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第21話 「またあたしのせいなのかな?」

 ナゾの人物に尾行される事件から数日が経った。

 ここで最近の僕の日課をお教えしよう。



 1,学校に行く。

 2,部活に行く。

 3,赤渡ユリアの襲撃を受ける。

 4,(It’s New!)巴先輩にストーキングされる。



 おわかりいただけただろうか?

 数字の「4」は「死」を意味し、その下に鬱る、もとい写る「巴先輩」という単語。そして踊る「ストーキング」の文字。

 実に不愉快である。

 とは言っても、里桜の言うとおり何もしてこない。ただジッとこちらを見つめているだけであった。あまりに気になったので何度か追いかけようとしたが、その度に忽然と消えてしまって捕まらないという憂き目にあった。対話すら許されないので解決しようにも出来ないもどかしさもあり、実に不愉快であった。

 しかし、いいこともあった。

 巴先輩がストーキングをしているときは、赤渡ユリアは攻撃してこなかったのだ。ユリアも掟のことがあるからか、律儀に二人だけの時にしか襲ってこないようなのだ。しかし、これも物は言い様というもので、ユリアと二人きりで会っている様子を見られているということでもあり、このことが後々不幸を呼び込んでくるとは思っても見なかった。(いや、多少は思ってました。はい。)

 それはさらに数日経ってからの事だった。

 ここ最近、妙に教室に居づらい雰囲気になってきた。「怨」のパワーを教室のあちこちに感じるというか。このパワーは里桜の件での比ではなかった。それは日増しに増えていって、破裂するのに時間を要することはなかった。

「こんな雰囲気、中学の時もあったよね」

 里桜が聞いてくる。「またあたしのせいなのかな?」

「いや、違う。この嫌な雰囲気は別に里桜と一緒に居るときだけじゃないからな」

「じゃあ何で?」

「うーん、何となく見当は付いているんだが……」

 その時だった。

「門田!お前っ!」

 突然、僕を呼ぶ声が教室に響いた。その声は明らかに怒りが含まれていた。クラスメイトの一人がずかずかとこちらにやってきたかと思うと、ガバッと僕の胸倉を掴んできた。あまりの事にきょとんとしているとさらに言葉を重ねてきた。

「お前のせいで……不愉快なんだよ!」

 そう言って、さらに胸倉を締め上げられた。

「ちょ、ちょっと!何やってるのよ!」

「里桜、大丈夫だから」

 僕は冷静に里桜を(なだ)めてから、そして胸ぐらを掴んでいる彼を刺激しないよう言った。

「僕にはわからないんだよ……最近の教室内での嫌な感じが。よかったら教えてくれないか?」

 僕がそう言うと彼も少し落ち着いたのか、手を離してくれた。そして「これを見ろ」と、一枚の紙を出してきた。それにはこんな事が書いてあった。



  ぼくのおきにいり

  ぼくは、たぬきのきゃんたまがすきです。

  きのう、おかあさんと、たぬきゃん(たぬきのきゃんたまのりゃくです)をみにいきまいた。

  うれしかったです。


  かどたれいより



 その文章にはクレヨンで非常に見るに堪えないタヌキらしきものが描かれていた。小学生の絵日記のようだったが、所謂(いわゆる)ゴールデンなボールが大げさに強調されており、無性に腹の立つ描写であった。これは非常に不愉快。

「お前が書いたんじゃないのはわかるんだ……わかるんだが、こんなものを毎日貰ってみろ。不愉快極まりないぞ!」

 そういうと、クラスの至る所から「そうだ!そうだ!」「俺も来てるんだ!」という声が挙がった。僕はそれにビックリしてしまった。なんだか最近肩身が狭い思いをしていたのは仕方のない事だったのかもしれない。しかし、これをクラスの多数に毎日出しているその途方もない無駄な努力に、不本意ながら敬意を感じてしまった。

 とにかくこれは誰がやったかはもう見当がついていることだろう。

 そう、巴先輩だ。

 こんなしょうもない事をするのは彼ぐらいしかいない。このまま奴を放置しているとクラス中から意味不明な怨みを買うことになってしまう。いや、もうすでに買っている。怨みの押し売りで大損害間違いなしだ。こうなると僕はこれ以上の被害を出さないようすぐに決断しなければならない。

「潮、ちょっと力を貸して欲しい」

「お安いご用ですよ」

 何でも屋の潮はこういうときに頼もしい。


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