34.遅すぎた懺悔
クトルはサフランと思われる肉片の近くに行き何かを呟いていた。
クトル「良かったよ、君が僕たちに直接危害を加えるときが来なくて。
冬のテロ制圧作戦の時、電車の中から一つの紙切れを見つけたんだ。それには、僕たちの祝福の情報と「刑期を短くしてやる」って内容が書かれてた。
信じたくなかったけど。君だけだもんね、前科があるのは。
内通者は、…君だったんだね。
僕と君だけの秘密にしてあげるから。
じゃあね。」
辛うじて残っていたサフランのマントを畳み、近くに置いた。
シアンの元に行くと、ヴィオレの上半身の元に立っていた。
クトル「そんな…、真っ二つなんて。ヴィオレさん。う、うぅ。」
シアンはその場に手と膝をついた。
シアン「ヴィオレは、サフランは、ダルマに殺されたんじゃない。俺が。
アイビーもそうだ!サルビアも!メイズも!
俺が殺したんだ!!」
強く体を打つ雨が痛く感じた。
クトル「シアン君、もう…。」
シアン「でも!ここで諦めるわけにはいかないんだ!覚悟したんだろ、俺!何があろうと立ち向かうって。
俺は大罪人だ。でも、あいつらの、意志を継がなきゃ。繋がなきゃ。オーシンに教わった、意志を継げって。それが大切だって。」
クトル「でも命を失ってまでもとは言って…。」
シアン「祝福は概念だ。何物にもなれる。今の実力じゃかなわなくても、何かコツを掴めば。ミックなんて。」
クトルの言葉はシアンに一つも届いていなかった。
シアンは立ち上がって歩き出した。
クトル「せめて今ある命でも…。」
シアン「…を持て。意志を継げ。
可能性は無限。
祝福はあくまで概念。
俺の「正義」は平等。
一番優先すべきことは「正しいこと」。
俺は罪人。
俺ならできる。
逃げるなんて選択肢はない。」
ユラユラと歩くシアンの後ろ姿を見て、クトルは拳を握りしめ、シアンに届かない声を呟いた。
クトル「シアン君、もう…。」
クトル(戦わないで)
次の瞬間、シアンの目の前にダルマが飛び降りて来た。ダルマはやっと獲物を見つけた獣のような眼をしていた。
シアン「でたぞ、クトル!俺らの仇の一人が…。」
ダルマに殴られ、シアンは横に飛んで行った。ダルマは次にクトルの方を見たが、霧に紛れられすぐに見失った。残念そうな顔をしてシアンの方に向かったが、シアンもいなかった。
ダルマ「グ、グォォォォ!!」
クトル「大丈夫!?シアン君!」
クトルはシアンを安全な場所まで運んだ。シアンは冷静に戻っていた。
シアン「クトル、もうお前は戦いたくないんだろ。カージナルとカメリアに作戦中止を告げて何とか逃げろ。」
クトル「シアン君は?」
シアン「ダルマをこのままにしておいていいのか?そうじゃなくても、俺はこの場からは離れられない。あいつらを殺すまでは。」
クトルはシアンの右腕を掴んだ。
クトル「嫌だよ!そんなの!」
シアン「じゃあ俺と一緒に戦うってのか?」
クトル「それも嫌だ!!」
シアン「じゃあどうするか言ってみろよ!!お前はどうしたいんだよ!!」
クトル「僕は…。」
シアン「意見が固まったら動け。俺は行く。」
シアンはもじもじしているクトルが気に入らなかった。
シアン「…はぁ。そういえば聞いたことなかったな。お前の「原点」ってなんだ?」
クトル「僕の…「原点」。」
シアン「「虹」ってなんだろうな。それを動機に動いてたが冷静に考えたら分からなくなってきた。お前は己の「原点」を思い出せ。これから後はその「原点」に従って動けよな。これが俺の最後の言葉さ。」
シアンは掴まれたクトルの腕を振り払い、ダルマの元へ向かった。
シアンはダルマの目の前に立った。
シアン「そういったはいいもの、俺は、勝てるんだろうか。」
ダルマが腕を振り下ろした。
クトル「Ranger、風!!」
ダルマに風に吹かれた複数の鉄骨が突き刺さった。
シアン「おまえ!?何でここに!?」
2人は背中合わせにダルマのほうを向き、戦闘態勢をとった。
クトル「シアン君!僕の「原点」はね!」
ダルマが咆哮しながら勢いよく起き上がった。
シアン「OK!時間がない。こいつを倒してから、ゆっくり聞こう!!」




