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p.5

 葵の話の意図が分からず、私は眉を顰めた。


「え? 断ったってっことは、凜華の了承を得ているんでしょ? だったら、喧嘩にならないよね?」

「それが、どうやら彼氏が使った分に利子をつけて請求したらしいんだよね。まぁ、彼氏の方も使った分のお金をなかなか元に戻さなかったらしいから、凜華ちゃんも頭に来たのかもしれないけど、利子ってねぇ……私なら、使った分だけお金を補充してくれれば十分だけどな」

「私もそう思う。まぁ、彼氏の方も多少ルーズだったのかもしれないけど、でも、利子なんて請求したら、険悪になって当然じゃん」


 ようやく話の流れが飲み込めた私は、深く相槌を打つ。それに気をよくした葵は、さらに楽しそうに口を動かす。


「しかも、凜華ちゃん、酔った勢いでくどくどと、そのことを彼氏に追及したらしいよ。『すぐにお金を戻さないなんて、元の性格がルーズだからだ』とか、『すぐに戻せないのは、貯金がないせいだ』とか。あとは、『そもそも、稼ぎが少ないから、自由にできるお金もないんだろう』なんてことも言ったらしいよ」

「ってか、葵。よくそんなことまで知っているね? その話、凜華に直接聞いたの?」


 葵のさも直接聞いたような語り口に、私は思わず話の腰を折った。


「ああ。うん。先日、ちょっと会ったんだよね。ダブルデートっていうか、4人で食事してさ」

「凜華、彼氏の前でそんな話したの?」

「うん。『この人さ~、お金に関してルーズだから、私が管理してるの。それで、この前こんなことがあって~』って奥さん気取りで自慢気に話してたよ。私たちは、それより前に彼氏からもう話を聞いていたから、愛想笑いをするしかできなくて、困ったよ。彼氏の方は、嫌そうな雰囲気出してるし、別れたいって思っているのを知っているだけにね」

「それはそうでしょ。彼女にディスられるなんて最悪じゃん」


 こうして葵から凜華の近況を漏れ聞くたびに私は、凜華に対して苦手意識を強めていった。自分本位で我儘。相手の気持ちを推し量ることをせず、身勝手な主張ばかりをする凜華のことが嫌で嫌でたまらなかった。


 一度そう思ってしまうと、もう彼女の良いところを見つけて歩みよるなんてことはできるはずもなかった。


 元々、凛華と直接言葉を交わすことは少なかったけれど、さらにそれが減り、今では会話らしい会話は、全くしていない。それどころか、連絡用にと作られたSNSグループの会話でも凛華と絡むことはなくなった。

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