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あの虹のように  作者: おわなん
二章:慈雨
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8.目標は、キミ!

夜の部、クトル、シアン、ヴィオレの三人は視界問題で困っていた。


シアン「おい、太陽出せ。予想はしていたがあまりにも暗すぎる。」


クトル「無理だよぉー。今使えるのは雨雲と空気抵抗をいじるくらいだよぉ。」


シアンはクトルの胸ぐらを両手でつかみ睨んだ。今までの怒りとは違ったものをクトルは感じ取った。


ヴィオレ「ちょっと、やめてよ!」


ヴィオレが止めに入った。


ヴィオレ「この環境で誰か死ぬと思ってたけどその原因が仲間割れなんて、あんまりだよ。

…誰が、人が減ったら誰が私を助けるのよ!私を守るため以外の死因はなしだからね!」


ヴィオレが冗談で言ったのか、それとも本心で言ったのか。

ともかく状況はカオスである。

シアンはクトルから手を放し、語り始めた。


シアン「クトル、俺は強いか?圧倒的か?」


クトルは分かりやすくしぼんでいた。ゆえに何も喋ろうとしなかった。


シアン「俺は病気持ちだ。筋力、知力、学習力。あらゆる能力が1/2になる病気なんだ。凡人になるためには少なくとも二倍頑張らなきゃならん。でもそれだけ努力してもなれるのは凡人。この頑張りをもし凡人がやっていたらどれくらい強く、賢い人間になるのか、いつも考える。だからだ、だから何の重りも持たず生まれてきたやつができない、やりたくないって騒がれるのが嫌いなんだ。」


シアンの言葉はクトルに重く突き刺さった。今までのただの嫌悪とは違い、きちっとした助言であったから。


シアン「4ヵ月経ったろ。一週間足らずで習得できた空気抵抗の他に何を得た?ここに来た理由がどうであれ、強くならないとダメなんだ。何か目標を作れ。少なくとも俺は…。」


シアンはここで喋るのを止めた。そして2人に背を向け、一人で猛獣を探しに行った。

ヴィオレは迷っていた。彼女は多いほうに流されるが今回の場合、1対1だ。とりあえずクトルと一緒に俯き、膝をついた。


そして次の夜、今回は3人で動いて活動していた。朝、昼、夜の部でどのチームが一番多く狩ることができるかの勝負を最も効率的に回すためである。

前衛シアンヴィオレ、後衛クトルの編成で動いていた。昨日までのクトルなら前衛はおろか、後衛すら務まらなかったが、どうやら水蒸気を使って狭い範囲も索敵できるようになったようだ。これで明かりが少なくともある程度は動くことができる。

シアンがその成長に感心していると、横から出てきた素早い猛獣に襲われた。索敵できる範囲が狭いため速いものには対応が遅れるのである。

シアンは確実に出遅れた。しかし、どこからか吹いてきた風が落ち葉を舞い上げ、その猛獣の目に当たった。たまらず目を閉じたため、目標が逸れシアンの前で猛獣の爪が空を切った。すかさずシアンはカウンターを決め、仕留めることに成功した。


クトル「ふぅ、間に合ってよかったぁ。ごめんねー、まだ索敵穴だらけでー。」


シアン「あ、あぁ」


シアン(まさかこいつ、この一日足らずで水蒸気による索敵と僅かであるが風の操作も)


シアンに説教されたのち、寝る間も惜しんでクトルは祝福の強化に励んだ。それに以前とは異なり独学で。この状況も疲弊が重なり、立ってるだけで苦しいはず。それなのに頭をフルで使う後衛で働いているのである。


クトル(僕は改めたんだ。ここに来た以上、弱々しい僕と決別するって。そして決めたんだ。僕の目標はシアン君、君なんだって!)


それぞれの思いを胸に遠征最終日を迎える。

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