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p.7

 電話越しの葵の声は、いつもと同じだった。オンライン飲み会を早々に離脱した私に、あんな話があった、こんな話を聞いたと細かに報告してくれる。


 「ふ〜ん」と興味なさげな相槌を打つ私の関心を引こうと思ったのだろうか。葵は、他の話題とさほど変わらないテンションで言った。


「そう言えば、優里ちゃんとご飯したんだってね」

「え? いつの話?」

「同僚の人とご飯しているところにお邪魔したって、優里ちゃんが写真見せてくれたよ」

「ああ、ちょっと前の話だよ。そう言えば、写真撮ってたかも。優里の人に対するアグレッシブさは、絶対真似できないわ」

「だよね〜。私も無理。それでさ、その写真を見た時に凛華ちゃんが言ってたんだけど……」

「なんて?」

「『あの子、“友達いたんだ”』って。まぁ、酔ってたから、ちょっと強めな毒吐いたんだと思うけど、私、それ聞いて引いちゃってさ〜」


 いつものように話す葵と、どうやって会話を終わらせ、電話を切ったのか全く覚えていない。


 あれからずっと、モヤモヤとした感情が胸に渦巻いている。


 『あの子、“友達いたんだ”』と言った凛華。確かに、私は友達が少ない。それは事実だ。だけど、仮にも“友達枠”にいる人が言う言葉か? ああ、そうか。“友達”だと思っていないから言えるのか。


 知り合いは「みんな友達」と思っている優里。そもそも、優里が写真を見せなければ、凛華にあんな風に言われることもなかったのに。どうして、なんでもかんでも他人に共感を求めるんだろう。


 由希のことは、何も話題になっていなかった。だけど、私は知っている。実は由希が一番凛華の毒に付き合っていることを。食事会の時に、凛華がその類の話題を由希に振っているのを何度か耳にした事がある。人に合わせることが必要な時もあるけれど、果たして、凛華の毒に合わせる必要がどこにあるのだろうか。


 そして、私の心に波紋を落とした張本人。葵。何気なく言った告げ口には、一体どんな意図があったのだろう。もしかしたら、陰口は許せないという、彼女なりの正義感なのかもしれない。こんなことを言われていたよという警告なのかもしれない。だけど、知らなくてもいいことだってあるのだ。そんな話を聞かされる私の身にもなってみろ。何も知らなければ、私はこんなにモヤモヤしなかったのに。


 だけど、一番モヤモヤイライラする相手は、私自身だ。何故、ストレスを抱えてまで彼女たちと“友達”でい続けようとするのか。

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