20.深まる仲、消えぬ疑い
依頼主がBBQを開催してくれた。もちろん招待されたのは今回の作戦に参加したぶどう組の10人全員だった。
各々が蓄積した緊張や疲労をすべて吹き飛ばすべく、大騒ぎしていた。本来は止めるべきなのだが、いつも彼らを制止させる役はべろべろに酔ってソファーで寝ていた。
アイビー「誰!?とうもろこし一つもないんだけど!?」
心当たりのあるメイズの体はビクッと動いた。
メイズ「と、トウモロコシと言ったらさ。ポップコーンあるじゃん、あれ人間が生んだ文化の中で一二を争うくらいに必要のない発明だよね?そのままが一番おいしいのに爆発させて体積を無駄に増やして。あれ知ってた?もろこしちゃんの旨味も一緒に飛んでってるんだよ。」
メイズが体で隠している焼きとうもろこしが全員に見つかった。
サフラン「犯人、お前か!そんなことどうでもいいからよこせ!」
メイズ「はぁ!?「そんなこと」だって?分かってない人には渡せません!どうせあなたもポップコーンのほうが好きなんでしょ!?あ、ちょ!」
サフランがメイズからとうもろこしを取り戻すべく戦っていた。その戦いにカージナル、アイビーも参加した。
カメリア「誰もポップコーンにしようなんて考えてないわよ。だからお願い、静かにして。」
メイズ「お!あなた分かってるね!はい、一つあげる。」
カメリア「…。」
カメリアの後ろから突如現れたメイズは焼きとうもろこしをひとつ渡した。それを見た三人はカメリアからとうもろこしをたかり始めた。
アイビー「ねぇ、じゃんけんしよぅ。それがどっちのものかはっきりさせてあげる。私、じゃんけんなら自信あるから。」
カメリア「はいはい、分かった分かった。一列に並んで。一人一粒ずつあげるから。」
腹がいっぱいになるまで食べたため、全員席に座って星空を眺めていた。
クトル「そ、そういえばさぁ。みんなは過去に何があって今の祝福に繋がるの?聞いたことないなぁって思って。」
サルビア「自身に起こった強い出来事が祝福の獲得に繋がるっていうからな。しかもその出来事に最も関する祝福を得られる可能性が高い。確かに、気になる話題だ。」
シアン「気になるんならお前から話しな。まず自分が教えてから人に頼めよ。」
サルビア「いいだろう、だが面白くないぞ。俺は貧しい家庭だった。だからよく盗みを働いて一日一日を食いつないでいたんだ。だがつけが回ってきた。盗みがばれて一帯の商人という商人が集まて寄ってたかって俺ら一家をなぶり殺した。盗みをやってたのは俺だけだ。なのに父も母も弟も、一歳にも満たない妹も。明らかに俺から奪いすぎた。奪ったのはものにもかかわらずあいつらは命を奪ったんだ。気づいたら俺だけが生き残っていた。その時に宿ったReparationが商人たちを皆殺しにしていた、って感じだ。ほら次はお前だ、シアン。」
シアン「俺は病気のせいであらゆる能力が1/2しかだせない。そのコンプレックスのせいか速度だけを2倍にする祝福を受けたってわけだ。」
シアンは隣にいるヴィオレのほうを向いた。
ヴィオレ「私!?次私ってことね。私は、霊感が強いってだけでこの祝福を受けたっぽいの。ほんとにそれだけ。でもこれのせいで不運な目にいっぱいあったけどね。」
ヴィオレは自分の左手に刻まれたLの字を見ながら語っていた。
メイズ「境遇似てるね!私ね、小さいころ魔法少女にあこがれてたの。そしたらこんな祝福が。これのせいでヤクザに7年間も誘拐されてたんだよね、ほんと最悪。」
カージナル「はい!次俺!小学校が銃撃された事件って覚えてるか、みんな!?あれ俺がいた学校なんだよ!いろんな奴が死んだよ。俺の担任、仲のいい友達、好きな子まで。先生たちが犯人と争ってるときに俺のほうに拳銃が転がってきたんだよ。打っちゃったんだよな、俺。そのあと色々面倒なことになったけど、それは今はいっか!長くなるし。で、祝福得たって感じだよ。次お前な!」
