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あの虹のように  作者: おわなん
一章:小雨
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1.雨模様

××××年 4月上旬


多くの人が行き交う朝のホーム、日々繰り返す情景に皆が飽き飽きする中、新しい光景に心躍らせるものもいた。そして、生活に困窮するものも。


ドン


慣れた手つきで少年のバックを盗んだ。音もなく、素早く逃げ去る様は通勤ラッシュの群衆にのまれる寸前だった。


クトル「おーい!まてよぉー。大したもんは言ってないぞー。絶対中身見て落ち込むぞ!

…中身見て落ち込まれるのを想像すると僕も、なんか。Win-Winならぬ、Lose-Loseだぞ!」


盗人は少年の言葉に見向きもしない。それどころか周りの人すら盗人をとらえるそぶりもなかった。ただし、全員がそうではない。クトルと同じくらいの歳の少年は周りがクトルに手を差し伸べるかどうか判断するよりも早く行動していた。自動販売機の上に飛び乗り、盗人にそして周りの群衆に怒りを感じ、手に持った空き缶を握りつぶた。少年の投げた空き缶はまっすぐ、加速しながら盗人の頭に直撃、そのまま気絶した。


野球オタク「やぁ。僕は野球オタク。推しの選手は小谷航平。好きな変化球はツーシム。え、何でそんなマイナーな変化球を好きなのかだって?失敬な!!小谷航平のツーシムはな!!

…すまない。熱くなってしまった。今のストレートは小谷航平のストレートの球速を50km/h超えている。なんでそんな正確にわかるかだって?それは僕の能力「Speed」のおかげさ!まぁ、物の速さが分かるだけだけど、しかも小さいもの限定。とにかく何が言いたいのかというと彼のストレートは早いだけじゃなく手元で加速したんだ!こんなことができるということは!つまり、つまり、彼は!いいピッチャーになれる!!」


???「これは君のカバンだよね?…おい、早くしてくれないか。僕はのろまな奴が嫌いなんだ。」


クトル「あぁ、ごめんごめん。なんというか、かっこ、いいなって、思って。あと、いいストレートだな、って。」


???(こいつ、めんどいか。はやく切り上げよ)


見知らぬ少年はカバンを受け取ろうとしてたクトルの左手の甲に刻まれている「R」の字を見て驚き、彼の左手をつかんだ。


???「おまえ!もしかしておまえも「祝福」を受けているのにカバン盗まれて。しかものこのこ盗人を見逃すところだったのか!」


クトル「え?あぁ、そうだよね。みっともないよね。まだ雨雲しか出せなくてね。あとIQ足りないから上手い使い方もできないんだ。しかも、祝福も受けてない君に助けてもらうなんてな、ハハ。はぁ。」


???「つっこみたいことが沢山あるがどれから言おうか。おまえと会話するの疲れるよ。まず、俺が「おまえも」って言ったの聞いてなかったのか?俺も祝福を受けてる。あとな…」


クトル「え!!君も!なんの祝福?さっきのストレートも祝福?とすると祝福の名は「Straight」かな。我ながらの推理力!あれ、でもその祝福なんか、弱そう。ん?よく見たら祝福の紋章は「M」だな。あれ、Mで「まっすぐ」の意味を持つ単語は。

…だめだ、出てこない。」


???(俺こいつ嫌い)


この世界が誕生し、何年経ったかは誰にもわからない。何千、何万の惑星に住み着くことができた人間という生物にも。今や惑星間を行き来することも当たり前。それに伴い、戦争の規模も大陸から惑星へ。もはや兵器は移動にしか使われていない。それよりも圧倒的に脅威な生物、人間兵器の方が優秀だからだ。ここまで科学力、戦闘力が発展したのも全て「祝福」なしでは成し遂げられなかった。「祝福」とは人間が自由に操れる概念を指す。「Fire」の祝福なら自由に火を出せる。「Wing」の祝福なら空を飛べることもお手の物。いずれの祝福も受け取った証として左手の甲にひとつ、アルファベットの頭文字を刻まれる。紋章を受け取った者たちは一般的に祝福者と呼ばれる。彼らもその一部だ。


様々な技術が進歩したこの世界で唯一理解できない事象は、祝福が「なぜ存在するか」である。

それと読者の目線から見て、読者の世界と異なる他の点と言ったら、神を崇拝する文化がないことかな。


クトル「君ってどんな人?あんなことできるってことは並みの人ではないのは確定だよね。」


なぜか後ろをついてくるクトルからの質問に少年は答えた。


???「俺はこの星の優秀な戦闘員になるんだ。そして、」


ーーー少年の過去

???の母「戦闘員になるってのはもう止めないけど、目標はあるの?」


???「優秀になる。殺しまくる。」


???の母「はぁ、それだと迷子になるよ。ただでさえ、人並みの知力、運動力ないのに。

いい?少なくとも命を懸ける仕事よ。私は半端な覚悟で生きてほしくないの。」


彼の母親は洗濯物を干しながら空を眺めた。今朝は小雨だったようだ。


???「私はね、あなたに誰にも手が届かないような人になってほしいの。死んでほしくない。そんな気持ちももちろんあるけど、強くなってほしいというのはどんな母親でも持っている願いだわ。」


少年はまだ小さいため、母親の願いについて当時は理解できなかった。ピンと来ていないわが子の顔を見た母親は慌てて、空に指をさし会話をつづけた。


???の母「あ!ごめんね。つ、つまりね、私は「あれ」みたいになってほしいの。どんなに追いかけても追いつけない。まるであの、」

ーーー

???「…のように。」


クトル「ん?なんて?」


???「俺は虹のようになるんだ。誰にも追いつけない圧倒的な存在にな。あと、ついてくんな。」


祝福を誰かの夢を叶えるために使われることは悪いことではない。しかし、誰かの夢を奪うものでもある。

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