33.「魔女」
ヴィオレは苦しみながら「3つ目」の魂を体から取り出した。
ヴィオレ「今まで閉じ込めてごめんね、成仏してください。ほんと、ダメなお姉ちゃんを許してね。」
3つ目の魂はかつて死んだ女優の魂ではなく、自身の弟の魂であった。ヴィオレは魂を放した手で今度は空に手をかざした。その手はいくつかの雫に打たれながらもピンと空に伸びていた。
ヴィオレ「教官、再び私に、3つ目の魂として、力を貸してください。」
ダルマがヴィオレのいる建物の入り口から、その大きな巨体を小さな入り口に練りこませながら入ってきた。そんなダルマの目の前には、辺り一面曇りのはずなのに一筋に指す月光がヴィオレを照らしている光景が広がっていた。そこにいるヴィオレはかつてあらゆるトラウマを植え付けられた女の子ではなく、大きな使命を背負った戦士であった。
ダルマはヴィオレに突っ込んだが、一瞬にしてその反対方向に吹き飛んだ。
ヴィオレ(このはち切れんばかりの力、さすが教官。私の体、耐えられるかしら。いいや、そんなことはどうでもいい。今の私ならこいつを仕留めることができる。
いや、今の私しかこいつを倒せる人はいない!!)
ヴィオレ「いくよ!!」
ヴィオレの反撃が始まった。ヴィオレの圧倒的優勢だった。そして、今まで手ごたえのなかったダルマがサンドバックのようだった。
ダルマ「ブモォォオォォ!!」
ダルマが反撃してくるが全てヒラリと躱しカウンターを決めた。
ヴィオレ(私の攻撃力は上がったことは分かった。でもダメージが蓄積された私が一撃でも食らえば。絶対的優勢ってわけじゃない)
ダルマがまた拳を振りかぶってきた。それをヴィオレはいち早く察し、避ける体勢にしたがその拳はある地点でピタリと止まった。
ヴィオレ(危ない!!)
間一髪だった。止めた拳とは逆の腕で攻撃をしてきた。ヴィオレの髪をかすめる程度であったため大事には至らなかった。
あの説を立証させるためには十分な情報だった。
ヴィオレ(やっぱりコイツ!さっきのブラフもそう、知能が発達してきている。今ここで、奴を倒さねば!この私が!)
ダルマ「…つは、…いつは…どこに、いった。」
何かを言っていたがヴィオレは気にせず上に蹴り上げた。ダルマについていくように、上の階に移動すると一層ダルマの反撃が激しくなった。
激しく続く攻撃に今までの蓄積されたダメージが表に出てしまった。
ヴィオレ「ウッ!」
ヴィオレの体が傾き、少しの間動きが止まってしまった。それを見逃すこととなく、ダルマが攻撃してきた。
横に逃げることができたが、行動するのが少し遅かった。
ヴィオレ(ヤバい!このままだと左腕が巻き込まれる!間に合わない!)
ドン!!
ヴィオレの左腕がダルマの拳と壁に挟まれてしまった。しかし、不思議と痛みはなかった。つむった眼をゆっくりと開きながら自分の腕を確認した。
ヴィオレ「…こ、これは。」
ヴィオレの左腕は「紙」になってダメージを0にしていた。
ヴィオレ(教官が、私を守ってくれた。でもなんで、教官の祝福が使えるの?
まさか、ここにきて私にも成長が。今この感覚を!この機を逃してたまるか!)
ヴィオレは体勢を立て直し、ダルマを突き飛ばした。
ヴィオレ(まずは狙うは頭!!)
ヴィオレ「ウォォォ!!」
ヴィオレの右足は紙に変わり、ダルマの頭を斜めに切った。ダルマは分かりやすくよろけた。
ヴィオレ(よし!ダルマの頭にダメージを与えて知能レベルが元に戻ったはず!後は攻撃手段を減らす!)
続いてヴィオレはダルマの左腕を蹴り上げ、骨を折った。紙で切断するつもりだったが、教官の祝福は発動しなかった。
ヴィオレ(今の私ならできる!!
でも、こいつを倒したら。その時まで誰が生き残ってるんだろう。
アイビーが亡くなった。もう皆とわいわいできるときは二度とこない。
悲しい。クトル君が、生きてるといいな)
ヴィオレは疲れていた。今までの疲労が重なり、少しだけ、ほんの少しだけボーっとしてしまった。
ダルマはヴィオレの足を掴み、床にたたきつけた。そして、辺りにあるテーブルに叩きつけ、テーブルの上でヴィオレを引きずった。書類、本、モニター、ペン、あらゆるものにぶつかり続けた。もうヴィオレに意識はなかった。
ダルマはヴィオレを引きずり回している間、視界の端に光るものを見つけた。
ダルマはその光る尖ったガラスにヴィオレの体をぶつけた。
下ではサフランが誰かと連絡を取っていた。
サフラン「ここまで!俺がやったわけではないが、ここまで状況がグチャグチャになったんだ!これでいいだろ!
だから早く!俺のこの場から救出してくれ!」
連絡相手から一言、サフランに断りをいれた。
サフラン「は!?ターゲットの死亡の確認ができてないって?この状況で生き残れる奴なんかいないだろ!?このままだと俺も…。
おい!?…クソッ!切られた。」
ベチャッ!
サフランの近くに何かが落ちて来た。
ヴィオレの上半身だった。
ヴィオレのグチャグチャになった顔を見たサフランは思わずあの言葉を発してしまった。
サフラン「やっぱり、ヴィオレは…「魔女」だったんだ。」
上からダルマが下りて来た。その右腕にはヴィオレの千切れた下半身が握られていた。
ヴィオレの下半身を投げ飛ばし、サフランのもとに迫ってきた。
サフラン「ウ、ウォォォ!!」
ダルマにラッシュを食らわせたがその体はビクともしなかった。
逆にダルマから連打を食らい、息絶えた。
数分後、その場にシアンとクトルが到着した。そこには真っ二つになったヴィオレとグチャグチャになったサフランが転がっていた。
雨の音がうるさく感じた。
また、二人は遅れてしまった。




