第27話 「大人しくしているわ」
そろそろ僕らの事を話さなければなるまい。
僕たち門田家と赤渡家は、常人とは違う能力を持っている。それはこの物語を読んでいれば、簡単に察しは付く事だろうと思う。
その特殊な能力は先祖代々受け継がれており、一族の血が薄くなればなるほどその能力は失われていく。だから能力者同士での婚姻が必須なのだ。過去には血を薄めないためにそれは涙ぐましく、えげつない事をやってきたと僕は聞いている。詳しい事は一族の恥となりそうなのであえて言わないでおく。
それで、僕らの持っている主な能力は2つある。一つは類い希な運動能力を有すること。もう一つは人並み外れた自然治癒力を持っていることである。付け加えるならばその2つの能力の他に個人が生まれ持った特性が付く。僕の場合は尋常じゃない治癒能力である。さっき言っていたのと何が違うかと言ったら、一族の場合なら常人の3~5倍の治癒力である。それでも異常であるが、僕の場合は、20倍くらいある。普通の人なら二十日入院しなきゃいけないところを僕は一日で退院すると考えれば解りやすいだろうか。そういう風に、色々と能力を持っている。多分ユリアも何かしらの能力は持っているはずである。
何故僕らがそんな能力を持っているのかは、残念ながら解らないらしい。あるものは神に選ばれたのだと言う人がいれば、突然変異で生まれたのだと言う人もいる。だから僕には何とも答える事が出来ない。
しかし何故長い年月の間、能力を維持し続けなければならなかったかというのはちゃんと意味がある。門田家と赤渡家は、代々天皇家に仕えていた。両家はある事件の時に裏で活躍した。その後右大将、左大将として活躍し、様々な朝敵と戦い打ち倒してきた。時代が進み、武家が政権を取っても朝廷を潰せなかったのは、主に両家の力にあると言われている。そう、僕らはただ単に親好が深いのではなく、同盟の関係でもあったのだ。
「100万の兵に300人居れば事足りたらしいわ」
「スパルタか!っていうかお前、僕のモノローグに割り込んでくるんじゃない!」
「うぃーあーすぱるたー!」
「……お願い、邪魔しないで……」
「涙目で訴えられたら仕方ないわね。大人しくしているわ」
コホン。それじゃ、気を取り直して。
掟とは、何か。
簡単な話、僕らが目立たないように暮らすための教訓であり、血族を絶やさないための知恵である。僕らの力の異常さは僕たちが一番よくわかっている。だから、普通に暮らそうと思うと色々と制約を受けるのは当然のことだと思っている。これらを守らなかったが為に、異能の力を持つ者として妖怪扱いされ非業の死を遂げた者や、一般の人間と結婚し血を薄めてしまい能力を失ってしまった血族も居る。例えば相備家はその類である。
そしてユリアが話していた千四百年続く戦いとは何か?
それは、皆さんもご存じの「大化の改新」である。歴史の教科書では645年にあった事件であるが、実はあの戦いは最近まで続いていたのだ。
おっといけない、この話は今は関係のない事だった。
この話はいずれの内に。
「ねぇ、私の出番がないのだけれども」
「今回は僕のモノローグ回だよ!こんな所にも登場するなんて一体何なんだよ!」
「私は貴方の許嫁だけれども何か?」
「いやそういうことでなくて……」
「な・に・か?」
「……ごめんなさい、僕が悪かったです」