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第18話 「誰がヴァンパイアですって?」

「赤度ユリア様のためなら命を賭して戦う集団ですよ」

 そう潮が答えた。

 情報がほしければ彼に聞けばいい。大概のことは知っている。ただし、ただとは言わない。常日頃から「情報は金だ」と言っているのだから。

「今日の学食よろしくお願いしますね」

「へいへい」

 潮に、ユリア特戦隊のこと知らないかと尋ねてみたら、知っているということで、昼食と引き換えにということだったので、奢ることにしたという大体の流れが見えるだろうか。

「彼らは、昨日赤渡さんを見かけて衝撃を受け、フラフラと歩いている内に同士と行き会って、意気投合し結成されたらしいです」

「なんて自然発生的なんだ!」

「すごいですよね。たった一目で魅了し、虜にしてしまうんですからね」

「案外、ヴァンパイアの家系だったりしてな」

「誰がヴァンパイアですって?」

 背筋が凍る思いと言うのはこういう事だろうか。僕は次の瞬間に起こるだろう惨劇を予測しながらゆっくり振り向いた。

「なんちゃってー!」

 そこには死に神ではなく、里桜がいたのだ。

「なんだよー!ビックリしたじゃないか!声が似てたからホントに怖かったよ!」

「てへへっ」

 里桜は舌を出して笑った。

「てへへじゃない!」

 潮の方を見ると笑いを堪えるようにしていた。

「くはー!おもしろかった。君の顔は傑作だったよ。相当彼女に恐怖を刷り込まれているようだねえ」

「イヤだー!そんな自分がイヤだー!」

「君は何度も殺されかけているんだ、仕方ないかもしれないな。」と、潮はシニカルに笑った。

「でも、礼は今まで一回も反撃したことはないんでしょ?」

「そうだけど、女性相手にそんなことできないよ」

「一回反撃してみたら?ああいう女性って、強引に行けば案外コロッといってしまうかもよ」

「僕は、相備いずみ一直線なのでコロッとされても困ります」

「?」

 里桜が何かに気付いて僕の後ろに視線を移していた。

「あの人なんだかこちらをずっと見てる気がするんだけど」

 そう言われて振り返ってみると、確かにこちらをじっと見ている背の高い男がいた。しかし、どうにも見覚えがない。

「僕に用があるのかな?潮、あの人知ってるか?」

「知っているかもしれませんが、何故か思い出せないんですよね。こう、なんかあると思い出せそうな……」

 僕は、無言で潮の手に百円玉を握らせた。

「あー、思い出しましたー」

「あいかわらず、現金な奴だな」

「あの人は二年の(ともえ)里笥(さとし)先輩ですね。確か、卓球部に所属しています」

「異様に背が高いのにか?」

「巴先輩って、あの巴先輩?」

 里桜が、そう聞いてきた。

「知っているのか、雷電…もとい、里桜」(※6)

「巴先輩は、色々と伝説のある人なの……」

「影の番長とかそう言うのか?」

「違うわ……なんていうか……不愉快なのよ」

「は?」

「とにかく不愉快な人なの」

「何かするのか?」

「別に他人に対して悪事を働くとかはしないんだけど。むしろ平和な生き物ね」

「だったらなんなんだよ」

「こうとは言えないんだけど、存在することが間違っているみたいな」

「すごい言われようだな」

「さらに、彼には仲間がいて、巴先輩とその取り巻きのことを『巴さんと不愉快な仲間達』と呼んでいるわ」

「なんだかそんな話を聞かされている僕の方も不愉快になってきたよ」

「とにかく気をつける事ね」

 何に気をつければいいんだと思いながら、再び巴先輩の方を見るとすでに彼の姿は消えていた。別に僕たちに用があったわけではなさそうだ。

 潮を見ると、妙に悔しそうな顔をしていた。訳を聞くと、里桜が巴先輩のことを話したせいで情報料が稼げなかったと言うのだ。

 こいつも不愉快な部類に入りそうな気がした。

 

※6 知っているのか、雷電

漢の漫画「魁!!男塾」に出てくる台詞。雷電は敵の技などの解説役。民明書房という幻の(嘘っぱちとも言う)出版社から発売された本から得た知識を披露する。その知識披露前の聞き役の決まり文句である。王大人ワン・ターレンの「死亡確認!」も有名。(あれ塾長は?)


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