23.カウントダウン
プーリムから話があると呼び出された9人はホテルにある会議室のような場所に集められた。15分早く着いたアイビーとメイズが部屋に入るともうすでに座っているプーリムを見て驚いた。プーリムが居ることより、深刻そうな顔をして座っている方に驚いたのだった。そのまま時間がくるまで誰も喋らなかった。例え新しい人が来たとしても。
時計の針は9時を指した。全員が席についていた。
プーリム「お前たちに隠していることがある。」
プーリムは常につけていた右手の手袋を外し、甲に刻まれている「U」の字を見せた。
プーリム「これは「Unluck」という。文字通り不運の祝福だ。これを与えられたのは1年半前。久々にもらった休暇を妻と一緒にドライブをして過ごしていた。前触れも何もない、ただ不運だったんだ。いろんな不運が重なり、結果俺たちの目の前にヘリコプターが降ってきた。気が付いた時には妻の手を握っていた右手がヘリコプターの羽に切断されていた。でも、これが一番のショックではなかった。隣には妻の顔の代わりに羽が刺さっていた。仕事に支障が出るからって無理やり義手を作られた。病室で自分の機会に変わった右手を眺めたら「U」の紋章があった。俺はもう心身ボロボロだった。だから軍隊を退いた。説明は以上だ。」
急に話し始めたプーリムにほとんど全員が動揺していた。時計の針は9時5分を指した。
シアン「そうか。それが隠してた理由なのか?祝福の存在を隠すことは犯罪だ。それでもなお隠す理由がわからない。」
プーリム「すまないな、皆。こんなに深刻な雰囲気にしたくなかったのだが。俺らしくないな。
もっともだ、シアン。でも隠してたのはこの祝福の詳細にあるんだ。この祝福は所有者が不運に見舞われる、ってわけではないんだ。自分の周り、あるいは自分が近づく人を不運にさせる、または不運な境遇にあるやつが集まる。後者は俺のせいではないってのは分かってる。」
プーリムは両手を強く握りしめ、テーブルにその腕を置いた。
プーリム「でもな、思っちまうんだ、たまに。俺がいるから不運になるんじゃないかって。お前らには申し訳が立たない。この祝福を消したかった。だからここの教官になった、ランドと会うために。昨日の闘技場の観戦は軍隊関係者にしか参加できないものだった。軍人に戻っても良かったが、二度とこの祝福で知り合いを傷つけたくない俺は、こっちの道を選んだんだ。すまない。」
シアン「それは最悪だな。俺たちが被害者になる方を選んだなんて。でも一ついいか?その右手、消えてないじゃないか?」
プーリムの右手には確かに今も「U」の文字が刻まれている。右手をチラと見てシアンの質問に答えた。
プーリム「断られたんだ。ランドにはこの祝福は今のお前にあった方がいいって。まぁ確かに、この祝福でお前らに出会えたんなら、消した瞬間会えなくなるなんてこと起こるかもな。」
プーリムから告白された事実を受け入れられないほぼ全員は黙って聞いていた。しばしの沈黙が流れた。
時計の針は9時25分を指した。
沈黙をシアンが解いた。
シアン「確かにな、俺らは不運で集められたメンバーかもな。俺もだいぶ暗い過去があるし、ヴィオレも。サフランに関しては犯罪者だからな、教官と仲間だ。でもな、一人いるんだよ、例外が。クトル、こいつはただただ成績が悪くてどこも行ける学校がなかったから下界に下りて来たんだ。」
クトル「ちょっとー。急に僕をいじらないでよぉ。」
シアン「お前、偏差値40もないだろ?」
クトル「ギクッ!」
辺りに笑いが起きた。
時計の針は9時30分を指した。
クトル「ねぇー。」
シアン「教官、もしかしたらその祝福の理解間違ってるかもよ。そんなに考え込まなくてもいいんじゃないか。これだとクトルの学力が不運って言ってるようなもんだぜ。」
プーリム「フフッ、ありがとうな、シアン。俺は一年で辞めるつもりだったんだ。皆を巻き込みたくないからな。だが気が変わった。変えられた、お前に。いいだろう、しっかり二年間、お前らを見てやる!」
時計の針は9時35分を指した。
プーリム「だからついてこい!もうさっきみたいななよなよした姿は見せない!」
誰もがこの教官についていこうと決心した。
時計の針は今、9時37分を指した。




