第35話 「とりあえず……」
一日、ゆっくり休んでようやく動けるほど回復することができた。回復するために、それは涙ぐましい努力(強制的なものだったが)をした。昨日一日食事と言えば、ほうれん草やらひじきやらレバーやら鉄分の多いものづくしで、大皿に山盛りのレバニラ炒めを出されたときには、食べる前から向こう三年はレバーを食べたくない気分になった。大量に血を失ったからと言う単純な思考からなのだろうが、それで何とかなってしまう自分の身体の出鱈目さにも呆れてしまう。民間療法万歳!
というわけで完全に回復したわけではないが、何日も学校を休むわけにはいかないと思ったので(テストが近いと言うこともあるが)、今日は学校に行くことにした。
久しぶりの外はいい天気で、澄んだ空気が僕の肺に滑り込んできた。体は重いが、気分は悪くない。僕は一つ、うーんと背伸びをした。のんびり通学路を歩いていると背後からリズム良く駆けてくる音がした。
「おっはよー!もう大丈夫なのかー!」
その声と同時に、僕の頭に衝撃が走った。どつかれるのが久しぶりであったからなんだか妙な気分になった。
「里桜か……何もかも皆懐かしい」
「何を某宇宙戦艦の船長みたいな事言ってるのよ!」
そう言うともう一発キツいのを頂戴した。いつもだったら、これぐらいの攻撃ではなんてこと無いのだが、貧血気味の状態でやられたため僕は、フラフラとよろめいてしまった。咄嗟に倒れないよう何かに掴もうと手をバタつかせると何かに当たったような気がした。僕はそれに必死に捕まろうとした。「ちょ、ちょっと!」しかし、その僕の捕まった何かも固定されたものではなかった。「きゃっ!」結局、そのまま僕は倒れてしまった。捕まったものと一緒に。
「いてて、何すんだよ里桜。こっちは病み上がりなんだ……ギョッ!」
あまりの事に自分でギョッと言ってしまった。
[リザルト]
掴んだものは里桜でした。
今、僕の下に居ます。押し倒しているみたいに見えます。
掴んだところは、制服の上着でした。そのせいで、制服のボタンが外れてしまって、ピンクの可愛い下着が見えちゃっていました。
さらに僕の右手は、里桜の胸を下着越しに鷲掴んでました。
スカートはナイスな感じで捲れていて、白い健康的な太ももが露わになって、これまたピンクの可愛い下着がチラリズムしています。
つまり、僕は死ぬでしょう。
ロミオVSジュリエット 完
ご愛読ありがとうございました!長谷流輔先生の次回作にご期待下さい。
って、こらこら!勝手に終わらすんじゃないよ!こんなエンドは一体誰得なんだよ!
「えーっと……」
この状況に里桜さん混乱中。
「ご、ごめん!決して、けっっっっっっっしてわざとじゃないんだよ?!」
泳ぐ僕の眼。
何かを理解した里桜さん。
通常の5倍は出ている僕の冷や汗。
羞恥のためか怒りのためかわからないが顔が赤くなってくる里桜さん。
「とりあえず……」
僕を見る目は煮えたぎるマグマのような目であった。南無三!
「そ こ を ど け ーっ !!!」
「ウボァー!!」
放たれた拳は廬山昇龍覇(※13)だった。強烈な小宇宙は僕の体を天高く舞わせ、そして頭からドシャッと落下させた。
「や……やっぱりこうなりますよね……」
ものすごい威力だった。こいつ絶対に第七感を目覚めさせただろ。
「わざとじゃないのはわかるけど……限度があるわよ」
恥ずかしそうにそう言いながら着衣の乱れをいそいそと直した。顔が耳まで真っ赤になっていた。
「不幸だ……」
某イマジンブレイカーさんのような台詞を吐いて、僕は気絶する事にした。と言うか、僕ホントに気絶多いよね……。
※13 廬山昇龍覇 漫画「聖闘人星矢」に登場する龍星座の紫龍の必殺技。完全燃焼させた小宇宙をこめ、主にアッパーで強力な拳を放つ。ちなみに私は彼によって「矛盾」という言葉を学ぶ事が出来た。