5.模擬トーナメント
6日後、ぶどう組全員が中央広場に集まった。これからトーナメントが始まる。
ルールとしては実際の戦闘と同様、力尽きたほうが負け、にしたかったが長引きそうなのと、戦闘が白熱しすぎて生徒の身に何かあったときにモンスターペアレントに対応することを嫌ったプーリムは、円を地面に書きそこから先に出たものを敗者とした。
そして今から始まる試合はクトル 対 シアンだった。
プーリム「両者、円の中に。」
クトル(こういうのって普通、決勝で会おう、キリッ。ってやつだよね。何で初戦。正直勝てるビジョンないんだけど)
シアン(丁度いい、ぼこぼこにしてついでに恐怖も植え付けてやろう)
両者位置につき、模擬戦闘が始まった。
シアン(僕はこの六日間、教官のところに入り浸って訓練したんだ。3日目くらいから嫌な顔され始めたけど。そして言われた、教官はこの中で一番伸びしろがあるって。そして一番強くなれ…)
そんなことを考えているうちにものすごい速さで後ろに回り込んだシアンに回し蹴りをされ場外まで吹っ飛んだ。
プーリム(いや、決着はや)
ように見えた。
バン!
壁にぶつかるような音がしてクトルの体は円ギリギリで止まった。
クトル「いってぇー。」
シアン(なぜだ。なぜ場外へ出ない。あいつは雨雲しか使えないはず。まさかこの6日間で新たな祝福の使い方を。探らねば)
クトル(早々に終わってたまるか!こっちはシアン君の弱点も考えてきたんだ。シアン君の欠点は祝福にある!攻撃を加速して行うけど、速ければ速いほど攻撃のスピードを止めるのが難しくなる。そのすきを狙う!)
クトルはシアンの懐に潜った。行動の意外さに多少ビビったシアンは直ぐに反撃をした。ただ、クトルはそれを待っていた。シアンの右フックをかいくぐり、がら空きになったシアンの腹に向けて自慢の拳をぶつけようと顔を上げた。しかしクトルの顔の横にはかかとがあった。
クトルはまたもシアンの回し蹴りをくらった。クトルは円のふちに飛んだが、徐々に減速しながら止まった。
クトル(なるほど、ね。勢いを消せない攻撃は、体に軸をつくりそれを中心に回転することで後隙を軽減して、さらに次の攻撃につなげるってことか。じゃあこの試合きついかも)
クトルが何かに気づいたようにシアンもクトルの謎に気づいていた。
シアン(わかったぞ。あいつは空気抵抗を変えている。だから急に止まることができる。てかなんで2つ目に覚えるのが空気抵抗なんだよ。そこは風とか雷とかだろ。なんか地味で嫌い)
またクトルが突っ込んできた。今度は冷静に回し蹴りで対処した。に思えたが、攻撃が入ったのは二人同時だった。クトルが再び突っ込んでくる。シアンは応戦するが次第にクトルの方が速く攻撃を入れるようになった。気づいたらシアンは劣勢になっていた。
シアン(クトルが速くなってるんじゃない、俺が遅くなっているんだ!俺の足や腕の空気抵抗を大きくしてスピードの差を埋めているんだ)
今までなめていた相手に怒りを覚えたが、それよりもクトルの姿勢に尊敬をしていた。少し悩んだがシアンなりの礼儀を示すことを決めた。
シアン(クトル、お前に敬意を表する。楽に勝てる相手だということを取り消すよ。今から手加減はなしだ)
クトルの方に向けてまた回し蹴りをくり出した。クトルはシアンの左足の空気抵抗を大きくしたがそれでもシアンは止まらなかった。
クトルは蹴りをくらった瞬間に気絶しそのまま場外に飛んで行った。
シアン(今までは4倍だったが、今回だけ32倍のサービスだ)
プーリム「止め。勝者シアン。メイズ、治療だ。」
メイズ「はぁい」
メイズはクトルの傍にいき、頬を叩いた。
メイズ「ちょっとー、気絶してると私の祝福使えないんだけど。喋れるー?」
クトル「い、いたぃ。早く、なお、して。」
メイズ「勘違いしてほしくないから言うけど、治すんじゃくて「体の状態を戻す」んだよ。」
クトル「…お、体が、治った!すごーい!あ、でもなんか、すごい緊張してる。何で?」
メイズ「試合前まで体の状態を戻したからね。そんとき緊張してたんでしょ。」
クトル「うぅ。恥ずかしい。」
着々と試合が進み、決勝戦の決着もついたころだった。
プーリム「優勝、シアン!おめ。」
ヴィオレ「中々強くなってるね。びっくりしたよ。」
シアン「俺もお前と戦うの初めてだったからな。少し見直した。」
トーナメントが終わるとすぐさま解散をし、各自寮に戻った。シアンの強さにビビったカージナルとサフランは肩をしぼめていた。
シアン「サフラン、お前の「Chain」強かったな。まさかチェーンを出して体をぐるぐる巻きにされるとは。それと対峙はしてないがカージナルの「Weapon」もすごかったな。腕から剣のようなビームを出していたが、銃とかも使えるのか?そうなると手ごわそうだ。」
サフラン「うるせぇ!煽りだってことは分かってんだよ!黙っとけ!」
シアン「確かにそうだが、俺が一番知ってほしいのは力の差だな。さすがに今回のでわかったよな?お利口さん。」
どうやらこの三人はうまくやっていけそうにない。サルビアはそんなことを思いながら本を読んでいた。
そのころプーリムは生徒たちの情報を整理し、手帳にメモをしていた。
プーリム(クトルは今後強くなるぞ!あいつは祝福の伸びしろがでかいからな。だが、心配なのがシアンだ。今一番強いのはあいつで間違いないが、患っている病気がやはり足を引っ張っている。何と言っても伸ばせる部分がない。このまま伸びしろを感じられなかったら全員に追い抜かされるだろうな)
手帳を閉じ、月明かりに照らされながら今後の予定を考えていた。
プーリム(あと何か月か経ったら遠征するのもありだな)