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あの虹のように  作者: おわなん
最終章:出梅
36/43

36.雨はいずれ止む

シアンは振り返って、喜んでいるクトルを見ようと思った。しかし、クトルよりもそのさらに後ろにいるミックに目が奪われた。


シアン「クトル!後ろだ!!」


ミック「もう遅い。」


二人に向かってひとつずつ爆弾を投げられた。


シアン「Magnification、減速!」


二人の元へ迫る小石は減速され、勢いをなくしその場に落ちようとしていた。

しかし。


シアン(まずい。俺は助かる。でもシアンの方が前にいるからこのままだとあいつが死んでしまう!俺はあいつの爆弾を何度も見て来た。だからわかる。このままだとクトルは確実に助からない!)


ミック(ヒーラーの次に面倒なのは、索敵だろう)


ミック「俺が来たってのを知らせる役も欲しいから、お前だけは生かしてやる、シアン。どうだ、屈辱だろう。」


クトル「シアン君、ありがとう。」


シアン「クトルーーーーー!!」




大きな爆音が2つ鳴り響いた。辺りの雨は爆風により一瞬空中にとどまった。少しすると、またうるさい雨音が始まった。

その爆発による振動はカージナルやカメリアの方にも届いていた。


カージナル「うおっと。」


カージナルは振動により態勢を少し崩された。次の瞬間。


パスッ


カメリアの目の前でカージナルの頭が貫かれた。


カメリア「カ、カージナル?」


当然その応答には答えることができなかった。


カメリア(私は、助けられるだけで。何もできないの?)


カメリアは、怒髪天を衝いた。




コープが余韻に浸っていると、物陰からカメリアが飛び出すのが見えた。


コープ「血迷ったか。」


コープは4発、カメリアに打ち込んだ。


カメリア「Prediction、銃弾。」


4発はすべてカメリアの肌をかすめ、後方の壁に打ち込まれた。


カメリア「あなたの銃弾は、すべて、私の手中にある。」


カメリアは弓を引き絞った、コープの脳天へ目掛けて。


コープ(まったく、念のためボスに爆弾を分けてもらっていて助かったよ。そうじゃないと今頃、あのガキに殺さていた未来が見える)


カメリアの後ろに突き刺さった弾丸のうちの一つが突然、閃光を放ち爆発した。当然カメリアは被弾した。


薄れる意識の中、ただコープへの恨みを頼りに弓を放った。


ヒュン!


矢はコープの肩に突き刺さった。


コープ(クッ!爆発で手元が狂ってなければ俺の頭目掛けて飛んでくるところだったな。とんだ執念だ)


そのままカメリアは建物の下へと消えていった。




その爆発音はミックの元まで届いていた。


ミック「今、すべてが終わった音が聞こえた。さあ帰ろうではないか、我が領土へ。」


先ほど自身が投げた爆弾の爆発で土煙が立っている方を眺め、ミックは呟いた。


ミック「「神」より与えられしこの「祝福」は様々なことを可能にするためでない。むしろ逆だ。

全ての可能性を、貴様らの「自由」を奪うためにある。

貴様らには、その考えが足りなかったのだ。」


ミックはその場を後にした。




混沌の中、クトルは目を覚ました。


クトル(ハッ!僕、生きてる。流石シアン君!僕も守れたなんて!あれ?そういえば)


クトル「シアンくーん?」


クトルは辺りを見渡した。いくら守ってもらったとはいえ、体が動かせないほどには傷ついていた。


そして、目の前に、誰かが背中を向けて立っているのが見えた。


クトル「シアン、君?」


シアンはクトルの方に倒れた。その体の表面はただれ、顔の判別も難しかった。


クトル「え?」


シアンは口を開いた。


シアン「ど、うだ。これ、が、お前の、見たいって、言って、た、ば、倍率、100の、壁だ。す、ごい、だろ?」


クトルはまさか、シアン自身が倍率100の壁だということを知りもしなかった。


クトルはそれを聞いても、かける言葉が一つも見当たらなかった。


シアン「認める、よ。お、前は、俺よりも、強い。それ、だけじゃない、きっと、オー、シンも、超えられる。

それに、この、汚れた、世界を、変えてくれるって。

信じて、る。俺が、言うんだ。ま、ちがい、ない。」


シアンはクトルの顔を見て、色々思い出したが、時間が足りないことを察し、一呼吸した。


シアン「ふぅ、じゃあな。」


それから、彼が喋ることはなかった。


シアンがどうか判別がつかない屍の口角が上がっていることだけは認識できた。




クトルの目元の付近を流れる水は、涙なのか、雨なのか。


彼の叫び声が誰の耳にも入らないのは、雨音のせいなのか、それを聞く仲間がいないためか。


こんな「不幸」は、プーリムの祝福のせいか、ただの運命なのか。


確かなことは一つ。

このクラスで不幸な目に合ってないのは彼だけだという言葉は、当てはまらないこと。




ミック「忌々しい雨が、止みそうだな。弱くなってきた。」


暗く闇に包まれていた世界の東が、だんだん明るくなっていた。


長い長い夜がもうすぐ終わる合図だ。

終わり?いや、始まり。

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