7.田舎には自然が似合う
早朝、見知らぬ田舎に着くな否やプーリムはある老人と握手を交わしていた。ある老人は生徒に向けて話し始めた。
村長「わしはここで村長をしておる者じゃ。こやつとは昔助けてもらった縁があってな、今回君たちを招待したというわけじゃ。ここでは林業が盛んな土地でな、その伐採した木で紙を作っておる。巷では「蒼々紙」とよく呼ばれておるが知らんかの?」
村長は周りを見渡したが、しっくりきた顔は見当たらなかった。
村長「ったく、関心がないのぉ。まあよい。わしらが直面している問題よりはましじゃ。木を切らな始まらん仕事ゆえ、最近周辺の猛獣が活発で困っててな。」
プーリム「そこでお前らの出番ってわけだ!この一週間、狩りのお仕事をしてもらう。朝昼晩交代で見回る、楽しそうだろ?」
村長「とりあえずじゃ、君たちの宿舎まで案内しちゃろう。」
宿舎まで案内してもらう際にぶどう組一行はこの地域の様々なスポットを巡った。と言ってもそこまで有名な観光地ではないため、自然が大好きなクトル以外はつまらなそうだった。
村長「ここでは我らが魂、蒼々紙を作っておる。ちなみに企業秘密やから中は見せられんぞ。」
村長は自慢げにウキウキで紹介していた。クトルが建物の内部を気にしているときに外にある立て看板を掲げている少年らしき人を見つけた。クトルは立て看板に目が行った。
クトル「モリ、バッサイ、ユルサナイ、リン?君、リンっていうの?話を聞かせてもらって...
ウワ!!」
カージナルはクトルの目を手で隠した。
カージナル「危ない、危ない。お前はこういうの影響されやすいからな。ほらほら坊ちゃん帰りますよぉ。」
クトル「えぇー待ってよぉー。話だけでもー。」
リンという少年は一言もしゃべらず、立て看板の横で三角座りしてこっちを見ているだけだった。
プーリム「あいつは、いいのか?」
村長「あいつはめんどくさい輩での、話もろくにできん感じじゃ。何度かこちらから説明したんじゃがの、言葉の意味すら理解してもらえんかった。でも、活動自体は止めんからあんな感じで放置じゃ。お前さんも手を出すなよ。」
プーリム「あー俺の嫌いな人種だな。おけ。」
3人を三グループに分け、そのうち朝担当に割り振られたカメリア、カージナル、サフランは蒼々紙を作成するために必要な木を育てる伐採場に連れてこられた。
カメリア「それで猛獣とやらはどこにいらっしゃるのでしょうか。」
プーリム「え?あー、気づかんか?そこ。」
プーリムが指さした場所からトラのような大きな獣が飛び出し、サフランを襲った。サフランに体当たりしたまま、プーリム達から離れていった。
プーリム「初めての実践だな。今まで温めてきた祝福をぶつけてやれ!しかし、これを見たら一週間も持つか不安になってきたな、まぁ止めんがな!」
しかし、残された二人は慌てず悠長に話していた。サフランを信じているわけではなくただただ冷淡なだけだった。
カージナル「おまえ予知できるんじゃなかったのか?知ってて伝えないのは流石に。」
カメリア「残念ながらそうじゃないわ。確かに予知できるけどそれは相手や物体の動きの予知なの。視界の中にいなきゃ予知できない。仮に知ってても伝えないけどね。」
そうしている間に奥からサフランが戻ってきた。両手にさっきの猛獣を担いでいた。その猛獣の前足は手錠がされていたが、これはサフランの祝福によるものだ。
サフラン「誰も助けに来んのかね?はぁ、シアンと組まなかったからラッキーって思ってたのにこいつらもこいつらだな。」
サフランはこのメンバーで狩りを続けることを不満に思ったが、弱音を吐くことは自分のプライドが許せなかった。つまり、泣く泣く受け入れるしかなかった。
プーリムはその様子をみて、ひとまずこの三人にこの場を任せることにして宿舎にいる6人の様子を訪ねに行った。
クトル「みてみて!「ついに7000年前の地層見つかる!」だって!地層研究家の予想の7000年前以降の地層は存在しない説が証明されつつあるってことだよ。これは非常に、たぎる!ね!」
サルビア「あ?俺に言ってるのか?そうだな、興味ないから黙っとけ。アホなのに地理には興味あるんだな。」
クトル「ふっふっふ。地理は大がつくほど好きなんだ。他は、聞かないで。」
シアン「おまえRangerだろ、地層見るな。森守れ。」
プーリム「やっぱり、ゴロゴロしてたなお前ら。ただここにボランティアしに来たわけじゃないんだ。こういう隙間時間も強くなるために使え。今様々なことを考察し、そして狩りで実践、また思考の繰り返しだ。この一週間で他の組と差をつけるんだ。」
プーリムの言葉にイラつきつつ言い返せない6人はしぶしぶ各々の自分磨きに出かけた。
一方朝担当の3人は意外にもしっかり協力をしていた。
カメリア「サフランが誘い込んでる、準備して。10秒後、そのポイントに向けて狙撃よ。」
カージナル「あのなぁ、言ったろ、簡単に言うなって。それじゃあかっこよくない。こうだ、聞け。右手をぴんと伸ばし、人差し指と親指を伸ばす。左手の人差し指と親指で円をつくる。それを右目に。あとは最後にこう言うんだ。バァン!」
見事こめかみに命中した。人差し指から出る煙をかっこよく吹き消しカージナルはカメリアに忠告した。
カージナル「いいな、今度からさっきの復唱な。」
カメリア「めんどくさいし長い。」
カメリア(うるさい、死ね)
次々と猛獣が倒される様子を遠くからある男が眺めていた。