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第25話 「もてる男は辛いねぇ」

 それから数日が経った。

 色々な男達(一部女子がいたが)がユリアに勝負を挑んだ。

 ある者は、柔道で。

 ある者は、空手で。

 ある者は、バーリトゥードで。

 しかし、ユリアがことごとく勝利を収めていった。

 そのことによって、ユリアがますます皆の注目を浴びる事となり、さらに以前本人が言っていた容姿端麗(生まれ持った美貌)、頭脳明晰(学年トップクラスの成績)、品性高潔(これだけは認めない。絶対にだ。)を実践しつつある。しかし、掟に反してこんな目立つ事をしても赤渡家からお咎めはないのだろうか?と疑問に思うのだが、何か意図があっての事なのだろうか。

 とにかくそのおかげかどうか知らないが、ユリアの僕に対する襲撃の回数が減ってきていたことは事実であった。

 それとあの日以来、巴先輩の嫌がらせも鳴りを潜めた。それについては全く理由がわからないのだけれど。嫌がらせが無くなったのはとても有り難い事なのだが、先輩が次の事を考えていそうで決して手放しでは喜べない。

 僕は先の席替えで教室の窓際、後ろから二列目というナイスな位置を勝ち取っており、暖かい日差しを受けながら、ボーッとしていた。窓から入ってくる風はとても気持ちがいい。春の風には絶対睡眠薬が含まれているだろと思いながら、大きな欠伸(あくび)をした。

「礼」

 里桜が話しかけてきた。僕は、うつらうつらしそうになっていたので「んあ?」と変な返事を返してしまった。里桜は僕のその様子を見てクスクス笑った。

「フフッ、最近なんだか平和みたいね」

 縁側で居眠りする猫を見るような目で話しかける。僕はもう一つ大きな欠伸をした。さっきより意識がよりはっきりしてきた。

「ああ、まぁそうなんだけど……」

「何か晴れない顔してるわね。何なら私が張ってあげようか?」

 そう言うとブンブンとビンタの素振りをした。

「それ僕がただ痛いだけじゃないか?」

「最近、礼をどついてないから、あたしの右腕(うわん)が疼くというか」

 そう言いながら、腕をグリングリンと回した。

「それなんて禁断症状!?」

「しかし、色々噂になってるわよ。礼とユリアさんのこととか」

「ええ、そうなんですよ。頭痛の種なんですよ。」

 僕はやれやれという風にかぶりを振った。

「ユリア特戦隊はかなり統制がとれているから意外と何もないんだけど、それよりもはぐれのユリアファンに襲われる方が(たち)が悪いよ」

「はぐれって?」

「一応ユリアファン倶楽部に所属しているが、特戦隊の規律に嫌気が差して離れていった連中さ。奴ら学校のどこに混じってるかわからないんだよ。ゲリラだよ、ゲリラ。はぐれのくせして経験値全然くれないし」

「ふーん大変ね。でもM属性の礼君は、(よろこ)びを感じるのでした」

「決して(えつ)になんか入ってない!」

「あっ、それと礼。ユリアさんと一緒にいるから最近やたら目立っちゃってるよ。だから門田礼ファン倶楽部が出来つつあるって聞いたわ」

「何ですとー!?」

「もてる男は辛いねぇ」

「……何か複雑な気分だ」

 思春期の健康的な男子ならば、そんな話を聞いたら手放しで喜ぶところだろうが、掟の事を考えるとやはり素直に喜べない。

「なんでもユリア様と一緒にいるからってだけで神聖化されてるみたいよ」

「さらに複雑な気分になった!」


 その日の放課後、僕は帰ろうと下駄箱を開けると中に手紙が置いてあった。さっきの里桜との会話を思い出し、もしかしてあの話は本当の事なのかと思った。

 その手紙は、白い封筒に赤いハートのシールという昔ながらのラヴレタースタイル。嫌いじゃないぜこういうの。もしかして相備いずみからだったらどうしようなどとアリもしない事に妄想を膨らませるのだが現実は甘くないというのが世の常である。

 宛名は書いてなかったが、こういうのって開けるのすごくドキドキする。慎重に可愛らしい封筒を開け、そっと中身を取り出した。取り出したときにお香の香りが漂ってきて、平安時代かと若干ツッコミを入れつつ手紙を読んでみた。



門田礼様


 貴方に話があります。


 学校終わったら久家公園に来て。



 それはそれは可愛らしい文字であるが整然としており、文章はシンプルに書いてあった。そのシンプルさ加減が逆に色々な想像を掻き立てるようで、いてもたってもいられなくなった。こちらも宛名を探してみたがやはり書いてなかった。でも相手が誰であろうと、勇気を出してこの手紙を出したはずだから行かないわけにはいかない。

 そう思いながらも、顔がにやけてしまいそうなのを堪えながら学校を後にした。

 だってこういう事初めてなんだもん。



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