第12話 一組の人気者
「へー! 佐奈ちゃんは新田くんと幼なじみなんだ! 仲良しなんだねぇ〜」
ホームルームで起きた『抱きつき事件』から少し経ち、今は一限目の休み時間。
女子生徒の驚いた声が教室中に響き渡った。
廊下側から三列目の一番後ろの席に配置された転校生の甘見里佐奈と、その一つ前の席に座るショートヘアの女子生徒―――瀧山茜が楽しく会話を弾ませている。
一限目の現代社会は教師が出張で自習となり、茜と佐奈は一限目の間で簡単に打ち解けた。ホームルームでの出来事があったからか、茜は自分から佐奈に話しかけた。興味があったのだろう。
茜はクラスの中でも人気が高く、誰にでも分け隔てなく接するコミュ力お化け。屈託のないにへっと口角を緩ませた明るい笑顔は、無数の男子を虜にした。水川千雨と瀧山茜が、このクラスの顔と言っても過言ではないだろう。
『あの二人と話すときはケツに力を入れろ―――じゃないと心持ってかれるぞ⋯⋯』と男子の間で囁かれるほどだ。
ちなみに真雪も美少女なので、クラス内で一定数の人気はあるが、愛嬌のある二人よりは少し劣る。
そういう冷たい感じが好き⋯⋯みたいな男子も当然いるが。
そんな彼女は休み時間も凛々しく本(漫画)のページをめっていた。いつもよりめくるスピードが早いと感じるが⋯⋯気のせいだろうか?
「そうなのそうなの! でも、幼なじみとはちょっと違うかな⋯⋯。私が小さな時に一緒に遊んでただけだから。親同士が仲良くて」
佐奈はそう言って、横目でチラっと影光に目をやった。
(俺を見てる!? あ、違うか)という伊織の勘違いは置いといて―――影光は佐奈の視線に気づかず、黙々とNKGのソシャゲをプレイしている。
影光曰く、ソシャゲはスタートダッシュが重要とのこと。
よって注目タイトルのソシャゲがリリースされて一週間程は、影光はこんな調子だ。
この熱量をどこか別のものに注げば⋯⋯と伊織は思う。
「おい影光、天見里さん見てるぞ。」
伊織は後ろを向いて、影光に教えた。
「え? 諸見里?」
「しょうしょう諸見里しゃんが影光を―――って違うわ。あ・ま・み・ざ・と! 知り合いなんだろ?」
「あぁ⋯⋯八歳ぐらいまで毎日のように遊んでたよ。俺の両親の離婚で引っ越して以来、会ってなかった」
影光は何故か後ろめたそうに言った。
その声色から、あまり喜んでいる様子はない。
伊織はそれを感じ取り、
「へーじゃあ、約八年ぶりの再開ってことか。感動的だなぁ。あんまり嬉しそうじゃないけど」
と探りを入れてみた。
もしかしたら理由を話してくれるかもしれない。
話している途中で佐奈にも視線を送った。
「まぁ、ちょっとな⋯⋯色々⋯⋯そ、それよりこれ見てみろよ。『永久竜星シャイーズ』、ガチャで当たった。」
「⋯⋯ほう」
影光は伊織にスマホのゲーム画面を見せてお茶を濁す。
伊織も深くは詮索せず、NKGの話題に乗った。
影光が誤魔化すということは、あまり言いたくないことなんだろう。だったら無理に問い詰めることはせず、スルーする。
「俺もそれ欲しいんだよ、シャイーズ」
伊織は自分のスマホを取り出し、半ば強引にインストールさせられたNKGを開いた―――その時。
「伊織くーん? って名前の子いるー?」
もう一人の人気者、水川千雨が開きっ放しの引き戸の前で右手を挙げ、伊織を下の名前で呼んだ。




