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第12話 「何でも言うこと聞くから……」

 気がついたとき、僕は保健室のベッドの上にいた。

 ベッドでもぞもぞしていると、カーテンから顔が覗いた。

「気がついたか」

「あっ、瀬鳥(せどり)先生。何でここに?」

「ああ、今日保健の先生は出張で居なくて……代打で先生が来た」

「そうなんですか」

「具合はどうだ?」

「はい、今のところは大丈夫そうです」

「弁望から聞いた話だと、派手に階段から転げ落ちたそうだが……なんだか漫画みたいな理由だな」

「多分そう言うことです」と曖昧な返事をしておいた。今日は昨日と違って僕にも落ち度があったのだから里桜に話を合わせておくとしよう。

「多分ってなんだ。もしかして記憶が飛んでないか?」

「こういう事は良くあるので大丈夫ですよ。ところで今何時間目ですか?」

 あまり詮索されたくなかったので、無理矢理に話題を変えた。しかし、何気にすごいこと言っちゃった気がする。

「えーと、今は5時間目の半ばだな。」

「えっ!僕そんなに寝てたんですか?」

「おう、始めは気絶しているから起こそうとしたんだが……」

「なんで起こさなかったんですか?なんだかんだで2時間は経ってますよ」

「お前が途中からイビキをかき始めたんでな。イラッと来て放置しておいた」

 昨日からろくに寝てなかったからだろう。だからといって放置するな。

「ふぁ。この時間帯は眠くてかなわん。いいなぁ昼寝」

 恨めしそうなめでこちらを睨み付け、自分が居たところにもどり、仕事を始めようとした。そしてにっこり笑いながら言った。

「とりあえず、この時間が終わったら教室に戻りなさい」

 その笑顔に多少の恐怖を感じながら僕は無言で頷き、残りの時間も寝ることにした。

 瀬鳥先生は、身長が180センチ以上ある大男で、メガネを掛けている。一見理科か数学の先生のように見えるが実は音楽の先生である。そして僕の所属するオーケストラ部活の顧問でもある。先生は音楽室の隣の準備室に住んでいる。しかし、いつも準備室は賑やかであった。準備室は、先生がいい加減と言うか何事も気にしない性格である上に、ソファがあり、お茶なども飲め居心地が良いいので、生徒だけでなく先生までもが息抜き(と言う名のサボり)の場所として利用している。

 5時間目が終わるチャイムが鳴り、僕は先生に礼を言って教室に戻った。

 教室に戻ると僕の所に里桜が駆け寄ってきた。

「もう大丈夫なの?」

 心配そうな顔で言ってきた。

「一応大丈夫」

 いつものこととはいえ、今日はちょっと酷すぎるのでムッとしながら言葉少なげに答えた。

「ホントにごめんなさい。この通り!」

 申し訳なさそうな顔をしながら、手を合わせ、頭を下げた。

「何でも言うこと聞くから……」

 里桜がそう言うと僕は悪魔の如くニタリと笑ってこう答えた。

「その控えめな胸を揉ませてくれたら許してやってもいいが」

 そう言うと里桜の顔が桜色に染まる。しかし、下手な男より男気のある里桜は言ったことはきちんと守る奴なのだ。例えそれが理不尽な事であってもだ。里桜は恥ずかしそうにこちらを見ながら呟いた。

「あ、う……じ、じゃあ、少しだけなら……」

「うぇっへっへ。それじゃあいただきます」

 僕はエロ親父のような笑みを浮かべ、里桜の胸を両手でそっと触る。触れた瞬間、里桜の身体がピクッとした。恥ずかしさを堪えるためか目をギュッとつむり、下唇を噛んでいた。里桜の控えめな胸は洗濯板のようだったが……ぐぼっ!

「10行くらい前から、お前の願望と言う名の妄想になってるぞ!」

「み、鳩尾(みぞおち)に入った……」

「しかも洗濯板ってなんだ!」

 鳩尾に喰らって前屈みになっているところに今度はアッパーカットが炸裂した。

 何で昇竜拳(※3)って3回ヒットするんだろ。

 そんなことを考えながら僕は宙を舞った。

「里桜ちゃん。反省してるのかい?それはもうDVですよ」

 潮が飄々(ひょうひょう)とした表情で現れた。

「ドメスティックヴァイオレンスって、あたしと礼はそんな関係じゃ……」

「『どう見てもヴァイオレンス』の略ですよ」

「大して上手くもない洒落を言うでない。しかもどや顔で」

「礼、復活早いわね」

「死の淵から生還すると大幅に戦闘力が増すのだー!」

「サ○ヤ人か!」

 しっかり突っ込んでもらった後、潮が呟いた。

「そう言えば里桜ちゃんは、彼に謝っていたのではないのですか?」

「あ、そうだった。しかもまた殴っちゃった」

 またやってしまったというような顔をした。そこに僕が畳みかけた。

「そうそう、度が過ぎてきているよ、最近。そのうち100tハンマーとかエスカリボルグなんか(※4)出して来そうで怖いよ。」

「ぴぴるぴるぴる…ってやらすな!」

「愛なら仕方ない」

「わかりました。すいませんでした。これからは自重します」

「棒読みなのが気になるがよしとしよう。じゃあ今度マック奢れ。それでチャラだ」

「そんなんでいいの?てっきり胸を揉ませろとか言うのかと……」

「変態なのは妄想の中だけでいいです!」


※3 昇龍拳

 格ゲー「ストリートファイター」の登場人物リュウとケンの必殺技。ケンの強昇龍は何故か三回ヒットする。ちなみにサガットのタイガーアッパーカットは7回ヒットとか意味が分からん。


※4 100tハンマーとかエスカリボルグなんか

 100tハンマーは漫画「CITY HANTER」に登場する対主人公用の武器。また、エスカリボルグは「撲殺天使ドクロちゃん」に登場するこれまた対主人公用の武器。


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