カージナルはサフランのほうを指さして言った。
カージナル「元気だなお前、いいぜ。俺は両親から虐待受けてたんだ。兄より劣ってる、失敗作てな。ある時限界が来たんだ。高校生のころだ。両親も兄も殺してしまった。後悔してるよ、兄まで手にかける必要なかったてな。」
カージナルは我に返って会話を止めた。
アイビー「へぇ。牢屋から出てくるの早いね、だいぶ。」
カージナル「うるせぇ。今更掘り返さなくていいんだよ!そういうお前はどうなんだ!」
アイビー「わぁ。女の子に強く当たらないでよー。あたしねー、途中まで人生いい感じだったんだよ、大学入試までね。本番にカンニングだ!って言われてさ。否定したんだけどねカバンの中に見知らぬイヤホン入ってたんだ。隣の子がカンニングしてたんだけどばれそうになった直前で私のカバンに投げ入れたってわけ。私の家系高学歴ばっかりでね。さんざん親に怒られた。出来損ないって。親厳しくって滑り止めすらも受けさせてくれなかったから行く先が「下界」しかなくて仕方なくって。ちなみにその時に祝福得られたんだよ!人生が大きく変わった瞬間だったからかな?すごい皮肉だよね。」
カメリア「全員言う流れっぽいね。はぁ。私の両親は怪しい商売に手を染めてたの。詐欺まがいのやつ。足がつきかけたって時に「私と弟」か「自分たちの身」かって二択を選ばないといけないことになったの。私には分かってた、両親がどっちを選ぶのか。私と弟は残された。その時にこの祝福に選ばれた。この手を見てるとたまに思い出すわ。」
クトル「へ、へぇ。みんな大変そうだね。」
カメリア「そういうあなたは?あなただけ喋ってないわよ。」
全員がクトルに詰め寄った。
クトル「え、えーと。僕はね、田舎育ちでね。それでね、よく外で遊んでたんだけどその時に祝福得たんだよね。」
全員が腰を抜かした。
カージナル「へ?」
シアン「もう終わりか?」
サフラン「やられたな。こいつ、俺たちを使って一発お笑いをかましてやろうって魂胆だ。」
クトル「違うって!」
全員の笑いが深夜の街に響いた。
解散後、クトルとシアンは会談に座って秘密の会議をしていた。
シアン「この中に内通者がいるのは確定だ。」
クトル「な、なんで?」
シアン「磁石のやつがお前の祝福の詳細知ってただろ。でも俺の減速の能力は知らなかった。お前は自分の祝福をべらべらと喋っているからこの組のやつらに知られてるが俺は滅多に話さない。」
クトル「な、なるほど。言い返せない。」
シアン「引き続きヴィオレへの警戒を解くなよ。」
クトルが急に立ち上がった。
クトル「それはないよ!ヴィオレさんは君の減速の能力を知ってたじゃないか!」
シアンはクトルの剣幕に押された。
シアン「うぉっ、確かにそうだな。お前そんなだったか?この一件で何か分かったのか?」
クトル「そ、それは言えない…。」
シアン「言えないってことは何か知ってるってことだな。はぁ、嘘をつくってのを覚えろよなお前は。無理には聞かない。真実に近づいてきたからな。そのうち正体暴いてやる。」
落ち込んだ顔をしているクトルを見たシアンは声をかけた。
シアン「…俺はとろいやつが嫌いだ、ちょうどお前みたいな。でもな、それ以上に嫌いなことがある。認められないやつだ、それは…俺だ。クトル、お前に感謝してるんだ。今回はお前に助けられた。」
シアンから初めてかけられる言葉にクトルは動揺した。
シアン「だから決めた。一度しか使えない、倍率100の壁はお前に使うよ。」
クトル「え?そんな、勿体ないよ。自分のたまに使って。」
シアン「自分には使えないんだ、他人じゃなきゃ。覚えててくれるか?」
クトル「うん!嬉しいよ!ありがとう!!」
各々が成長を遂げ、各々の仲が深まってきた。それも全て祝福のおかげだろう。だが彼らは嫌でも知ることになる。祝福は自由を奪うものであることを。
次回から最終章になります。いつもより濃い内容なため、お楽しみに。




