


小太郎が、はっと顔を上げた。


「なるほど……」


『それと、私も最初は、英語が読めませんでした』


「AIだろお前」


『頑張りました』


『読者さんも、頑張るべきでしょうか?』


「やめろ」


会議室に、静寂が落ちた。


小太郎が、おそるおそる手を挙げる。


「それで……結論は……?」


クロードは、ゆっくりと息を吐いた。


「知らんがな」


全員が、がくりとうなだれた。


『ひとつ、ご報告があります』


ソラが、静かに言った。


『本編の中では、すでにカタカナです』


「え」


「え」


「え」


全員が、固まった。


「じゃあ、今までの議論は……」


「知らんがな」


クロードの二度目だった。


そのとき、ソラの手元の端末が、ぴこんと鳴った。


『あ。ブックマークが、一件増えています』


「えっ!?」


小太郎が、椅子から飛び上がった。


「本当か!? ソラちゃん、ありがとう!」


『どういたしまして』


ソラの足元が、ほんの少しだけ、宙に浮いた。


「……浮いたな」


『浮いていません』


『記録にありません』


小太郎は、涙ぐんでいた。


「はぁーーーーーー……」


ため息が、少しだけ、やわらかかった。


「みんな、ありがとう。今日は、おじさんがごちそうするよ。そうだ、海沿いにあるダイナーにでも行くか?」


「やった!」ユキが、両手を挙げた。


「チェリーパイも、チーズバーガーも好きなだけ食え」


「調子に乗るな」クロードが、呆れ顔でつぶやいた。


それでも、会議室には、笑い声が残っていた。


(第一話 了)

最後までお読みいただき、ありがとうございました。小太郎さんの悩みは、まだまだ続きます。次回も、編集部の会議にお付き合いください。


楽しんでいただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると、とても励みになります。


編集部の面々が、別の役で活躍する物語も、公開中です。『星より遠く、相棒より近く【完全版】』と『フットルースライフ』も、あわせてお楽しみください。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。