第1話 プロローグ
相備いずみはいつ見ても美しかった。
僕が彼女に惚れているという特殊効果を除いても、やはり美しいと言わざるを得ない。
腰まで伸びる黒髪は艶やかで絹のように繊細。肌は白く瑞々しく、きっと撥水効果は抜群であろう。
着物を着せたらよく似合うであろうスレンダーな体つきは、美しい黒髪と相まって、きっと最高の美を称えることだろう。
そして彼女は、華やかで高貴なオーラを身に纏いつつも、皆に分け隔てなく接する態度を持ち、その仕草は流麗かつ慈しい。
それでいて少し影のある感じも持っているという、これはもはや完璧と言うしかない。
彼女とは中学から一緒だった。と言ってもクラスが同じになったことは一度もない。それがまた、恋心を募らせるわけだけれども。
彼女を最初に見たのは中学の入学式の時だった。
美しい彼女の姿を見た瞬間に僕は恋に落ちた。それはもう奈落まで。
それからというもの折りに付けては、彼女のことを想い、遠くから彼女を眺め、授業中も想いに耽りボーッとすることもしょっちゅうだった。
彼女はずっと僕にとって憧れだった。
三年間想いを密かに持ちつつも、遠い存在である彼女にもちろん告白など出来なかったが、彼女がこの高校に進学すると知り、追うように入学を希望した。
はっきり言って、この高校に入った目的は彼女だけで、特に将来どうしたいというビジョンもなしに試験を受け、そして受かってしまった。
僕にとって、彼女を見続けられる事が最優先事項であって、他のことは二の次の事であった。
この物語はそんな普通の高校生の話である……多分。