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プロローグ「ホイッスルは突然に」

 首都圏から遠く離れた東北の田舎町の県立高校に通っている僕はごくごく平凡な高校生活を送っていた。

 何を持って平凡とするのは定義は難しいが仲の良い友達、普通の成績、帰宅部、そして彼女はおろか女友達すらいない。

 僕のような高校生は結構多いと思う。つまり普通と言うことだ。

 別段、特筆するような奇想天外な事など起きる由もなく毎日が同じ事の繰り返しの日々をただただ消化するだけ。だが、僕はそんな毎日が嫌では無かった。

 しかしながら、そんな平穏無事な毎日に異議を申し立てる奴が存在した。

 そいつ――――受験の時からの付き合いで特徴といえばエロ。存在そのものがエロとしか言いようのない浅岡学あさおかまなぶは古臭いサッカー雑誌とパソコンでプリントアウトした何かの用紙を僕の机に叩き付け言った。

「フットサルやろうぜ!」

 僕は雑誌と用紙と浅岡の顔を順番に見て、一言、言う。

「いきなりどうした? エロを考えすぎてついに頭でもおかしくなったか」

「っふ。俺は気付いっちまったのさ、彼女もいなければ部活に汗を流す訳でもない青春の愚かさに。そしてお前の正体に!」

 浅岡は雑誌のとあるページを開くと僕に見せ付けてきた。

 それは将来を有望された一人の男子中学生が率いる中学校が全国大会で優勝した時の記事だった。

 一人、インタビューを受ける中学生の僕が写真に映っている。

「水くさいぞ松村、お前がこんな凄い奴だったなんてもっと早くに教えろよ」

 昨日、サクセスストーリーのドラマか映画でもテレビでやっていたかな?

 こいつがこういう事を言い出すのは決まって外部テレビから影響を受けた時だけだ。

 テレビでマジックをやれば一心不乱に手品を勉強し、学園恋愛物をやれば片っ端から女子に告白して前人未到の三十人に連続で振られると言う(一日で)偉業を成し遂げ、男がシンクロナイズドスイミングをやる青春ストーリーの映画が公開された去年の学園祭では競泳用水着一丁で校舎内を走り倒した挙句、二階からプールに飛び込むと言う訳の分からない行動で校長室にまで連行されたある意味で有名人。それが浅岡学と言うアホだ。

「さぁ! 俺と一緒にフットサル大会で栄冠を掴もう。そして一生輝く高校生活の思い出にするんだ!」

 アホくさい、やってられない。めんどうでだるくてやる意味がない。きっぱり断ってやるのが友情だ。

「浅岡、悪いことは言わないが――――」

「フットサル大会? アンタ達が出るの?」

 近くの席で小説を呼んでいたクラスメイトの女子にして端正な容姿もさることながらクールなことでも知られている為、学年でも中々の人気を誇る小早川由紀奈が関心したように尋ねてきた。

 女子と会話したのが数ヶ月前の「進路のプリント出して」が最後の僕からすれば高嶺の花過ぎて在学中は話す事なんかないだろうとタカを括っていた女子でもある。

「思い出の一ページはここから始まる!」

「おまえ、人の話聞いてねぇだろ。それに、俺はやるなんて一言も……」

 由紀奈は僕の机に乗っている用紙をひょいっと取り上げてじっくりとそれを読んでいたが、突然、僕の机に用紙を叩き付けて嬉々とした声を上げる。

「あたしもやるわっ!」

 用紙が可哀相だな等と考えていた僕は驚き顔を上げ由紀奈を見た。

 その時の由紀奈の顔は滅多に見られないほどの眩しい笑顔だった。

「中学でも高校でも女子サッカー部がなくて諦めかけてたけど、チャンスってどこに転がっているのか分からないものね!」

 快く迎える浅岡を見ながら僕は雑誌の僕を見下ろす。

 将来の夢はサッカー選手と得意げに語ってる僕がいた。

 現金なものだけど、可愛い女の子が一緒にやるってだけでもう一度サッカーをやってもいいかな何て思っている自分が居た。

 だけどしょうがないだろ? 小早川由紀奈は本当に可愛らしい女の子だったのだから。そんな子と青春の思い出を築けると血迷った僕を責められる人間なんかいないはずだ。

 そんなこんなで僕と浅岡と由紀奈の奇妙な友情(?)のサッカー生活は始まりを告げた。

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