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第31話 「ああ、そういえば」

「とうとうこの時が来たのね」

 そう呟いた言葉はどこか意味深であった。こうなることがまるで運命であったかのように。

「雌雄を決するときがきたみたいだな」

「この場合、雌雄を決すると言っても貴方は雄で私が雌なのは揺るぎない事実ね」

「生物学的な事じゃない!」

「しかも人間をオスメスで例えるとエロい響きになるのはどうしてかしらね?」

「知るかそんなもん!」

「ああ、そういえば」

 抑揚をつけた何とも大げさな物言いだった。

「戦う前にひとつ条件があるわ」

「何だよ」

「門田家は、私たちの中でも最も能力が高い一族。申し訳ないけれど、私は武器を使わせてもらうわ。それでもいいかしら?」

「僕は一向に構わない。その方が後腐れ無いだろ?」

「ええ、そうね。でも私にもプライドがあるの。だから今回は銃器を使わない」

 そう言って、鞘からゆっくりと刀を抜いた。

 相変わらずの美しい刀身が鈍く輝いた。

 ユリアは切っ先を僕に向け、正眼の構えをとった。

 その何気ない構えからは、異常なまでの覇気が感じられた。

 ユリアの身体が何倍にも大きく見え、遠近感が狂っているような感覚に襲われた。

 その覇気に押されまいと僕も構えをとった。

 お互い向かい合ってジリジリと間合いを詰めていった。

 そして互いの制空権が触れ合いそうなところで動きが止まった。

 ここからは一歩間違えれば即、死に繋がるだろう。

 それはユリアも感じていたらしい。

 その状態からお互い動く事が出来なかった。

 どれだけ時間が経ったかわからなかったが、対峙しているだけで精神力を削られ摩耗していくのが感じられた。

 先に動いたのはユリアだった。

 気合いの掛け声とともに斬りかかってきた。

 リーチの差に利があるユリアが先に仕掛けてくるだろう事はある程度予想できた。

 間合いは一瞬のうちに無くなった。今までより格段に速い。

 斬撃は横一閃に放たれた。僕はそれを紙一重で躱した。

 勿論、ユリアはその攻撃だけで休まさせてはくれなかった。

 鎌イタチのように鋭く速い斬撃が次々に飛んでくる。そして僕が躱す度に、近くにあった椅子や机が真っ二つにされていった。しかし、刀の軌道を注視していれば何とか躱わせる速度であった。と言っても、本当にギリギリで躱せているだけなので、余裕など微塵も無い。その証拠に、僕の制服は、斬撃によりボロボロになっていた。場所によっては血が滲んでいるところもある。

 突然、僕の見えない方向から衝撃が走り、僕の身体が壁に叩きつけられた。

「がっ、がはっ!」

 背中に強い衝撃を受けたので息が止まりそうになり、僕はそのまま片膝を着いてしまった。僕の後ろでは壁がパラパラと崩れる音がした。ユリアは、僕を蹴り飛ばしたままの格好で、僕をキッと睨み付けた。

「甘いわ。刀だけが攻撃じゃないのよ?学習しないわね」

「そうだな…そうだったな……」

 制服姿でそのポーズは、女の子的にはどうなのかと思うが、今そんな事を言うのは無粋な事だろう。 僕は立ち上がり埃を払うと、再び身構えた。

「次は、こっちの番だ!」

 僕は一気に加速した。

 疾風のようなスピードでユリアとの間合いを詰めた。

「は、速いっ!?」

 ユリアは慌てて防御の体勢に入ろうとしていたが、隙だらけになっていた。

「くらえっ!」

 一撃目が鳩尾(みぞおち)にめり込む。

「うぐっ!!」

 ユリアの顔が苦痛に歪むのが見て取れた。

 僕はさらに追い打ちを掛けるべく肝臓(リバー)破壊(ブロー)を狙った。

「くっ!」

 その攻撃は辛うじて防御できたようだったが、威力までは殺せなかったようで、横に2mほど飛ばされた。なんとか踏ん張って転倒は免れたようだったが、最初の一撃が効いたようで、そのまま両膝が崩れてしまい、四つん這いになった。

「お前も僕を甘く見すぎていないか?」

「……そ、そうかも…げほっ…しれないわね。今…その考えを…修正するわ」

 息も絶え絶えにそう言った。そして、よろよろと立ち上がると、刀を鞘に収めてしまった。

「負けを認めるのか?」

「馬鹿…言わないでよ…!勝負は…これからに決まっているじゃない!」

 強がりかと思ったが、すぐにそうじゃないと分かった。ユリアの目はまだ死んでいなかったからだ。

「貴方の速さに対抗するならば、私にはこれしかないわ」

 そう言って、腰を低くし、斜めに構えた。これは光速の剣撃を放つための構え。そう、これは居合抜きの構えであった。


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