第20話 「そのときは刺し違えるまでよ」
「こ、これは!」
そのとき、ユリアに電流走る!
「パテからあふれる肉汁はジューシーで、そこにシャキシャキのレタスと芳醇な甘さを讃えたトマト、濃厚な自家製ケチャップが溶け合い見事なハーモニーを造り出している!なんというハンバーガーだ!」
「まるでコピペしたような言い方だな」
「コピペよ。手抜きもいいところだわ」
「ちょ、おまっ、そんな事言うと作者に殺されるぞ!」
「そのときは刺し違えるまでよ」
なんかいつも過激な事言っちゃってますが、ついにその矛先が作者にまで向いてきちゃったみたいですね。同情します。(※8)
「ところで、マック斉藤さんとはどう知り合ったの?」
「私が幼い頃に色々あって。詳しい事は作者がそのうち番外編でも作るんじゃない?」
「人任せかよ!」
……同情します。(※9)
「またいらしてください。マックはいつでもお嬢様をお待ちしています!」
「ええ、貴方も新しい屋敷に遊びに来てね」
そう言って、店を離れた。マック斉藤さん(虫が苦手)は、忙しい店をほったらかしにしてまで、僕たちが見えなくなるまで見送ってくれた。それほどの再開だったのだろう。
「礼、貴方に借りが出来てしまったわ。そのうち返すから首を洗って待ってなさい」
いや、それはそう言うときに使う言葉じゃないですよ、ユリアさん。
それから、しばらく歩こうという事になり、渋々それについて行った。
ユリアの足取りはどこか軽かった。
いつものクールな表情ではなく、笑顔。
その様子を見ているとこちらもなんだか嬉しくなってきた。
そして、その姿を純粋に美しいなと思った。
澄んだ空を夕日が空を朱色に染め上げ、風になびく髪をキラキラと輝かせ、光が作る陰影がユリアをさらに神秘的に彩った。
絵画のように今の場面を切り取って取っておきたい気分になった。
こんな気持ちになるのは初めてだった。
そのとき、ユリアの顔が険しいものに変わった。僕も何かを感じ取って警戒した。
「誰かずっと着けてるわね」
「僕も何となくそう思っていたよ。いつからだろう?」
しかし、周りを見てもそれらしい人影は見あたらない。
ユリアはキョロキョロと辺りを見渡した。すると何かを見つけたようにハッとしたと思ったら、すかさず「そこっ!」と何かを投げた。投げた方向の壁を見るとお馴染みのダガーナイフを発見。
「ええぇぇえ!?ちょ、ちょっと!そんなもの一般の人に投げない!当たっちゃったらどうすんだよ!」
平気で刃物を投げるユリアに焦る僕に対し、ユリアは至ってクールに言った。
「私、投げナイフは得意じゃないのよ」
「いや!そう意味でなくて!」
そのとき、全く別の所から人影が。
「あのぅ、ユリアさん?」
「……私もたまには間違えるわ」
いつもクールなユリアが少し恥ずかしそうにしていた。河童の川流れですか。
「誰が河童ですって!?」
「だから、首絞めないで!そして地の文を読まないで!」
そんなアホなやりとりをしていたせいで、人影はすでに遠くまで逃げてしまっていた。
姿を見せたのは一瞬だったが、僕はちゃんとその姿を確認していた。僕たちを着けていた人物が誰だったかを……。
※8 いえいえ、門田君もいつも大変ですね。負けないように頑張ってね。
※9 作らなきゃダメですかね?やっぱり……ちょ、ちょっと刃物をこちらに向けないでください!ユリアさん!