連鎖反応的婚約破棄
「クラウディア、君との婚約は破棄する」
断罪イベントきたー! モブ令嬢の私は歓喜した。
王立学園の卒業パーティー会場。
生徒の父兄、国王ご夫妻をはじめ、国の重鎮や他国の招待客が並ぶ中、王太子であるアラン様が、婚約者であるクラウディア公爵令嬢に宣言した。
「理由をお聞きしても?」
クラウディア様が静かに尋ねる。
「王太子妃教育をさぼったからだ」
「たしかにそうですね。婚約破棄を受け入れます」
え? そんな簡単に了承しちゃっていいの?
周囲の人間がざわつくなか、アラン様は宣言を続ける。
「そして私はリンダ伯爵令嬢と新たに婚約する」
え!?
リンダって誰?
ここは聖女マリーベルの名を出すところだよね?
と混乱する中、リンダ様が進み出た。
「しかし、わたくしはロレンス様の婚約者でございますので、ロレンス様との婚約を解消しなければなりません」
え! ロレンス様って、宰相のご子息では??
そんな人の婚約者に横恋慕したってこと?
さらに会場が混乱する中、ロレンス様が進み出る。
「婚約解消を受け入れます。そして私は新たにアンヌ侯爵令嬢と婚約を結びたいと思います」
え!?
アンヌ「しかしわたくしはラスター第二王子と婚約しておりますので、ラスター様との婚約はなかったことに」
ええ!?
ラスター「婚約解消を受け入れます、代わりにシャーロッテ公爵令嬢と婚約を」
シャーロッテ「ではわたくしはチャールズ様と婚約しておりますので解消させていただきます」
チャールズ「受け入れます。では私は聖女マリーベルと婚約を結びたいです」
聖女がここで? なんかすごい勢いで婚約者が入れ替わってるけど、婚約者のいなかった聖女がここに加わったということは、女性が一人余ることになるのでは…。 余ってるクラウディア様は…?
と思ってクラウディア様を見ると、どこぞの紳士がつかつかと歩み寄ってきた。
「私はたまたま招待された隣国の王太子だが、ぜひクラウディア嬢と婚約させていただきたい」
「謹んでお受けいたします」
わあ。きれいにまとまった!
いやいやちょっと待って! この人、たしか、クラウディア様が追放された後に知り合う隣国王太子では?!
いきなり告白でいきなり了承なの? なにそれ?
唖然としていた国王陛下がおずおずと
「あの…みんな、それでいいの?」
と聞くと
「はい!」
と全員がにっこりしたので、
「そ、そう…ならいいか…えーと…おめでとう」
と言ったのを皮切りに、その場にいた全員が混乱しながらも
「お…おめでとうございます」
と拍手をしだし、祝福ムードになった。
なんなのこれ。
せっかく前世の記憶を持ったまま、乙女ゲームの世界に転生したのに、なんかゲームと全然違うんですけど???
どういうこと???
ここは、ゲームと似てるけど、違う世界だったってこと?
◇◇◇
モブに転生した私は知らなかったが、この世界は転生者だらけだった。
王太子はじめ、第二王子も公爵令息も宰相の息子も騎士団長の息子も、留学してた隣国の第二王子も、それぞれの婚約者も、途中転入した聖女も、隣国王太子も、すべて転生者だった。
入学してすぐに、クラウディアが唐揚げを作って王太子に食べさせようと中庭で広げたら、「からあげ!!!」と歓喜した人間が数名いたので、「これはもしや」と思って、ゲームに登場する攻略キャラや婚約者にトンカツやツナマヨおにぎりを見せることで、転生者をあぶり出した。
その結果、登場キャラクターが全員転生者と判明したのである。
そして転生者同士、ゲームや日本の話で盛り上がり、みんな仲良くなった。
そのうえで、婚約相手はどうするか、自分の希望と推しカプについて、話し合いとくじびきが行われ、今回の組み合わせになったのである。
組み合わせが決まったものの、内々で済ませるのは嫌だった。
せっかく転生したのだから、断罪イベントはやってみたい。
でも断罪が重すぎたら、クラウディアの未来が暗くなるので、ちょうどいい罪はないだろうかってことで「教育をさぼった」にした。
教育されてないなら、王族の秘密も知らず、自由になれるから。
そんなこんなで、婚約解消を連鎖させて婚約相手を再編したのであった。
◇◇◇
という内幕を、私は数年後に知った。
納豆を求めてお店を回ったら「日本人会支部」にスカウトされ、日本人会の会員になれたから、教えてもらえたのだ。
大勢いる転生者が次から次へと前世の知識を持ちだしてくる上に、国の中枢も仲良し転生仲間なので、国は栄え、人々は喜び、平和な時代が続くのであった。めでたしめでたし。
話し合いで「王太子妃、めんどくさそうだから絶対嫌」
「王太子も嫌だよ!断罪イベントで廃嫡して第二王子が王になってよ」
「俺だってやだよ! 王太子に生まれたんだからあきらめろ」
「クラウディアが追放されてから会う隣国の王太子も、転生者かどうか
調べないとね」「聖女が隣国の王太子と結ばれるパターンも好き」
みたいな会話を考えたけども、いらないかなあと思って抜きました。




