41.空を仰げば
そよ風に吹かれやってきたシアンのマントはクトルの肩にのっかった。
その上から誰かがクトルの肩に手を置いた。
クトル「え?」
クトルの方に向かって飛んでくる小石爆弾が減速しクトルの手前で爆発した。
ミック(やったか?いや、手前に落ちたように見えたぞ。減速、いやまさかな)
土煙に包まれる中、柔らかい声が聞こえて来た。
シアン?「今まで、よく耐えたな。」
クトルはシアンの声に聞こえた。そんなことないと思いつつ。
土煙が晴れ始め、ミックもクトルの他にもう一人いることに気が付いた。
ミック「誰だお前は。」
シアン?「俺は、お前に殺されたもの、お前の仲間に殺されたもの、お前らと勇敢に戦ったもの。
そして。」
ミックはその正体を確認し、驚いた。
オーシン「お前と戦い続けた彼の、
意志を継ぐものだ。」
クトル「オー、シンさん、どうし、て?」
オーシン「そりゃあ隣街でドンパチやられちゃ眠れねぇよ。注意しようと思ってきらこのありさまだ。」
クトルが悔しそうな顔をしていることに気が付いた。
オーシン「大丈夫。お前は勝っていた。あいつよりもお前の方が、強いよ。
ただ今は、心を休めろ。」
ミックの口角が上がっていた。
ミック「丁度いい。このガキを殺すだけでなく、お前の首も持ってったらさぞかし喜ぶだろう。」
ミックは別に用意していた小石爆弾を投げようと、振りかぶった。
オーシン「Vector、投擲意思。」
ミックの動きが急に止まった。
ミック「あれ?俺は今何をしようと。」
その瞬間、握りしめている拳の中にある小石が爆発した。
ミック(クソッ!やっぱVectorはぶっ壊れだな。投げようとした意思を曲げて、小石を握っていることすら忘れてしまった)
ミックはクトルがいる方を見た。
さっきまでそこにいたはずのオーシンが見つからなかった。
ミック(まさか!?)
オーシン「Exit。」
ミックはオーシンに蹴り上げられ、上空高く舞い上がった。
オーシンは上にいるミックに片手を合わせた。
オーシンの前方には無数の不思議なゲートが現れた。
そのゲートの中は渦巻いており、見続けていると吸い込まれるようだった。
オーシン「エネルギー、放出。」
次の瞬間、黒いビームが無数のゲートから放出され、それぞれがミックを貫いた。
そのビームは、空を覆っていた雲を蹴散らし空の彼方へと消えていった。
オーシン「俺はな、「意思」は曲げられる。でも「意志」は無理だ。それだけ強大な力なんだ。
ミック、今味わったのがこの街にある、戦士たちの「意志」だ。」
オーシンは眩しく照らす太陽を見ながら、ふと思った。
オーシン「ほんと、どこから出てきてんだろうな。出口作ってる本人にもよくわからん。」
オーシンは振り返り、クトルに近づいた。
クトル「どうして、僕の方に、味方を。」
オーシン「確かに、俺の味方ではないが、ミック、あいつは俺にとっての敵だった。それだけだ。」
クトル「どうして、僕に、この、マントを?」
オーシンはクトルの肩にかかっているマントを見て、頭を傾げた。
オーシン「それ、なくしたものなのか?独りでに飛んできてお前の肩にかかっただけだから、俺は知らんぞ。
まぁ見つかってよかったな!」
クトルはマントを肩から外し、それを少しの間眺め、強く抱きしめた。
それを見て、触れづらいオーシンはオドオドしていた。
オーシン「と、とにかく!すごい怪我だから連れてくぞ。
ほれ!俺の背中に乗れ。」
クトル「…うん。」
背を向け、屈んだオーシンの背中に乗った。
崩壊した街の真ん中を歩く一人と担がれている一人がいた。
オーシンはクトルに話しかけようとしたが、話題探しに戸惑っていた。
彼が波乱を歩んだことを察していたことも起因して。
オーシン「ほ、ほら!空見てみろ!綺麗だな。雨降った後はやっぱりこれだな!!」
クトルは空を見上げた。
ーーー数か月後
この一件は未解決事件として片付けられた。
大きく争った形跡はあるが、勝者が存在しないからである。
それどころか生き残っている人もいなかったため、何が起こったか聞きようがなかった。
当然、この街から一通の救助要請があったことももみ消された。
クトルの母親もそのニュースを見ていた。
しかしそれよりも、ある一通の手紙に目を奪われていた。
それはクトルからだった。僕は生きていると。
それを見て、母親は安心していた。
そして間もなく、「下界」、戦闘員訓練校に侵略が来た。
それは地球からの兵だった。
当然「あつまれ!訓練兵トーナメント」で優勝したアムスもその任務に追われていた。
地球からの軍と戦っている中で見知った顔を見つけた。
アムス「クトル!?クトルじゃないか!?生きてたのか!!」
クトル「そうだよ。久しぶり。」
アムス「久しぶりじゃねぇよ!!
なんで地球の軍と一緒に攻めてるんだよ!
それにシアンのマントもつけてるしよ!!何から聞けばいいんだよ!」
クトル「ごめん。会話するつもりは、ないんだ。」
ーーー
時はまた、ミック討伐直後まで遡る。
クトル(ごめん。僕だけ生き残っちゃった。しかも負けちゃったし。
僕、これから皆なしでどう生きていこうか。
寂しいよ)
オーシン「ほ、ほら!空見てみろ!綺麗だな。雨降った後はやっぱりこれだな!!」
シアンのマントについた水滴に反射した陽の光がクトルの目を狙った。
クトルが空を見上げると、そこには見たことのない大きな虹がかかっていた。
クトル(そうだよね、いくらクヨクヨしても皆は帰ってこないんだ。
もう弱い僕は捨てるよ。
あの日、シアン君に会った時から、雲がかかったような日常が始まった。
でも、今振り返ればあの時が、一番楽しかった。
シアン君、僕「虹」になれたかな?
シアン君が誇れるほどの強い戦士になれたかな?
でも確実に言えることはあるよ。
シアン君だけじゃない、皆だ。
皆はなれたんだよ。
そう、大空を跨いでいる)
「あの虹のように」
エピローグはまたいつかあげます。
とりあえず、これまでご愛読ありがとうございました。




